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淫靡な夜明け




昼休み10分前くらいだろうか。

いつものようにガラリと扉を開けると、窓から陽光が差していて、その眩しさから目を細めてしまう。

何故か窓が全開に開け放たれており、カーテンまで開け放たれている。ガラガラと閉めようと手をかけると外には一年生達が走り込みをしている。短パン体操着を身にまとい、体育の授業のようだ。普通乙女ゲームならば女向けなのだから肌色の多いブルマなどは女生徒は履かない。しかしここの生徒は違った。

眩しいまでの輝かしい魅惑の衣、ブルマを装着した女の子達がキャッキャッと溢れかえっておる。際どいまでのラインと肌の瑞々しさ、若々しさが10代特有の純粋で妖しい雰囲気を惜しげもなく醸し出している。

そのむっちりとした太ももに男子生徒は……意外と注目していない。見慣れてしまっているせいか?勿体ないような当たり前で健全な反応のような。


俺は今まで外に目をくれた事はあまりなかった為に知らなかったからちょっと辛い。見たとしても、しっかりと目に焼き付けたことはなく、とりあえず壇上にいる生徒会メンバーのカラフルな頭ばかりに目がいっていた。

こんな刺激的な光景……高校生って恐ろしい。ゲームの世界怖い。


ああ、でもありがとうブルマ……




¨現実逃避¨には役に立った。




佐伯先生はいない。

レヴィは何か感じ取ったのか、影に隠れてしまった。


さて、この¨膨らみ¨をどうするか。


いつもの見慣れたベッドの上には不自然な膨らみがある。

ガタイのいい佐伯先生がこんなにこじんまりと収まるわけがない。

だとすれば誰だ?不審者か?罠か?生徒が通常の保健室間違って入った?

間違ったにしては一室に一つしかないベッドに不審に思わないのか?

この馬鹿でかい学園の保健室には複数ベッドは当たり前にあるぞ?



答えなんて分かりきっている。

ここはゲームの世界。しかしエロゲのような展開に少し戸惑っている。

こんな出会い方をするのか。本当に、いいのか?

ヒロインの方から来るなんて、あるにはあるだろうけどまさかダイレクトに堂々と布団にダイブして待ってるなんて誰が考えるか。


時折「ううん……」と悩ましい声も聞こえる。


どう考えても女の声だ。若い女の、耳につくようなソプラノ声。




結論は決まった。


リターンし、早退をしよう。

今日は突然具合が悪くなった為に早退します。よし。


いつも佐伯先生が腰掛けている椅子にカバンを置いていたのでそれを手に取り、佐伯先生の机にもメモ書きを残しておく。

そして女生徒が起きないうちになるべく音を立てずそそくさと退散する。戦略的撤退。






影の中からレヴィの声がする。



『今日は学校いいんですかぁ?メスガキも放置しちゃって』

「レヴィ、たまにはお茶でもするか」

『やったぁ!デートですねぇ〜うふふ』



昼休みの鐘が鳴り、生徒達がチラチラと校舎に入っていくのを後目に見ながら学校を後にした。





「綺麗な人……」











途中で先程とは違う透き通った声が耳に通り抜けた気がするが、気にせず学校から離れたところで人気のない所に移動する。


影から出てきたレヴィが、空間を割いてくれる。



「うふっ。今日は何にお着替えしますか?ワタクシ的にこちらが……」

「いつもの戦闘服で頼む」

「イル様〜デートですよねぇ?お茶はぁ……ふぇ」

「勿論魔物を狩って素材を売ったお金でだ」

「ふふんっ。そういうことなら〜」



嬉しそうにステップするレヴィ。



「レヴィ」

『ワタクシとイル様しかいないのに。ちぇっ』



レヴィに収納してもらった大きな布を天属性魔法の一種である浮遊魔法を魔道具の指輪で浮かせクルリと隙間ができるように自身の周りに巻き付ければ簡易的な試着室の出来上がりだ。

