10.次話投稿されない可能性
ナーロ街には住居がたくさんありますが、その全てに人が住んでいるとは限りません。
住人がいなくなって久しい住居も、たくさんあります。
モウルはそんな住居の前にやって来ました。
「最後に作品を発表したのは三年前か。連載を放置して、ここの住人はいったいどこへ行ってしまったんだろう」
学校や仕事が忙しくなって、ここで作品を書く暇がなくなってしまったのだろうか。
病気や事故で、執筆の中断を余儀なくされたのだろうか。
小説家になろうと長年頑張ったけれども、心が折れて夢をあきらめてしまったのだろうか。
モウルは住人の心中を想像しながら、その場を去ろうとします。
と、ちょうどその時、住居を留守にしていた住人が帰って来ました。
「作品の続きを書くために、戻って来たんだね」
モウルは住人に問いかけます。
「いや、その、いつかは書こうと思ってるんだけど、また今度、ね」
住人はあいまいな笑みを浮かべつつ、言葉をにごしました。
「じゃあ、なんで戻って来たの」
「雑談をするのが楽しいからに決まってるじゃないか!」
力強くそう言うと、住人は喜々として住居のコメント機能を起動させ、作品と全然関係ない雑談を、他の住人達と始めました。
巨大都市ツーでは、こういう人のことを「雑談廃人」と呼んでいます。
一度こうなってしまうと、連載を再開するのは、ニートが社会復帰するよりも難しい、とも言われています。