表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/43

どうか、明日をください



桜川 琴葉を一直線に見つめる。



「聖女が覚醒する時ってかなりの力が放出されたり不安定な筈…」



俺の時のように。時をしばらく止めてしまったり中途半端な悪魔になったように、聖女も本人が及ばない範囲でなにかしら影響がある筈だ。



「今まさにそんな不安定な状態の時、この魔石を当てたらどうなるか」



魔石は本来使おうと意識した時のみ発動し使った者の魔力を爆発的にアップさせる。だが俺の時は触れただけで勝手に吸収されだいぶダメージを負った。

中途半端な存在は暴走しやすい、しかもそこに真逆の魔石をぶつけるとなるとどうなるか。

この禍々しいオーラを放つ悪魔の石を。



「可能性はあります!アイツが作った魔石は普通じゃないですもん!上級悪魔の魔力たぁっぷりの魔石は人間には毒です。聖女には効きませんが聖女の繭になら…ただ」

「ただ?」

「最悪聖女の力が暴発します。対抗しようとして神の加護の影響力が高まるかもしれません。そしたら近くにいるワタクシ達も危ないと思います」

「危険は犯せないか…」

「いえ、そんな事はありません!ちゃっちゃら〜じゃじゃーん!レヴィちゃん特製聖女対策用ローブでぇーすっ」



フードがあり、すっぽりと全身覆える黒いフードだが、裾などがヒラヒラとフリルが付いており可愛らしいゴシックなローブだ。



「うふふっこれをイル様に被ってもらいまーす」

「レヴィは?」

「ワタクシは物理的にも魔法使うにしても逃げられますので」



レヴィには空間魔法があり、転移するか適当な空間を作って聖女の聖のオーラを遮断できると余裕そうな顔でえへんっと自慢している。

物理的というにも少し気になるが多分そのまま影響が及ばない範囲まで走って逃げることだろう。



「なぁ。レヴィ」

「なんでしょうか?あまり時間がありませんが…」

「あの竜も助けてやれないことはないか」

「イル様…」

「いや、別に無理ならいいんだ。危険を犯してまでやる意味はない」

「できますよ?空間に入れてしまって魔界に転送してしまえば造作はありません。ワタクシほどの悪魔なら余裕ですっ」

「魔界か…」

「生存競争は厳しいかもしれませんが、ですが竜にとっては故郷です。あの黒竜にとっての幸せを考えているかもしれませんがそんなもの、野生の動物を飼うか野生に放つかの違いであり、いくらモルモットだったといっても野生で生きていけなくとも…今死ぬか、故郷に帰って死ぬかの違いです」



考えている暇はありませんよ、と屋上から飛び立つレヴィ。

桜川 琴葉から感じる聖気は次第にビリビリと肌を焦がすように痛みを増している。


黒竜も次第にダメージを受け始めたのか、激しく身震いし、天高く咆哮する。

それにビビり、殺されると勘違いする男共と女達。死の危険でも感じてるのだろうか、闇雲に魔法の雨を降らしまくる。



「早く琴葉!あたし達死んじゃう!」

「わ、わからないよ…どうすればいいのか」

「助かりたい、助けたいって強く願うの!生きたいって!あんたにはあの黒竜を倒すだけの力があるんだから早くして!!あたしの言う通りにして!!」

「そんな力私には……でも、変なの。私、死にたくないし藍ちゃん達も助けたい。そう思うと力が湧いてくるような気がする」

「それでいいの!