浮遊魔法は便利だ。悪魔は浮遊魔法を使わなくとも己の翼と魔力で浮かせられるが俺は半人前な為あまり上手くいかない。

レヴィから貰った魔道具にだいぶ助けられている。



前衛用の軽装と後衛用の魔導着が何着かあるが、魔法使いは基本は後衛だ。

しかし俺は魔物狩りをする時は前衛で戦う為の軽装ばかり選んでる。

ちなみにレヴィは人に見られてもいいよう、角や翼は決して本当に人にしか見えないように化けている。露出の高い服は相変わらずだが、その上からローブを着ているのでマトモだ。


剣が扱えるようになったら戦闘の幅も増えるだろう。

なにより魔法の同時展開ができない以上、補う為の他に何かあった方がいいはずだ。

魔法に頼りきるのも魔法使いの悪い癖だし、レヴィも一番信じられるのは己の肉体だとかよく言ってる。



「イル様〜剣なんかより悪魔は拳が一番ですよ!」



確かにそれは一理ある。

悪魔は潜在能力は計り知れない。ヤワな人間の身体とは違って、悪魔の肉体はそのものが凶器で、魔法の補助なしで殴ってもコンクリートは軽く割れる。

トラックに引かれても傷一つつかない。

だから殴るだけでも人間に致命傷どころか、頭がトマトみたいに吹き飛ぶ、らしい。

レヴィの手刀はコンクリートも大木もバターを切るかのような滑らかさだった。



しかしそれは悪魔の話だ。


俺はまだ半悪魔。

ちょっと頑丈な人間の程度で流石に殴ってもコンクリートは……割れなくはない。ヒビは十分に入った。勿論痛かったけど、傷はつかなかった。





拳でも十分いける。男は拳とはよく言うが、それを言うなら剣は男のロマンだ。

剣の師匠がいるわけでもなく我流だが、素人が扱って剣は危ないものの筈なのに今のところ自分の腕が切れたことはない。悪魔恐ろしい。


適当に叩きつけるように振るってもなんとかなってしまう西洋剣。

これが鋭さがトップクラスの日本刀ならこうはならない……かもしれない。

悪魔のボディは未知だ。


だが、我流も限界がくるはず。

今は頭を叩き割るように魔物を仕留めているが、いつかはちゃんと剣も振るえるようになりたいとか考えているとレヴィはむくれていた。



「イル様、剣はいつかワタクシが教えられるように頑張りますから!」

「いや、無理しなくても……」

「いや!アイツに教えを請うなんて状況はつくらせない!だもん!」

「アイツって?」

「そもそも剣なんてものより拳にしましょうよ〜イル様ぁ」

「レヴィ、アイツって…」

「えへへ、武器なんて要りませんよね。悪魔は肉体があれば後は魔法だけでいいですよね。そうですよねイル様っ」

「サキュバスって……思ったよりも肉体言語なのか」

「え?そうですよ?うふふ淫魔ですから」



色んな意味が含まれてそうなのでこれ以上の追求はやめておく。なんか誤魔化されたし。


前衛職のアタッカーの一般装備を身に付け、頭まで覆える魔法使いのローブで顔を隠す。

一応、小鳥遊家だとバレると面倒だからだ。

怪しさ満点だがこのまま魔物のいる巣窟まで転移するので問題ない。

森で人と出会うとしても同じように¨訳あり¨の者だけだ。多少怪しくても大丈夫。


人目のつかない路地裏にレヴィは空間を開いて、俺達はその中に入る。

転移というのも慣れないものだ。

そもそも転移なんて魔法、本来はそんなものは存在しない。

天属性と地属性を持つなら似たようなことはできると思うが、あくまで見える範囲だけだと距離は限られている。瞬足で物理的に跳ぶだけだし。まるで転移を使っているかのように見えるだけで……風属性でもそれはできるな。

戦闘面ならそれで十分だ。人より早く動ける事が勝敗を左右することにもなる。


それに比べてこの空間と空間を繋げる転移は近くから遠くまでどこまでも行ける。

悪魔特有の魔法はズルい。

座標さえわかればどこまでも遠くに行けるのだそう。

レヴィは精神系の魔法だけでなく空間魔法まで巧みに操るポテンシャルを秘めていて、悪魔とは皆こんな感じに強いなら最強じゃないか。ただレヴィが特別強いだけなような気もするが。まだ隠してる力もあるだろう。

