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デートは甘酸っぱいもの

本当に長くお待たせしました



ひしめき合う値踏みする瞳が不躾にも身体中を舐め回すかのように這いずりまう、それが冒険者ギルド。

年齢性別、身分も様々だが基本高い身分の奴は一人もいない。いるとしたらギルドに依頼を出す騎士団の者(下っ端)だけだ。その騎士も今まで何度か見たが汚い物を見るような目しか向けない。そういうところ、掃き溜めだ。

身分を持たない人間が仕事にありつける奇跡なような場所ではあるが犯罪が起きやすい無法地帯であるここは一般人が誰も近寄ろうとはしない。

マシな見目であるギルド職員もやる気がなく、また争いも止めようとはしない。動く時は大きな揉め事がある時、当事者を外につまみ出す程度だ。

俺も何回か絡まれた事があるから、レヴィに精神操作してもらって誰も近付こうとはしなくなったがあまりここに長くいようとは思わない。

ギルドの職員から金を受け取り、早々に立ち去ろう。



「魔法使い様、換金終わったよ。でも登録はやっぱりしないのかい?」



首を振る。

ここの空気に慣れるほど魔物を狩っては売り捌いてきたが、いつもの決まり文句は必ず言われる。

魔法使いの装束で初め入ったのは不味かったかもしれない。少し目立つ程度だから珍しくすぎるわけじゃないが。そもそも魔法が使える人物はそれなりに家柄がいいか、もしくは高い地位が将来を約束されている人物である可能性が高い。まぁ、こんな所に来るのはそれこそ魔法が使える騎士、奴隷を管理する者、あまり本人が来ることはないがクエストの依頼人、低い身分だがたまに魔法が芽生えた者、訳ありの冒険者などしかおらずあまり気にしなくてもいい人物だが。


だが念の為ギルドでは失礼がないよう最低限の礼儀は払うようにしてるのだ。換金時に適正価格になるぐらいの心がけだが少しでもお金が増えるのはいい事だ。登録しないと2割しか貰えないし、ただでさえ少ない取り分がさらに少なくなるのが避けられるしな。

少し生地のいい魔法装束に来ているだけでそんな待遇にはなるから魔法使いでなくても偽装する者もいるかもしれないし、ギルドも了承の上だろう。


多少適当で穴だらけな設定、まさしくゲームの世界らしい。

必要のない裏側まではしっかりと作り込まれておらず、現実となっても小鳥遊家のガバガバ設定のように矛盾がどこか存在している。




「はぁーい、イル様あーんっ」

「んむっ……甘いな」

「ふふ!じゃあじゃあフルーツもお食べ下さいませっ」

「いや、折角なんだからレヴィが食べなよ」

「甘酸っぱい苺はお嫌いですか?」

「そうじゃないけど、自分が食べるよりレヴィが食べてる姿を見るのが好きかな」

「えへへ。視姦されるのは恥ずかしいですぅ」

「ごふっ」



角も翼もない人間に擬態したレヴィが頬を赤らめ、こちらをチラチラと弄ぶようにぺろっと舌を出している。この小悪魔、悪魔。

レトロちっくな小洒落たカフェ。

苺ヨーグルトパフェを美味しそうに食うレヴィ。隣には生搾り苺ジュース。

アメリカンコーヒーを啜りながら甘いのを噛み締め、嬉しそうなレヴィ(美女)を見ながらのひと時は案外悪くはない。昔を思い出すとこんな時間など有り得なかったが悪魔になってレヴィに会って、できる事が増えたのは素直に嬉しい事だ。

確か味覚を楽しむなんて前世でもそんなにできなかった事だ。



「そういえば認識阻害的な魔法は俺でも使えるのか?」



今レヴィが周囲に向けて使っている魔法。

俺が素顔を見せても小鳥遊イル、いやエル(偽)だとわからないように周りの人間には全くの別人に見えているのだと言う。話し声なんかも耳に残らないから安心して話もできる。

ギルドに入る時もそういう魔法がかかっているが魔法装束をしている為あまり意味はない。

しかし、こういうプライベートの時には便利な魔法だ。



「んー、これぐらいなら悪魔なら出来ないことはないですがあまり今はオススメしませんっ

ほら、イル様まだ完全な悪魔ではありませんし、他の魔法の分野を開拓しようとするとまた暴走とか起きるのが目に見えているので、今は普通に得意な魔法を伸ばしつつ悪魔の覚醒を徐々にしていってから出来るようになればいいと思います!」