他の皆も力を合わせて!タイミングはあたしが言うから今は魔力を集める事に集中して!」

「それで本当に助かるんだろーな」

「は、はるとくんっいつの間に…」

「うるせぇ。使い魔使ってわざわざ降りて来ただけだ。おい!お前らもささっと協力しろ!助かりたいんだろっ」



使い魔であるレッドドラゴンに乗って地上に降りた赤毛。



「逃げた方がいいんじゃない?本当にそれで助かるの?相手は黒竜だよ?」



緑毛の奴はパニック気味で今すぐ逃げたいですって感じだ。小鹿のように震えてやがる。

そうだ、そのまま逃げてくれればいいんだが…




「……異議なし」

「倒す方法があるのなら任せる」

「分かったよ、遥斗が言うなら…可愛い子猫ちゃん達にもカッコイイところ見せなきゃね」

「ふっ。楽しくなってきたじゃないか」



やる気満々だ。無理だな。


俺もフォームを決めておく。当たったら聖女も無事じゃすまないと思うが、レヴィの口ぶりじゃ死にはしないだろう。



「この黒竜は貴方達には攻撃さえできませんのに……本当に残酷ですわね聖女って」

「ッ……誰だ!」

「この黒竜は研究所で生まれた者。使い魔になるべく作られた存在。そんな子が人間に危害を加えるわけがないのに可哀想」



黒竜の前に降り立ったレヴィがめっちゃ挑発している。

しかも角も翼も何も隠さない悪魔スタイルで、人外さをアピールしている。人間に変装くらい言えばよかったか…



「お前が元凶か」

「そうよ!使い魔なわけないじゃない!使い魔は卵から産まれるのだし研究所から逃げ出して学園まで来れるわけない!」

「悪魔なのか…?本でしか見た事ないが本当にそうなのか。どう見ても怪しいし、学園に竜なんて送り込んでなんのつもりだ」

「その使い魔の卵を産む用に用意された親ですしぃーここまで黒竜ちゃんが来たのもそんなことワタクシ知りませーんっ質問はこれ以上受け付けないでーすっサヨナラ」

「待てよっ!クソがっ」



魔法をレヴィ目掛けて放つ赤毛。

レヴィは手を目の前に翳すと軽く跳ね返し、そのまま赤毛へ自身の魔法が飛んでいく。



「きゃあああっ遥斗くん!」

「遥斗っうわっ」

「うぐっ」



赤毛の魔法はただでさえ威力が高い。それが跳ね返ったとなるとそこにいた全員が吹き飛び、壁や地面に叩き付けられたりしている。

唯一皆口 藍は桜川 琴葉を庇っていた為、聖女だけは無事だ。



「ふんっ正当防衛ですからねっ」

「なんでこんな酷い事するの…」



ヤバい。それを見ていた桜川 琴葉の聖女の力が増していく。

皆口 藍は大丈夫だと言っているが、痛そうに身を抱えている。

少し罪悪感を感じるがまともに攻撃を受けてレヴィに傷を負って欲しいとも思えない。


心配もおろか強くなった聖力は周囲にいる者達を癒し、レヴィ達の顔を引き攣らせる。


俺は桜川 琴葉目掛けて魔石を投げる。

人間の心配いい、十分傷は癒せただろう。無心になって集中をし、力を込めて投げ付ける。桜川 琴葉だけに当たるように今だけは悪魔の力を頼る。見様見真似の野球のフォームだが、まぁほぼ力任せだ。

それに気付いたレヴィは瞬時に黒竜を裂けた割れ目にぶん投げて自身も入っていく。



一一瞬間、魔石がなくなった。

間違いなく桜川 琴葉目掛けて魔石は頭に叩き付けられた筈だ。当たった瞬間、魔石は砕けてなくなった。

桜川 琴葉はフッと意識を失ったのち、聖のオーラも乱れた。

聖女の力がみるみるうちに消えていくのを感じる。


覚醒を防げただろうか。

この高さから魔石を頭に投げつけたが、桜川 琴葉の身体的損傷は見当たらない。

ただ意識がないがどうやら生きているようだ。耳をすますと呼吸音が聞こえる。



バッと赤毛がこちらを振り向いた。

それと同時にそこにいた全員がこちらを振り向く。

気付かれたが、ローブもしているし顔まではわからないだろう。早く退散しなければ。



「イル様」



レヴィが空間の裂け目からやって来た。

俺もその中に入ろうとしていると…



「待ちやがれっ!!」



赤毛がもう回復したのか使い魔にまたがってやってきやがった。



「アイツに何しやがった!おいっ!!」



答える義理はない。

赤毛の怒りの形相も見ずにささっと退散する。

魔法もまたぶっぱしてくるが遅い。当たることなく転移をすませる。

あんだけ魔法を出しておいて魔力切れを起こさないなんて…相当タフか、聖女の力か。おそらく後者だろう。



「大丈夫でしたかイル様」

「俺は大丈夫だったが、レヴィが大変だっただろう全部任せてごめん」

「そんな事ありませんよ〜っうふふっあのガキ共はいつか殺したいですねぇ」

「生きてるよな」

「聖女の力でピンピンでしょうし、聖女も死んだ様子じゃありませんでしたし〜ふふっ死んでくれれば良かったのに」

「今は…レヴィが無事で良かった」



危ない綱渡りをしたことに反省をする。

上手くいったから良かったものの、もし一歩間違えたら…いや、そうじゃない。

俺はレヴィを信じている。レヴィが大丈夫だと言った言葉を信じないで何が主だ。

レヴィは出来ないことはちゃんと出来ないと言うし、もし何かあれば俺がフォローしてやればいい。



「レヴィ…これからもこんな感じに大変な目に合わせるかもしれない。今日以上に力の及ばない事になるかもしれないし、聖女に関われば命を落とすような事になる可能性もある。それでも」



俺は強くなると誓った。

頼る事が悪いとは言わない、出来ない事は出来ないなりに任せた方がいいとは思う。

だけど出来る事を増やし、生存確率を上げることを怠ってはいけない。

俺は強くなる、それは力だけではない。



「レヴィを守るよ」

「イル様…」

「だからついてきてくれる?」

「勿論です!ワタクシは何処までもお供します!ですから…置いてかないでくださいね?」



レヴィの悲しみや悔しさが入り交じった苦しげな表情から、ロベリア様のように、という声が聞こえる。

何処か歯痒さを感じながら、苦虫を潰したような顔をしないよう精一杯微笑んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