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レイリア2



暗い顔をして息も絶え絶えなグラ爺が帰って来ました。

気付いた妹はすぐに駆け寄ります。


「じぃじ!おかえり!」

「リオリア…」

「グラ爺、お疲れ様」

「レイリア、今すぐ逃げなさい」

「え?」


訳が分かりません。

どういう事でしょう?

事情を聞きたいですが、そんな時間はないとでも言いたそうなグラ爺。

ミア婆は苛立ちを隠さない様子で声をかけます。


「アンタ、帰って来ていきなりなんだい」

「逃げなさい。さぁ、早く!」


グラ爺の切羽詰まった顔に恐怖と焦りが全身を駆け巡る。

妹の手を掴みます。

ミア婆は何かを察したのかどこかに行ってしまいました。

グラ爺に連れられ、書斎に来ました。ここは少し埃臭いですがグラ爺がよく読む大切な本達があります。ただ難しすぎて私も読めません。文字も複雑で内容が読めないのです。グラ爺はいつか読めるようになるからと言って、微笑んでくれていたのが昨日のように思えます。


「いいかい、絶対戻って来てはいけない。なるべく遠くに行くんだ」


グラ爺の書斎には地下へと繋がる階段があります。

何かあった時の為の避難通路という話は以前から聞いてましたが、本棚を動かしたらガコン、という音と共に床板が外れます。

長く階段が下にのびていて奥が見えません。

そこに行かされるとミア婆が戻って来ました。


それと首にキラキラと緑色に輝く石をつけてくれます。


「この石を無くしてはいけないよ。肌身離さず持っているんだ。これがあればアンタのお母さんが見つけてくれる。何かあった時の為の少しばかりの食料と地図が入ってるからね。お母さんはきっとアンタ達を迎えに来てくれるから何も考えず行くんだよ」


私と妹のおでこにキスをしてミア婆は片手に見慣れない斧を持ちます。とても大きく妙齢の女性であるミア婆が持てるサイズではありません。

グラ爺もとても大きくて見たことないような筒状の武器を持ち出します。普段は咥えないタバコを咥えると階段を上がって上の階へと、まるで二度と会えないようなそんな顔をして、ふっ、と笑って行ってしまいました。


「さぁ、早くお行き。大丈夫さ、これは¨別れ¨ではない。生きていればまた会える。絶対諦めてはダメだよ。リオはちゃんとお姉ちゃんの言うことを聞いて、レイは妹を守るんだよ」


涙が止まりません。それでも事情がわかってない妹の手を繋いで転ばぬよう急いで階段を降りて行きます。

胸にある石が輝きます。どうやら暗闇の中光る石のようです。これで灯の代わりになります。

それでも暗くて視界が次第に見えなくなっていきますが、私は昔から人よりも夜目がきくので問題なく降りて行きます。しかし妹が転けてしまい、妹も泣き出してしまいました。


「リオ!泣いてる場合じゃない!」

「だってぇ!」

「リオ…今はお姉ちゃんを信じて」

「ちょっと早く産まれただけじゃん…それなのになんでお姉ちゃんだけ¨なんでもわかってる¨みたいなお顔をするの?」


妹はグズり始めると動かなくなる。…こんな場合じゃないのに。

確証はないけど嫌な予感ばかりする。ドクドクと心臓が激しく脈を打つ。


「いつもお姉ちゃんはそう!頭が良くて大人って感じで皆のあこがれ!ズルい!」


私がリオの事が羨ましいのと同じでリオもまた私が羨ましかったのです。

ずっと私だけが劣等感を抱いているものだと思ってました。それがわかってしまうとやはりどんなに違っても私達は姉妹なんだなって思って嬉しくなってしまいます。


「なに笑ってるの!お姉ちゃん」

「ふふっごめんね。リオ…逆に私は明るくて皆の人気者な貴方が羨ましいしそんなリオが大好きなの。気持ちに気付いてやれなくてごめんね。こんなんで姉なんて名乗れないよね…」