人間を見下すのもわかる気がする。ここまで力の差が歴然としてるとアリと象だ。

だが、アリでも数の暴力を使われれば話は別だ。それが人間の軍隊だ。

また象をも殺す毒を持ったアリ、ヒロイン達だ。

瞬く間に戦況も覆ってしまうだろう。

それが先の大戦。舐めてかかったら痛い目をみる。

なにより悪魔の数もその時に多く失われた筈だ。人間は千年あれば失った以上に増えているが、悪魔はそうはいかない。

悪魔になるまでどれくらい時を要するか……そして過酷な魔界を生き抜けるか。それによってもまた数が変わってくる。


いざ戦ってみるというシミュレーションを頭の中でしても負けるイメージしかない。

それもそうだ。

相手は神に、世界に愛された者達なのだから。




「レヴィもやるの?」

「イル様、今日は早めに終わらせましょう!デートの為に!!」

「あ……」



街から遠く離れた魔物が生息する森についた途端、猪みたいな魔物が襲ってきたがレヴィのパンチで木っ端微塵となった。

俺が出る幕ないように思えるが、レヴィがやると素材どころではない。

お金となる牙や角も全て粉々だ。肉もボロボロだし。

魔石だけはなんとか無事なようだったので、ナイフで周りの肉を切り裂き取り出す。


この世界はファンタジーの世界のように冒険者ギルドというものは存在している。

しかしそれはあくまで魔法使いの部隊が駆け付けるまでの時間稼ぎ集団で、低級の魔物のみ討伐推薦である。それでもパーティを組んで複数で挑むのが推奨だが。

中級以上は魔法使いが所属する軍隊が処理するのが当たり前で、発見次第即離脱。中級以上と出会って生きて帰れるのは稀なほど命がけな分、情報だけでもお金になる。情報を持ち帰り、軍からお金が出る。

時たまあるクエストを一緒に受けながら生計を立てている集団で、常日頃死と隣り合わせ。誰もがやりたくない仕事ナンバーワンだ。

入れ替わり早いので人材はいくらでも募集している。

大金が手に入るなんて本当にごく一部で、一般的な強さではあくまでギリギリ家族を養えるレベル。サラリーマンとあまり変わらない。

それで死んでは割に合わない筈だが、それなのにいつでも人はいる。

戸籍がなかろうが訳ありであろうが誰でもいいからだ。


魔法が使える者を基準に、魔法至上主義の世界。

逆を言えば非魔法適性者には厳しい世界だ。


日本が舞台で、元の世界がモチーフだというのにスラムはある。今も飢えて死んでっている者もいる。

そして奴隷もいる。

奴隷と言っても死刑勧告を受けた死刑囚だけであり、犯罪奴隷だけだ。

そういう者が基本的に無料奉仕で冒険者の付き添いとしている。付き添って魔物を倒せば倒すほどポイントがたまり、ギルドに登録された冒険者を主人にしなければいくら個人で魔物を狩ってもポイントはたまらない。他の仕事を従事したところでポイントは貰えない上に普通犯罪奴隷を雇って貰えるところなどありはしない。

魔法で細工された首輪は外れないが、奴隷を脱する事はできる。逆に死刑囚だと定められてから一定期間、奴隷を脱しなければ死ぬ。国に貢献すればするほど死ななくていいのだ。

奴隷に付けられる首輪も、人に傷付ける、危害を加えるような真似や器物破損、物を盗む行為など犯罪に走れば首が締まり、死ぬような仕組みになっている。また付き添いの冒険者を主人として登録する為、言う事をきかねば死なない程度の電流が流れるらしい。

