表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/29

16.声優がドル売りすることの是非について

「これは久々に当たりだ」


 何百もの作品を読んで意識が朦朧としてきた頃、モウルはとある住居に残された童話と出会って目が覚めました。


 そこには、幼い頃の記憶から呼び起こされた懐かしい思い出の数々が、きれいなモザイク模様のように散りばめられた、優しくもせつない物語が紡がれており、


「僕の書く童話モドキとは大違いだ。こんな素晴らしい作品を書いたのは、どんな人だったんだろう」


 その童話を読み終わったモウルは、興奮収まらぬ様子で、作者に思いを馳せました。


「たぶん、この物語のようにきれいで優しい女の人なんだろうだな。きっと繊細な心の持ち主だ。文学好きな深窓の令嬢で、髪は黒髪ロング一択。スレンダー体型。服は少し地味めだけど、良い生地を使った品の良いものを着てる」


 思いを馳せ過ぎて、ただの危ない妄想になってます。


「ほほう、その作品が気に入ったか」


 白昼夢に耽っていたモウルの背後で、しゃがれた声がしました。


 モウルが振り返ると、そこには枯れ木のような老人が、かろうじて杖を頼りに立っています。


「うん、誰がなんと言おうと、これは名作だ。おじいさんだって、そう思うだろう?」


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。そこまで褒められると、照れるのう」


「え?」


「それを書いたのはワシじゃよ」


 その一言で、モウルの幸せな幻想は、完膚なきまでにブチ壊されました。


「なんじゃ、作者がワシみたいなジジィで驚いたか。お前は美少女アニメのキャラを見て、『かわいいなあ、こんなにかわいいんだから、中の人もすごくかわいいんだろうなあ』、と思い込むタイプじゃな」


「いや、声を聞くだけで中の人の顔が容易に想像できてしまうので、それはない」


 動揺のあまり、モウルは失礼なことを口走ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