「そもそも悪魔ってどれくらい魔法に精通してるの?」

「属性で言うなら人間と同じで一つの属性を持っているのは当たり前で二属性、三属性もつ者はあまりいませんが、種族としての特性が強い感じですかね?ほら身体的でも悪魔って丈夫ですしっ」

「レヴィってサキュバスなんだよね。にしては力技ばっかりじゃ…」

「サキュバスって基本的には精神系の魔法が得意ですが、ワタクシの一族は肉体が全て!この悪魔のステータス、人間よりも圧倒的な強さ、拳が一番強いのです!デカい砲撃系の魔法なんて発動前に潰しちゃえばおしまいじゃないですかぁ……そんなのよりも身体強化とかして殴り込んでしまえば早いですし悪魔の丈夫な身体なら魔法を食らったところでへっちゃらですし、例え人間が束にかかって来たところで負ける気はないです!」

「脳筋サキュバス…」

「え〜イル様までそう思いますかぁ〜至って悪魔の合理的な戦い方だとおもうんですけどぉ」

「レヴィって悪魔の中では規格外な気がする」

「うふふ。そうですよ?ワタクシより強い悪魔なんてロベリア様以外いないのです」

「ロベリア?」

「イル様の前の…先代魔王様です」



寂しそうな横顔。

別人のような顔をするレヴィは少し辛いし、なんか嫌だが、これは¨俺の¨感情なのかわからない。



「そんな顔しなくても大丈夫ですよ、イル様。いつか話してあげますし、イル様の中にもロベリア様がいますから多分いつかわかります」

「俺の中に…?」

「歴代魔王の魂を受け継ぐイル様ならロベリア様の存在を感じ取れるはずです」



羨ましいな


レヴィからそんな声が聞こえてくる。口には出さずともそれが分かってしまって俺はどういう顔をしていいのかわからない。

過去の主人を想うレヴィにどんな顔を向けたら。

レヴィが辛い想いをしてるのに。俺は、



「イル様!気にしなくていいんですからね?ロベリア様はロベリア様でイル様はイル様なんですからっ」

「レヴィ…」

「重ねているつもりも比べているつもりもありませんし、ロベリア様はイル様とは似ても似つかなくて……あら」



ポロリとレヴィの綺麗な瞳から流される涙。

伝う頬をぐしゃぐしゃとレヴィは誤魔化そうとしているがレヴィ自身でも感情をコントロールできていないらしい。

俺よりも強くて俺よりも長く生きているこの悪魔が酷くか細く見える。



「レヴィ」



なんて喋ったらいいかわからない。



「い、イル様…」



いや、余計な言葉はいらないだろう。

何を言ったところでロベリアという先代魔王が帰って来るわけでもなく、また代わりになれるわけでもない。

無力なのが悔しい。

だが寄り添える事はできるはずだ。


震える手に重ねる指。

冷たいレヴィの手に少しでも温度が伝われば。




レヴィの涙が止まると、たらりとパフェからこんもりと盛られたアイスクリームが硝子の器を伝って流れていった。



「ご、ごめんなさいイル様。もう大丈夫ですわっ」

「無理すんなよ。俺にできる事があったら言ってくれ」

「ならまず溶けてしまったパフェのアイスとか一緒に食べてくれます?ふふっなんだか幸せでお腹いっぱいになってしまって」

「任せろ」



口の中でコーヒーとか苺とかヨーグルトでしっちゃかめっちゃかになるがやはり悪い気はしなかった。

周りの時間が止まっていたのかのように短く感じた時間も日が暮れるほど経ってしまっていて、長居しすぎたカフェを後にする。



「ショッピングもしたかったですのに…」

「次でいいじゃないか」



そう言って家に帰ろうとしたら、沢山の人の中からすれ違った少女から香る花の香り。

花に詳しくはない為なんの花かはわからないが、とても印象的で思わず振り返る。

すると、少女もこちらを振り向いていて思わず目が合う。



「あっ、あの時の綺麗な人…」

「琴葉!どうしたのって……ええ!?小鳥遊エルがなんでこんな所に!」



不穏が目の前に現れ、頭の中で警報が鳴り響いた。



お久しぶりです。

そしてまた見てくださってありがとうございます。

少ないですがストック分を更新していきます。

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