8.夢を裏切る著作権
気を取り直してモウルは、「さえない男がトラックに轢かれて死んだ後、異世界に生まれ変わって、その際に神様からもらったすごい力で、たいして苦戦せずに敵を倒しまくり、女の子にもてまくってウハウハですよ」、な童話を書きあげました。
「よし、これで僕も人気童話作家だ」
意気揚々とこの童話をナーロ街で発表したものの、予想に反してまったく人気は出ません。
「変だな、迎合したのにどうして人気が出ないんだろう。全部テンプレ通りにしたのがいけなかったのかな」
そこでモウルが次に書いた童話では、トラックの代わりにロードローラーで主人公を轢き殺すことにしました。
「少し変化をつけたから、大丈夫だろう」
でも、この童話もまったく人気は出ません。
「じゃあ、次はタンクローリーで轢こう」
でも、この童話もまったく人気は出ません。かえって評判が落ちました。
その後もモウルは、色々な車を使って無残に主人公を轢き殺し続けましたが、どの童話もさっぱり人気が出ないことでは変わりません。
最後は、銀河を走行する鉄道列車に轢かせようとしましたが、
「はっ、一体僕は何をしようとしてたんだ。こんなものを作品に出したら、それこそ夢に裏切られてしまう」
発表する直前で、何とか思いとどまりました。
どんな時もどんな時も慎重に行動しなければ、と反省するモウルでした。
二回言ったのは大事なことだからで、別に他意はありません。