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交換日記







なんとも予想外な言葉がきた。

友達なんて都市伝説か何かなんじゃないか……ってくらい軽く現実逃避するくらいに。



「はは、突然で驚くよね〜」

「それはそうですけど」

「あのね、エル君のお家に体調面の事があるから必要最低限人と接触させるなという言伝はされているのだけど……」



まぁ、仮にも御三家である小鳥遊家は権力もあるしこの学校への援助もしてるから、ほぼ一人が独占した教室に授業もゆるゆる、テスト以外は武道も免除など、こんな高待遇なのだろう。



「文通はしてはいけないという決まりはないよね?」

「文通ですか?メールやチャットアプリなどではなく?もしかして紙媒体の事言ってるんじゃ……」

「そう!相手はエル君とは違って一般家庭で、スマホとか持ってないみたいだしぃ〜、魔法使いとかでもなく普通の学校に通う子なんだけど、ちょっと訳ありでね。

会うことを要求しているわけではないし、あくまで文通というか¨交換日記¨を求めているんだよ。

交換日記も私を通して学校で手渡ししてくれればいいし、急かす事はしないよ。負担になるようならすぐにやめさせるし、暇つぶし程度に考えてくれればいいと思ってる。

あ、私の親戚だから身元は保証するよ〜。

エル君もこの学校じゃ、同年代な子と関わり持てないでしょう?仕方ないとはいえ折角の青春が勿体ないからね〜。強制ではないし、無理なら断っておくからどうかな?」

「どんな方なんでしょうか?」

「女の子なんだけどね、なんて言ったらいいかな?別にエル君とどーこーなりたいわけじゃないっぽいし、あ、でも年頃の女の子だし絶対とは言えないかーうーん」

「異性の方なんですか。自分はまだしも、相手は気にしてないんでしょうか?」

『ダメですよ!人間と恋愛なんてダメなんですからね!!ぷんぷん』



自分と友達になりたいとか聞いて、普通に同性かと思ったが、男同士が交換日記ってキモいしな。いや俺も身体は女だから異性かもしれないが、エルは男っていう認識の元の話だし。

女の子と聞いて納得はしたが、それもそれで可笑しい。

異性と交換日記。それが何を意味するのか。やっぱりレヴィの言う交際目的か。


小鳥遊 エルは仮にも御三家の御曹司。つまりは貴族の、権利者の大事な跡取り息子。

玉の輿、その地位を狙う者から暗殺目的などで近付く輩は沢山いるものだ。本来なら。

だが、そもそも俺は学校では他者と接触はしないし、登下校中に襲われたところは今のところない。

暗殺者は論外だが、いや、ちょっと女の子にはちやほやされたかったとか思わなくないけど……


佐伯先生には悪いけどエルの容姿や家に目がくらんでるとしか思えないが、その女の子と会ったことはあるか?

佐伯先生繋がりで情報はいってるかもしれないが……



「この際だから言っちゃうけど、その子は色々あって女性恐怖症なんだ。学校にも暫く通ってなくて、塞ぎ込んでる。久しぶりにこの間会ったんけど、虚ろな瞳でこちらを見上げるだけでね。とてもじゃないけど、今は恋愛方面とか全く考えてない子だよ。

今はこの学園で教師をしてて、名前とかぼかしながらエル君の話をしたら、目を輝かせてね。

会いたいわけじゃないけど、交流したいって。ノートを取り出して交換日記をやりたいと言い出したんだ。

親御さんも初めて聞いた我が儘らしくてね」




名前を知らない相手に興味を持った、そんな話を淡々と話す佐伯先生。

佐伯先生も戸惑ったらしく、最初どうしようかと思ったが……

相手の名前は非公開でいい、あくまで相手に負担のならない交換日記がしたいとそう言うばかりで



「何故、私なのでしょうか?」

「病弱だけど魔法を凄く頑張ってる生徒がいて、身体のハンデがあるにも関わらず魔法の実力だけで学園4位になった生徒がいるっていう話しかしてないんだ。だから、多分だけど……自分も少し重ね合わせているのかもしれないね。その子、学校行きたくてもきっと勇気が踏み出せないんだよ。だから身体のハンデを持ちつつも学校に通うエル君の事が知りたいのかもしれない。身体と心の病の違いはあるかもしれないけどどうかな?

カウンセリングもどきの事させるみたいに思うかもしれない。こんな話して断りずらいと思うけど、少しでも興味があったらって話」

「匿名でもいいのであれば……佐伯先生の頼みですし、彼女の期待に応えられるかはわかりませんがその話引き受けます」



身体は別に健康体だから力になれるかはわからないが、少しでも他人と関わり合いを持ってみるのも悪くはないかもしれない。

最近、色んな事があって……根詰めているのもあるから、相手には悪いが息抜きになったらと思う。

ゲームの世界、ヒロイン、攻略キャラ、身体の異変、悪魔……

まだまだ悩まされる事も増えてくるだろう。

たまにわからなくなる。こんな非日常な世界で本当に信じられるものが何一つない。

今のところ一番の理解者であるレヴィでさえ隠し事されてるし。隠し事くらい誰しもありるかもしれないが、いい感情を抱かれている感じではない。魔王というフィルターがそうさせてるのかもしれない。

優しい佐伯先生相手ですら嘘の関係で成り立っている。本当の事を話す勇気などなく、多分これからも嘘の関係を貫く。あくまでエルとして。


なら、イルとして気兼ねなく関われる人はどこにいるんだ?

