13.アリガトウ
だんだん嫌気がさしてきたモウルは、静けさと平和をもとめて、ナーロ街の中でも人があまりいない場所へと向かい、気が付けば、街というよりゴーストタウンに近い場所に足を踏み入れていました。
「廃墟マニアにはたまらない場所だな」
そんなことを思いながら、モウルは誰もいない住居を見て回ります。
住居に残された作品はいずれも日付が古く、もう住人がいなくなってから、かなり年月がたっているようです。
モウルはそんな作品の一つを取り上げて、ざっと目を通しました。
「結構面白いじゃないか。これなら、さぞや評価も高かったんだろうな」
けれども、その作品に評価点は入っていません。
何か自分の感性を否定されたような気がしたモウルは、ムキになって最高評価点をその作品に付け、その住居を後にします。
と、その時、背後で、
「ア……リガ……トウ……」
と、かぼそい声が聞こえました。
振り向いても、そこには誰もいません。
「気のせいかな」
たいして疑問に思わずに、モウルはその場から去りました。
静けさと平和の裏には、認めてもらえなかった、認めてもらいたかった、という多くの者達の無念が漂っているのです。