27.人の死すら商売のタネにする金の亡者ども
モウルが代理で応募した「風車小屋に咲くひまわり」は、一次、二次の審査を無事通過し、最終審査を経て、ついに大賞に輝きました。
実は、一次審査が発表された時点で、すでにモウルには出版社から連絡が来ていて、
「『風車小屋に咲くひまわり』を大賞にする予定ですが、このことは誰にも言わないでください」
と口止めされていたのですが。
そんなわけで、モウルは他の応募者達が一次二次の審査結果に一喜一憂している間、この出来レースをゆうゆうと眺めていることができました。
「こうしている間にも、『風車小屋に咲くひまわり』の刊行準備は、着々と進んでいるんだろうな。かわいそうなのは、何も知らずに夢を見ている応募者達だ」
どうして、「風車小屋に咲くひまわり」、略して「風ひま」が大賞に選ばれたのでしょう?
そこには、出版社のドス黒い大人の裏事情があったのです。
かつてこの出版社は話題作りのために、有名なタレントの応募作品を大賞にして、応募者だけでなく、一般読者からも総スカンを食らったことがありました。
出版社の偉い人は、
「ええい、ちくしょうめ。無名ワナビの箸にも棒にも引っかからねえようなチンケな応募作品よりも、知名度の高いタレントが書いたってだけの作品に賞を取らせた方が、本が売れんだよ、本が」
と本音で言い返せたら、どんなに痛快だろうと思いつつ、
「厳正な審査の結果です」
と繰り返すだけです。
その事件が尾を引いたのか、その後、この出版社の受賞作は、あまりパッとしない状況が続いていました。
そこへ、今回の「風ひま」が送られて来たのです。
「これだ。すでに死亡した超高齢ワナビの作品を大賞にすれば、いやでも話題になる。大衆は『死後に認められた悲劇の天才』とか、大好きだからな。応募者達からもあまり文句は出まい。やっかもうにも、相手はもう死んでいるんだ、やっかみようがありっこない」
こうして、内容よりも話題性重視で受賞した「風ひま」は、出版社の狙い通り大ヒットします。
本屋のレジの前の新刊コーナーに平積みされた「風ひま」は、飛ぶように売れていきました。
真新しい本の帯には、「きらめく感性」、「豊かな表現力」、「斬新な構成」などと、編集者が適当に思いついたであろう美辞麗句が並んでいます。
モウルはそれをちらと見て、
「じゃあ、なんで今までずっと一次で落としてたんだよ」
と、心の中で吐き捨てるように言いました。




