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蜃気楼の巫山之夢






『さて。今日はどんな話をしてやろうか』

「とりあえず退いてくれ」



そう言って語り部のような口調で俺の腹の上に乗っかってる痴女(ロベリア)



『ふむ。ちょっと前まで童貞だったヤツにはキツそうだな。やれやれ』

「俺はもうヤらない」

『我はいつだって歓迎なのだがな。こうやって本来の異界の魂の姿であるんだから、前世の未練共々ぶつければよいのに。捌け口にしたところで誰も文句は言わぬ。他者が知ると事はないただの蜃気楼の夢だというのに』

「それでもだ」

『決心は硬いようだが果たしてそれがいつまで持つのやら…貴様の為に言っておるのだぞ?

なぁ、浄化されず精神が雄のまま雌の身体に納まる気持ちはどうだ?前世で雄として満足とした交配も家庭を持つ充足感も満足に得られず憤る魂は、どこで消化すればいい?』

「………」

『この間は聖女の影響があったから、魔力を補填し他からコントロールを受けなければいけなかったという言い訳がたつがそれだけではない。本当は気付いているのではないか?貴様の魂は二つの世界を跨いで激しく摩耗している。そんな器で聖女に勝てると思っているのか。

もしレヴィに付き合ってもないのに操を立てているなら愚かだ。ちっぽけなプライドと覚悟で大切な悪魔達の運命を任せるなんてさせないぞ、シズマ』



心臓を鷲掴みされるような、威圧感。

これが魔王…ロベリア。

ひと捻りで瞬殺されたかのような錯覚に陥るほどの殺気。

軽く微笑むと噛み付くように喉元に唇を這わせてくるロベリア。ビクビクと震えが止まらない俺の反応を楽しんでやがる。



「傷つけるな、とロベリアは言った」

『アハハッ確かにそうだ。だが、それとこれとは話は別だ。貴様の存在に関わる話だ。

魂の摩耗は今は我等魔王の魂でどうにかなっているものの、我ともっと溶け合うぐらいに心を通わせねば死ぬぞ』

「だからといって心通わせるならヤる以外に方法はあるだろう」

『果たして会話だけでどれくらい効果があるものか…時間の無駄に等しいが力は送ったばかりだ、まだ時間はある。考えろ』



ヤバい、なんか首筋吸われたが何をしたんだ?

身体が恐怖以外でビクンッと変な感じに反応して、擽ったいような苦手な感じだ。

クスクスと笑うロベリアは本当に童貞みたいだなぁと馬鹿にしてくる。くそ恥ずかしい。



『女の身体となった身で雄の性欲を発散できるのだから誰もが断りようがない飛び付く話だというのになぁ。その歳で枯れすぎではないか』

「俺は俺だ」

『ハハッ、しっかり下は反応しとるというのに』

「触んな。ロベリアみたいな魅力的な女性に迫られたら男なら誰でもなる」

『ふふっ可愛い事を言ってくれるな。てっきり我には興味ないのかと思ったぞ』

「そんな事はない。ロベリアの話は色々と聞きたいし出会いはあれだったが…感謝はしてる」



ロベリアがいなければ俺はどうなったかわからない。

過去も多少精算できたし、何よりも男としてみてくれ良き理解者なロベリアには凄く助かった。俺は前世を捨てたくはなかった同時に前世の人生を葬りたかった。やり直したかった。取り返しのつかない事ばかりして罪を重ねた。絶えない後悔ばかり連ねた。男である事も捨て、大切な妹まで失った。

どうしようもない人生だったが全てが間違いではない、その後に出会った優しい人達まで否定するところだった。



『シズマ。我はな、シズマには生きて欲しいと思っておるぞ。イルではなくシズマである事を選ぶなら何度でも名を呼んでやる。名付けの親が最低だったとはいえ、それを大切な者達に呼ばれたのだから無くしたくないのであろう?』



ロベリアは俺の事を全てお見通しでズルい。



『もし貴様がイルとしてレヴィと付き合う事になるのなら我はシズマと愛し合いたい。もう我は現職の魔王ではない。ただの魂だ。しがらみに縛られる事がない、好きに恋愛をしたい。我はもうただの小娘にすぎぬ』



相手は貴様しかいないしな、とどこか悲しそうで嬉しそうトーンの声。



『考えといてくれ』

「俺は静馬でありイルだとも思っているから…そんなの屁理屈だ」

『なに前世の延長戦だ。どうせ彼女の一人もできなかったのであるから良いであろう?』

「よ、余計なお世話だ!」

『我はな男のくせに初心で可愛いシズマが好きだ。貴様は短い期間に感じるかもしれぬが我は貴様が生まれた頃からの付き合いだ。ずっとこうやって語り合いたかった』



ドキッとする。

妖艶で大人っぽい雰囲気のロベリアが笑った姿は少し幼く見える。

ロベリアに気を持つなんてロベリアが好きなレヴィへの裏切りだと分かっているのにドキドキして身体が熱くなる。



「そうだとしても俺はロベリアには落ちないと思う。ごめん」

『なに徐々に口説き落としていくさ。すぐに結論を出さずに楽しみにしておれ』



顔が近くなる。また口付けでもしてくるのかと身構えていると空振りで、耳元でロベリアの吐息を感じる。



『それに、魂でイくはとても気持ち良かったであろう?』



顔が熱くなる。



『それは我ではないと味わぬし、薬をキメるよりもクセになるくらい天上の気持ちになるのだぞ?もう手放せぬ筈だ』

「そんな事は…」



ない、となかなか言葉が続かない。

ココはヘタしたら現実の感覚よりも研ぎ澄まされていて、ヤバいくらいに敏感になっていた。感じ方が段違いに違いすぎる。

現実の女の身体の快楽も凄まじいのだが、慣れてないせいかどこかうわの空な自分がいる。

ココだと前世の慣れ親しんだ身体で感じるものだから素直に快楽だと受け取ってしまい、前世で味わえなかった男の快楽にハマりつつある。

夢にまで見た男としての本望が果たせる欲望に抗えるか自信を失くすほどに。



『また忘れられぬ時を刻もうぞ』



ふぅっと吐息を吹きかけられると身体が身震いし、思考が纏まらない。



『いつでも待っているからな。焦らずともこれからも長い付き合いだ』



くるくるとお腹を人差し指で撫でられる。

思考を切り替えなければ誘惑に負けそうになる。



『クスクス。揶揄いがいがあるのう、本当に』

「面白がるなっ!なんか調子狂う…」

『悪かった、悪かった。どれ、まだ時間あるから知りたい事がなんでも聞いてくれ』

「なら、ロベリア自身の事が知りたい」

『我の話か?』

「ダメか?話せる範囲でいい。知りたいんだ、ロベリアの事。ロベリアは俺の事色々知っているけど俺はロベリアの事をあまり知らない」

『身体は知っているであろう?』

「そういう事じゃない!」

『ハハッ、わかっておるわかっておる。さて、この退屈な話をどこから話そうかのう…』



腕組みをして物憂げに語りかけてくる。



『愚かで惨めな女だったよ、我は。どうしようもないほど弱く、またみっともないほど復讐に生きた人生だった』



ただ、それでも大切な者達を守りたかっただけなんだ


そう静かに語った。





ストック分終わりました。

後は続きが書け次第更新します。

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