しかし問題はある。

無料奉仕なんで食料や寝床なんてものはアリはしない。たまに付き添いの冒険者の温情で提供されることはあるがそもそも元は犯罪者。そんな事する義務はない。

つまりは短期間でポイントを稼ぎ、奴隷を脱しなければ飢えて死んでしまう。

死にたくはない、死なない為にはどうするか。追い込まれた人間というのはなんでもするものだ。


首輪には抜け道がある。

主人に許された事は犯罪以外ならできる。押しに弱そうな主人を選び、恐喝ではなく¨お金を援助¨してもらうなら話は別だ。

あくまで犯罪行為にしか首輪は発動せず、このように抜け道がある。

主人が疲れたから肩を叩いてくれと言ったら多少強く叩いたとしても、主人がマッサージだと言えば暴力ではなくマッサージになる。

スラム出身などであれば冒険者でしか仕事がない。また女子供は力がないからお金が稼げない。そういう人は犯罪奴隷に頼るしかない。

そこを犯罪奴隷は目をつける。貴方の代わりに戦うから主人になって欲しいと声をかけ、後は足元をみてやりたい放題するというのが現状だ。

売上金の半分以上は援助という形で強奪し、女であれば犯したりとある意味冒険者という職業は闇だらけである。ギルドも警察や軍などもスラムの人間や犯罪奴隷などが揉め事起こしても上は特に我聞せずで無法地帯となりつつある。下はどうでもいい、それほど腐りきっている。


この現状をあの学園に通うお坊ちゃんお嬢様達は知らないだろう。

スラムの人間を小汚い乞食としか思っておらず、また軍は冒険者を使い捨ての駒、金の亡者としか認識してない。肩身狭い職業だ。



俺は時たまある軍からの収集(調査などの数合わせや魔物からの攻撃を防ぐ為の肉の壁がわりに)が面倒な為、いくら戸籍がなくとも冒険者ギルドには登録はしてないが、登録はしてなくとも魔物の素材は売れる。

勿論登録した方が換金率もいいし、一緒にクエストも受けられるので効率がいい。

ただギルドからの強制的なクエストなどに縛られるわけにはいかないので、登録するわけにはいかない。

よって安く買い叩かれるが仕方ない。元の2割程しか換金はできないが、贅沢は言えないだろう。日々の食費やお茶する程度には賄えている。登録すれば6割……いやなんでもない。




「あ、ゴブリンの群れがあそこにいますねっきゃは」

「魔石だけは壊さないでくれ」

「はぁ〜いっ」



レヴィが地面を蹴って、そのまま群れの真ん中に着地する。

するとレヴィの瞳が光る。



「うふっイル様〜こんな感じでどうでしょうか〜」

「凄いなと言いたいところだが、それができるなら最初からやってくれ」



頭が痛い。

レヴィがやったのは悪魔特有の特性の威圧で、ただ単純な威圧かと思えば膨大な魂の質量を持つ悪魔がやるとそれは凶器になる。

ある一定の精神力を持ってないと、死に至る病なものでこの程度の下級の魔物では歯が立たない。皆、死に絶え……死体だけが無残に広がっている。

中級でも下手すれば死んでしまう悪魔の威圧。理性を持つ人間が受けたら少なくとも精神がやられて自害する。

魔法使いなら魔力の防壁があるが、それでも恐怖で固まって動けなくなるだろう。



「いっぱい素材が手に入りましたねぇ〜褒めてくださいなっ」

「よしよし」

「ふにゃあ〜〜」



柔らかく触り心地のいい頭を撫でてると、指先が角に当たり、羊のように巻かれたその角をソフトタッチで触ってみる。

気持ちよさそうに目を細め、くにゃくにゃと腰が抜けたレヴィ。



「角はダメれすぅ……」

「えっ、尻尾もダメ。角もアレじゃあ……悪魔って弱点多くないか?」

「いえ〜ご主人様限定なだけなんで。はぅっ」



翼も触ってみたがココも弱いらしい。ふむ。

面白がって触ってしまったが、ゴブリンの死体が広がる中で何をやっているんだろう。

ショッキングな映像の中で和んでる俺もだいぶキチガイだ。

慣れたとは言え、血などを見ても何も感じないのは人間として不味いんじゃあ……手遅れなような気がするが。



「ふぇっ続きしてくれないんですか?生殺しですかぁ」

「場所を変えよう。ここは死臭が酷すぎる」

「そうですね〜早く換金しましょう……うぅ」



俺と同じローブの下にはいつも際どい衣装を着るレヴィだが、その下がどうなっているかなんて考えたらヤバい。

馬鹿な、俺は紳士を目指しているはずだ。決してそれは変態なんていうものじゃない。女の身体になってまで何を考えてるんだ。

あくまでスキンシップの範囲で……



「イル様……優しくしてくださいね?」



俺達の関係は至って健全です。















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