「お姉ちゃん…」


リオはぐりぐりと頭を胸に押し付けてきます。


「わがままばかりで…いじわる言ってごめんなさいっ!お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ!リオだけのお姉ちゃん」

「ありがとう、リオ」


同じ顔なのにリオはとても愛らしくて可愛い私の妹。

私はこの笑顔を守りたい。


「行こう、リオ。お母さんが待ってる」

「うん!」


リオの手を握る。

今度はリオが転ばないように慎重に降りていく。

すると階段が終わり、その先は木製のトンネルがあった。

先は見えないし砂利が酷いが、走れないほどじゃない。


暗い中手を繋ぎながら再び先導する形で走る。

何故私はこんなにも暗闇に慣れているのかわからないけど、狩猟民族なんかも夜目に長けているらしいし、今は考えることじゃない。


疲労が限界を超えてくる。外でよく遊び体力が私よりまだあるリオは余裕そうだが、私はそこまで体力がない。だけど止まるわけにはいかない。

その時だった。激しく振動し、大きな音と衝撃が一気に鳴り響く。


「きゃあっ」

「リオ!」


リオを抱き締めて、衝撃に耐える。落石もあるかもしれない。降ってくるものからリオを守ろうと覆い被さるが、幸い落石というほど石は落ちて来なかった。多少、砂利が降り注いだぐらいで助かった。


「リオ、大丈夫だからね。お姉ちゃんがいるからね」

「うん…」


立ち上がってお互いの無事を確認すると、上を見上げる。

何かあったのだろうか、グラ爺とミア婆は大丈夫なのだろうか。


「じぃじとばぁばは大丈夫なのかな」

「きっと大丈夫だよ。グラ爺とミア婆を信じよう」


大丈夫なわけないと思うが今は考えたって仕方が無い。

大丈夫なんだと自分に言い聞かせる。不安で仕方がない。心配する気持ちを押さえつけてまた歩き出すと、奥の方では落石があったようで途中で道が塞がってしまっていた。


「お姉ちゃん、どうしよう」


石をどかそうと手を動かすけどビクともしない。

焦りばかりが募って、混乱する。


ダメだ、少し落ち着こう。よく見て、よく観察すれば何か道が見えてくるはずだ。深呼吸をする。

どうすればいい。どうすれば最適解か。


「お姉ちゃん!あそこに隙間があるよ!」


こういう時は視界が広い妹の方が役に立つし、なんだかんだ頼りになる。

妹は私よりも精神面では強いのだ。だから窮地に立っても自分を見失わない。ただ理解できない事にはめっぽう弱いが馬鹿ではない。

慌てふためく私から光る石を受け取ると、周囲をよく観察し、冷静に判断する。


右の端の下の方に小さな隙間がある。下手に上を崩すと落ちてくるかもしれない。

でも私達ぐらいの子供ならギリギリ通れそうだ。一人一人慎重にいけばなんとかなるかもしれない。


考えている暇もなく、後ろから足音が小さいが確かに響いてくる。

どんどん近づいてくる。嫌な予感ばかり頭に巡って鼓動が早くなる。


「リオ、先に行ってくれる?」


リオだけでも逃がしたい。

持っていた石をリオの首にかける。


「お姉ちゃんは?」

「すぐに行くよ」


リオは慎重に穴をくぐり抜けようゆっくりと行くが、足音は大きくなるばかり。

階段を降りたのだろうか、トンネルに響く音がまた違って聞こえてくる。砂利を踏みしめる足音は複数で、私達に近づいてくる。

これがグラ爺やミア婆などいい人達だったらいい。だけどグラ爺やミア婆の様子を見ているとそんな希望的観測はしない方がいいだろう。


「お姉ちゃん!通ったよ!」


その声を合図に私も通り抜ける。

しかし後ろの足音と声はすぐ側まで聞こえ、とうとう姿を現す。


「おやおや。レイリア、何故逃げるんだい?」


あの男だ。

私達の父を名乗った怪しい男を先頭に武装した兵士達が所狭しといる。


誤字報告ありがとうございました。

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