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絶望の渦の中に希望がある



夢のまどろみにいる。

熱くて煮え滾るような心の臓を握りしめられる、そんな。

身体が自分のモノではないかのようで気持ちが悪い。精神と相反するように疼き昂る。ジュクジュクと奥が痛み、傷が化膿している錯覚に陥る。

この気持ちは何か、覚えがあるようでない。

性的欲求に近い興奮とカラを破るような鼓動。サウナにいるような蒸し暑さとダル気。


深い眠りの中で溺れながら確かに感じる違和感がそこにいた。



『おい』



揺さぶられる。



『起きろ』



ガツンと殴られるような衝撃が全身を襲っていて、ブルりと身震いする。

段々と意識が浮上してきているが、熱さが変わりがない。

熱くて、熱くてどうにかなる。苦しくて吐きそうでダルい。

誰かが呼んでるのに身体は起きてくれない。

鉛のような身体は重く沈む。



『時間は有限だ。起きろシズマ』



し、ずま?

違う、俺は。今の俺は七瀬 静馬じゃない。その名で呼んでくれる人物などもうこの世にはいないというのに…

懐かしいその名は魂に沁みて。



『シズマ』



必死に瞳だけでもこじ開けるとそこには紅蓮の火、まばゆい炎がそこにあった。


真紅に染まった髪と瞳。褐色の肌。豊満な胸を押し付け、唇を奪い去る。

身体の痛いような熱さとは違う、優しい温かさ。

そんな温もりで包まれるような肢体と裏腹に情熱的なキス。

舌が火傷しそうになるほど濃厚で、また蛇のように絡みついてくる。水音が耳元にまで激しく響き、レヴィのような優しくて相手を気遣うキスとは違う荒々しさ。

擦り付けてくる身体は柔らかくてまた少し筋肉質で張りがある。むにっと惜しげなく押し付けてくるおっぱいと足の間に這わせてくる太もも。



………ッ!




違和感にやっと気付いた時に、思わず彼女を突き飛ばす。



「俺は、なんで…」



確かに感じる下半身に()いてるもの。眼下にある平たい胸。痩せて骨ばった、男の身体。

グレーアッシュの髪も染めたわけではなく父が異国の血が混じっていたから。

前世の俺そのものの姿で、少し乾いた声も男のもの。

小鳥遊 イルではない、七瀬 静馬のもの。



『ここはお前の夢の中でもあり、魂の在るべき場所、根幹。外見の器など関係ない、剥き出しのお前自身が居る場所。魂の姿、お前自身を象ったのは前世の姿であるという事はお前はまだイルではなく、シズマだという事だ』

「……」

『それより気分はどうだ?少しはマシだろ?我が直々に精気を送ってやったからな』

「どういう事だ?」

『貴様は聖女に対策もせず相対したからそうなるんだ。聖女は神に愛された女、人間に好かれ護られる存在になるように魅了の加護がついているがその加護は悪魔には効かない。しかし貴様はまだ半分人間だ。人間の部分が魅了にかかり、悪魔の部分が反発してる状態だから苦しいんだ。ささっと悪魔になってしまえばいいものを』

「俺は…」

『とにかくさっきのはまだ途中だ。身体が熱いだろう?魅了を解除しようと中途半端な悪魔の部分が騒いでる。力が欲しいと。完全に悪魔になりたくないなら尚更、我の力を喰らえ』

「ぁっ!待ってくれ!」

『男のくせに情けない声出すな。ささっと全部喰らい尽くすぐらいに欲しろ。その昂った雄の性欲で我を、雌を犯せ』

「頼むからやめてくれ…夢の中とはいえ心の準備が…」

『時間は有限だと言っただろう?貴様が夢を見ている期間しかこの世界は開けない。それともレヴィに迷惑かけるつもりか』

「そんなつもりは…」

『説明など後でいくらでもしてやる。なに、今日が終わればまた明日逢おうぞ』



反論は許さないとばかり、再び塞がれる。

にやりと笑う彼女は欲にまみれた俺の毒を抜くように乱暴に激しく、彼女の方が俺を喰らっていった。


彼女は何者で色々聞きたい事はある。

本当にこれが夢ならばなんてリアルな夢なんだろう。

もう無理だと思ってた、男として女を抱くなんて…

初めて知る女は濃厚すぎて夢中になりすぎて頭に残りやしない。女の時とは違って身体に引っ張られるのか恥ずかしいくらい暴走してしまう。

冷静になって落ち着いた時には絶対後悔するとわかっているのに、何してるだと自問自答を繰り返すがそれよりも性欲が勝ってしまうのが情けない。

身体が熱くて、その熱が逃げる心地良さに抗えなくて、情けなすぎて本当に涙が出てきそうだ。

支配されるような感覚に侵される。彼女がほくそ笑んだ。








『時間が余ったな。このままシてでもいいが、やはり納得いかぬといった顔をみるのはそれはそれでつまらないな』



獣のようなセックスを終えたというのに息も絶え絶えな俺と余裕そうな彼女。

先程まであった身体の不調は解消されていて、今は情事後の倦怠感だけ。


体調が戻り、余裕が出てくると彼女をじっくりと観察できるようになってきた。

つり上がった眉に燃えるような瞳は意思の強さと自信の表れを感じられる。まさしく美を体現しているような通った鼻筋と厚みも程よくある唇、全てが整ったパーツで可愛らしいというよりあまりにも雰囲気が尖りすぎて寒気を感じるような美しさ。

レヴィよりも大きい、少し垂れ気味な胸と細すぎない腰だが臀部も安産型で大きい為、見事な8の字体型になっている。レヴィは手入れが行き届いた洗練された美といった感じだが、彼女はそのまま野性的に育った我儘ボディといった感じだ。レヴィとはまた違った意味でエロい。そしてまた性格の豪快で粗暴さを感じさせるが、黙っていれば普通に綺麗で淑女といった美人だ。

頭の大きな角と翼に尻尾が人外である証拠で彼女が悪魔なのだとわかる。


赤髪の彼女は裸から服を出現させるがだいぶ際どい衣装でレヴィとどっこいどっこいといった感じだ。

薔薇の真紅のゴシックなドレスは胸元から背中、腰までがっつり開いていて、辛うじて胸部や臀部を隠す程度。

裸を見た後だと服のままの方がエロいかもしれない。



「聖女の云々言っていたが性交渉する必要はあったのか」

『ある。一番心を通わせやすく魂の操作がしやすい。』

『改めて紹介しよう…我が名はロベリア。ロベリアとそのまま呼べ。先代魔王であり貴様の一番の理解者に成りうる存在だ』

「先代魔王…」



レヴィも言ってたしなんとなく予想はついていたが、本当に先代魔王ロベリアがこのように目の前で現れるものだとは思わなかった。



『レヴィから聞いているな?』

「なぁ。こうやって俺に会えるならレヴィにもなんとか会えないか。魂だけでも意識はあるんだろう?身体を貸すとかしてレヴィと話してやれないのか」



レヴィは今でもロベリアに特別な感情を抱いている。

その事で苦しみ、また想い人と常に一緒にいる俺に嫉妬し憎んでいる。

目の前にいるのに届かない歯痒さ…俺を好きと言いながら本当は凄く嫌われている事もわかっているが、それでも俺はレヴィに救われた。

だからレヴィにできることはできる限りしてあげたい。

これがどんな感情かはわからない、ただの恩情かもしれないがそれだけで済ませるほど軽い気持ちではない。



「あとできるならイルに身体を返してやりたい。(静馬)は違う世界からの異物だ。もしこの身体にイルがいるなら…話しがしたい」


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