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第一話

「レンさん!ビールもう一杯!」

「俺も~。」「私も~。」


「あいよー。」


店は今日も騒がしい。マスターである僕としてはうれしいかぎりだ。


「ガランガラン」

ドアが開く。ドアに付く鈴が鳴るのは、人が出入りした証拠だ。


「あの~ここのマスターさんはいらっしゃいますか?」


「僕ですけど~、あ、朝電話してくださった登録希望の方ですか?」


「はい、そうです。」


「あのーここじゃあ騒がしいんで、2階にどうぞ。」

階段へ手を向け、階段を昇るよう促す。


木製の机と椅子だけが置いてある客間に入り、座る。


「それじゃあ、書類を。」


「あ、はい。」

背負ったままだったリュックサックを下ろし、中から3枚の書類を取り出す。


書類を受け取り、じっくりと見る。


「ユージンさんですね。」


「は、はい。」


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」


なぜか登録希望者はこの部屋に来ると緊張し始めるな。

部屋の殺風景な感じが良くないのか?これは改善する必要があるな。


「武器は剣、、、」


「はい。」


「魔力の色は青。」


「はい。」


「うち青魔力の奴いないんですよ、だから助かります。」


「えっ、じゃあ。」


「明日からお願いします。」


「まあ、一応酒場について説明しておきますね、酒場っていうのは冒険者の集まりで、魔の森に現れるモンスターを倒してお金を稼いだり、フリーの冒険者さんにうちの奴らを貸したりします。たまに、他の酒場から冒険者を引き抜く、なんて事もありますけどね。登録した人は、基本的にその酒場に住みます。なので、今日から住んでいただきたいと思ってます。」


「えっ、まあ生活に必要なものは全部持ってきましたけど、一応、お金無くて毎日野宿だったんで、、、、」


「そうだったんですか、でも今日からは、フカフカのベッドに寝れますよ、ということでユージンさん、大酒豪の館へようこそ。」


・・・・・・・・・・


夜の魔の森は黒い。


そこにしりもちをつき、必死に後ろに下がろうとする冒険者がいた。


「う、うぁぅ、や、やめてくれ、お願いだから、た、助けて。」


魔の森よりも黒い何かが迫る。同じ黒なのにそこにいると分かる。その黒には殺気が漂っていた。正体が分からない怖さ以上に、殺されるのではないかという恐怖に怯えていた。


「おいおい、そんなに怖がるこたぁ~ねぇだろ。」


「楽に殺してやるって言ってんだから。」

殺気が一層強まる。


「や、やめ、やめて、くれ、、、」


不敵な笑い声をあげながら、黒い何かは、何とも分からないものを振り上げる。ただ、自分がこれからどうなるかだけは分かる。


死ぬ!!


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


「はぁ~あ、死んじまったか、俺、バイゼル様を楽しませてくれる奴はいないのかね~。」


「人間様達よ~。」

・・・・・・・・・・


雲一つない空、元気良く鳴く鳥は、喜んでいるようにも見える。


「それじゃあレンさん、今日もガッポガッポ稼いできますよ。」


「はい、お願いします!ユージンさん、ここでの初仕事頑張ってくださいね。」


「はい、ありがとうございます。」


「みんなも、始めてだから優しくしてあげて。」


「分かってますよ、よしユージン行こう!」


ガランガラン。ドアが閉まる。


みんながいなくなると少し不安になる。

そんな時はいつも手を合わせる。


お父さん、お母さん、どうかみんなをお守りください。


「さあ、事務仕事しないと。」

書類を取り、いつもみんなが食事をするところで仕事を始める。


「僕も頑張らないと。」


・・・・・・・・・・


「レン、絶対そこから出てくるな!」


ん、お父さん!お父さんの声だ、なんで、もういないはずなのに


「絶対にそこにいるのよ!」


お母さんも、どうして、お母さん、お父さん、ねぇ、どこにいるの、姿を見してよ


「だめだ、奴が、バイゼルが来る。俺達はいかないといけないんだ。レン、じゃあな。」


「さよなら、レン。」


お父さん、お母さん、行かないでよ、ねぇ、お願いだから、

行かないでぇぇぇぇぇぇぇ


「うわぁぁ!!!」


緊張感から解放され、一気に疲れが押し寄せる。


「はあはあ、ゆ、夢か、、、、」


見たくないものを見てしまった。嫌な予感がよぎる。

いや、そんなわけ



ガランガラン、、、ドサッ

ドアが開き人が簡単に倒れる。誰だ、あ、あれは

「ユージンさん!」

すぐに駆けつけしゃがみこむ。


「レン、、さん、、、」

すごい傷だ。しゃべることも辛そうだ。


「何があったの?」


「ごめん、、な、さい。」


「なんで謝るの、他の皆は?」


「皆は、、皆は、、、」

どこにまだそんな力が残っていたのか、拳をぎゅっと握る。

目には涙を浮かべていた。


「な、なんだよ、皆は?」


「や、殺られましたぁ!」


一番聞きたくない言葉だった。頭が真っ白になり、目に見えない圧力に体を倒されそうになった。


「うそ、だ、ろ、、、」


皆との思い出が次々とよみがえる。よみがえる度に悔しさが募る。


「このかたきは絶対にはらす。」


「ユージンさん。」


「は、はい。」


「僕に、戦い方を教えてください!」



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