平凡王女の始まりは
序章みたいなものなので短いです。
とある世界にあるとある大陸。そこには大小の国が乱立していた。
そんな世界にある小国、セレスティア王国。この国には心優しく賢く愛らしいお姫様がいる。生まれた時から光を纏っていたように輝いて見えたとされるお姫様はいくつもの奇跡を起こし、いつしか神様に愛された『姫巫女様』と呼ばれるようになっていく。
しかし、その裏で一人の少女が一人ぼっちでいたことなど、誰も知らなかった。
「…きょうのおしょくじもわすれられているのね。」
セレスティア王国の王宮。とある手狭な部屋の中、安物のベッドの上で悲しそうにうつむいている少女がいた。
少女は『姫巫女』フィーリア=ステッラ=セレスティア…ではなく、その双子の姉、セレスティア王国第一王女である。彼女は『平凡王女』と侍女たちから揶揄されているほど目立たない王女であった。
彼女の存在は生まれてすぐに妹・フィーリアの輝かんばかりの存在感にかき消された。フィーリアは両親が乳母に預けず自分たちで育てたいといわれ、そのまま両親が多くの侍女の力を借りつつ育てることとなった。彼女は当初の予定通り乳母と数人の侍女によって育てられた。そして成長していくにつれて愛らしく賢くなっていくフィーリアに王宮の人間は夢中になっていく。逆に彼女は自分のことが出来るようになっていくと、それに比例して彼女には最低限のことしかやらなくなっていく。五つになった今では食事も三日に一度、一食は忘れられることもある程ひどくなっていた。
「おなかすいたなぁ。きょうもごはんをちょうたつしなきゃ…!」
こんなことが日常茶飯事になっていた王女は、厨房に入り込み食事を調達するに抵抗はない。本人も知らないうちに彼女はたくましく育っていた。
王女は二つほど普通の人と比べて違うことがある。一つは一緒に暮らしているというのに『家族』の顔を全く知らないこと。もう一つは王女の『名前』がないこと。それがおかしなことだと『平凡王女』は全く知らなかった。
よろしくお願いします。