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決意と幸福の在り方



目が覚めるとボロボロと泣いているレヴィがいて、強く抱き締められた。

ぐしゃぐしゃな顔をして必死に俺の看病をしていた…んだと思うんが…



「待て。なんで裸なんだ」

「イル様、催淫魔法にかかってたんで解除しようと思案してましたらこれを機にヤってしまえばいいのではと思いまして!でもでも!思いとどまったんですぅ」

「それで」

「解除しようにも何故か魔法が効きませんしやはりその催淫ではなくて別の魔法にかかったのではないかと思って、得体の知れないそっちの方が大変だと思って他にも色々試したんですよ」

「裸でか」

「心配で!着替える一分一秒が勿体ないというかそれに使う時間があったら調べて原因をはっきりとさせたところだったんですよ!それで…」



言葉に詰まるレヴィ。

その先に続く言葉は出てな来なかったが分かってしまった。

きっと原因となったあの少女が聖女だと気付いて絶望と憤怒の感情を抱いたのだろう。ロベリアの死因となった同じ聖女である…桜川琴葉。

聖女と接触し体調を悪くした俺は、ロベリアに魔力を注がれ事なきを得た。おそらくレヴィも気付いた時に魔力などの力を注ごうと考えた、だから裸なんだ。

ロベリアが言っていた、性交渉をした方が心を通わせやすく魂の操作がしやすい、と。そんなエロゲーなどといった都合の良すぎる設定。ゲームの世界だからか。全年齢のゲームだったはずなのに…まぁ、俺もよくは知らないがそれが現実となったのだから受け止めるしかない。

とにかくレヴィは俺の意識がなかったとはいえ、できることはやろうとした、とところか。

やろうとした時に俺は意識を取り戻し回復してた。自分でなんとか持ち直したかあるいは中にいるロベリアがなんとかしたという方が信じたくはないがそっちの方が有力で、複雑といった顔をしている。


確かにレヴィはわかりやすい。



「イル様ぁ…ごめんなさい。ワタクシ、ワタクシ…」



ロベリアの言ってた通りこれで裏がないのなら、なんて単純でわかりやすいというのに俺は疑ってしまったのだろう。

俺の方が申し訳なくて、そしてレヴィの想い人であるロベリアと…



「ワタクシ、イル様が心配で心配で仕方がない筈なのに…最低です、イル様は悪くないのに嫉妬してしまってます。大好きなイル様と恋焦がれたロベリア様がぁ…なんと言いますか、嫉妬する権利ないんですけどぉ…ふぇえんっ」

「レヴィ…ごめん、本当に」

「いいんです、イルさまはわるくないですしわたくしぃがまだロベリアさまのことぉ…っヒック」

「でもレヴィの気持ち考えなかった。他にもやり方はあっただろうし元はといえば聖女の対策を考えなかった俺に責任ある」

「ちがぅんですぅ…ちがくて…なんかロベリアさまはぃまでもすきで、でもイルさまもおなじくらいあいしてて…どっちにしっとしてるかわからなくて」

「レヴィ…」

「ずびっ…気持ちがはっきりしないことが気持ち悪いんです。いずれ、イル様は魔王になります。その為にも抱くべき感情ではないのです」

「別に魔王になるって決まったわけでもないし、今回は俺が至らなかった結果でもある。たとえ俺が魔王になったとしてもレヴィは自身の気持ちを大切にするべきだと思う」

「だったらぁ求愛を受け入れてくれますかぁ?」

「その前に俺もレヴィも気持ちをはっきりしてからだ」



恋愛などした事がなく経験値ゼロな俺は性的な意味でドキドキはしても、恋愛感情といったもので胸や頭が支配される感覚に陥った事はない。わからないだけかもしれないが。

そもそも男にとって下半身=恋愛なのかもしれないが、今の俺は女だ。反応するイチモツがないから、女性を性的にみてもどこかむず痒い。…前世でもずっとそうだったが。

男としてこれ以上にないほどこんな美女に迫られて嬉しくないわけがない。ただ、こんな俺でいいのかとも思うし、恋愛の意味での好きとはよく分かっていない。

ロベリアの時のように相棒がいないから下半身を支配する本能に振り回されることもない、恩人に変な感情を向けてはいけないと、親愛の情的なものに近い気もする。

とにかく愛でも、何が違うのかがわからない。


そしてレヴィ自身もロベリアと俺との間で揺れている。

ロベリアの想いを断ち切れなんて言えない。上手くいけるなら応援したいとさえ思うし、果たしてこれがレヴィの求める愛なのだろうか。

答えが出るまで生半可な気持ちで返事をしていいわけがない。



「わかりました。…それもそうですよね。なんか、イル様はロベリア様と言う事が違うからちょっと調子狂うと言いますか……あっ!いい意味でですよ!?」

「不快じゃないなら良かった」

「全然そんなこと!とにかく今はイル様が無事であった事の方が大切なんでしばらくこのままでもいいですか」



熱い、鼓動が伝わる。

抱き締めてくる手の平は離すまいと俺をがっちりホールドして、静かに涙を流すレヴィ。

心配をかけたんだと自覚して、俺も素直に受け入れてレヴィの背中を優しく撫でる。

柔らかくて小さな背中がこんなにも華奢でびっくりする。いつも俺の事を守ってくれようと頑張ってくれたレヴィに甘えてたと思う。


俺は強くならなきゃいけない、どんな結末になろうとも大切な者の為に最善を尽くさなきゃいけない。

弱ければ守れるものも守れない。男でも女でも情けない自分にはなりたくない。


俺は七瀬 静馬でもあり小鳥遊 イルなんだ。

前世に誇れない生き方も本来生きるはずだった小鳥遊 イル(彼女)に対しても恥じないそんな在り方を見つける。

人間だとか悪魔だとか関係ない。

どう在るかが大切で、善にも悪にもなるのは己の志次第だ。

それなのに人間のせい、悪魔のせいだと他の言い訳をしながら生きたくない。振り回されてはいけない。


俺は俺だ。

俺は俺の人生を生き抜く。

前世ではできなかった体験を沢山して経験を積みたい、色々な感情を抱いて知り、また一つ一つ前へ進む。

その時に隣にいて欲しいのは間違いなくレヴィで、俺はこの縁を大切にしたい。

どんな形だろうと大切には変わりないから、無遠慮な気持ちで傷付けたくはない。

自分とも向き合い、またレヴィとも向き合っていきたい。



「イル様。おかえりなさい」

「ただいま」



明日があるのは幸せな事で、今日を大事に生きていこう。

一人じゃない幸福を噛み締めながら、精一杯カッコつけて背伸びをする。




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