3.出版のうまみは重版がかかるかどうかにかかっている
「それに、ラノベはもうピークを過ぎていて、これからは衰退の一途だぞ。やめといた方がいい」
モウルの小説を読んだ男が言いました。
「そうなの? でも、普通の本が売れなくなっているのに、まだラノベは売れてるじゃないか」
モウルが反論します。
「急に膨れ上がったものは、急に縮むのが世の理だ。だからモウルよ、どうせやるなら、いつの世にも一定の需要があるジャンルを狙った方がいい」
「エロとか?」
「それじゃ今のラノベと一緒だ。いい絵師がつくかどうかだけで、勝負がほぼ決まっちまう。それにエロ絵は、時代で流行りすたりが大き過ぎる」
「確かに一昔前の美少女絵を見ると、それは良く分かる」
「だろ? 一時期パッと売れてもそれっきりだ。時代を超えて生き残るのは難しい」
「じゃあ、絵師をとっかえひっかえすればいいんじゃないかな」
「それをやると、コアなファンが怒る」
「ラノベって面倒くさいんだね。だったら、どうすればいいのさ」
「やるんなら童話作家だ。一発当てれば一生食える」
それはラノベ作家を目指すのとたいして変わらない皮算用にすぎないのでは、モウルは思いましたが、それはそれで面白そうだ、と考え直し、
「よし、やってみよう」
と、あっさり転向を決めました。