たとえ紙面の間だけの関係だとしても、エルという仮面を被ってるにしろ……

少しでも¨自分¨が出せる相手が欲しいと思うのはエゴだろうか。


もしかしたら佐伯先生から伝わって、後から自分の首を絞める原因にもなるかもしれないリスクは勿論ある。

エルじゃないとバレて、そうなったらそうなったらで……レヴィの言う通り魔界に引っ込むのも一つの手かもしれない。



「ありがとうね、エル君!じゃあ早速だけど既に彼女から借りてるノートがあるんだよね〜」



シンプルながらも女の子らしい可愛いノートが出てくる。

見た目は普通の無地のノートのようだ。



「勿論エル君の事は秘匿にするし、このノートには魔法をかけてあるから、私や他人が見てもただの何も書かれてないノートにすぎないから安心してやり取りしてね〜」

『むぅ〜ワタクシに隠れて他の女と……しかも人間……むむ』



嘘は言ってないと思うが、交換日記といっても何を書けばいいんだろう?

とりあえず軽く自己紹介からか?匿名だとしても仮になんて名乗る?

女の子との会話がわからない。その日食べたものの話、バラエティー番組、野球やサッカーなどのスポーツ、ゲーム……どんなくだらない話題でも男ならなんでも会話にはなると思うが女の子はどうだ?

というか男同士でも俺は会話したことあるのか?前世で友達は……いなかったような気がする。いや、いなかったな。教室の少し後ろの席でぼっち飯していた記憶がある。

今世では先生とだが誰かと飯を共にできて嬉しい。レヴィも娯楽目的でたまに一緒に食べてくれるし……ん?レヴィは女じゃないか。女の子とはどんな会話するのか…………女である前に食欲性欲魔人の悪魔だったな。あまり参考にならないかもしれない。


キャッキャッうふふの未知の空間。恋バナや放課後スイーツの話で盛り上がって甘い砂糖菓子のような会話としかイメージできない。

なんかこう具体的な会話が思いつかない。最初は自己紹介で埋めていいと思うが、次からは会話スキルが求められると思う。

前世でも今世でも友達がいなかった俺にできるか……しかも、相手は異性。同性でもたいした会話したことないのに…異性との会話って何気に難易度高くないか。

異性との会話で参考にできる人はいないし。ヤバい、困ったぞ。

同年代くらいって言ってたよな。しいていうなら唾メイドなどの若い使用人というより玲ちゃんなんかと話すような感じか?

でも玲ちゃんとは業務的な会話しかしなかったし、あんな事があってから家には来なくなってしまった。とても悪い事をしたな。トラウマになってなきゃいいが……


話が逸れた。今はこの子相手にどんな会話するかだった。

とりあえず今は自己紹介文を書いて、内容考えるのは次からにしよう。

参考にはならないと思うが一応レヴィに女の子に嫌がられないような会話の仕方を学ぼう。男はデリカシーないとか訊くしな。ほら、生理とか……いや下ネタ話すつもりはないが女ならではの禁句ワードとかあるかもしれない。



ん?先に何か書かれて……





《初めまして、私は宮部 みのりと申します》




「レヴィには何か見えますか?」

『何かもう書かれてるんですか……んぅ?魔力を感じますねぇ。あの人間が言ってた事は嘘じゃないぽいです。でも、まさか悪魔であるワタクシが見れないなんて…そんな』



レヴィには見れてない?本当なのか?

だが演技をしている様子はなく、むしろ目を細めて何かを考えている。



『うみゅ…レベルの高い魔法……この人間侮れない!

まぁ、別に魔力の暴力でこれぐらい壊せますけど痕跡が残りますし、同じ魔法が使えるってわけじゃないですし……むむっ!』

「覗いたら嫌いになります」

『ふぇぇそれはいやぁーっ!!!』



機密性があるのを確認して、いざもう一度文章に目を通す。

……少しドキドキする。

見るのが少し怖い。本当は帰ってからゆっくりと見た方がいいかもしれないが、好奇心で思わず開けてしまう。





それはパンドラの箱なのか





『なんて書いてあるんですかぁ?』

「名前が書いてありまして、自己紹介ですね。帰ってからじっくり見て返事したいと思います。

佐伯先生も貴重な時間ありがとうございました。もしまた彼女に会う機会ありましたら、時間はかかりますが宜しくお願いしますと言っておいて下さい」

「わかったよ〜、でもあまり固くなりすぎなくていいからね」

「はい、ありがとうございます」



手紙の最初の内容を軽く見ただけで一瞬にして頭が真っ白になってしまった。




《初めまして、私は宮部 みのりと申します。

堅苦しい事は面倒なのですっ飛ばしますが(汚い走り書きですみません!)私はあなたの理解者で味方だという事をまず最初に頭に入れておいてください。それをふまえて聞いてください》




確かに走り書きという付け足し通り、カクカクした文字は結構崩れている。

かろうじて読める程度なので気にしない事にする。

きっと急いで書いたのだろう。多分帰ろうとする佐伯先生に慌てて渡したのだろう。そう考えると可愛いものだと思う。


少し予想外の振り出しから始まり……文章はもう少しだけ続いていた。

その一言は強烈で、文字の乱れが少しマシになってる辺り、一呼吸おいて書いたのだろうという事が伺える。


だからこそ真実性が増してしまい、強ばる表情筋。

あまり動きはしないが、尚更張り付けたような感覚に襲われて自分もあまり余裕がないなと他人事のように思ったりするほど、その一言に追い込まれた。









《あなたは死にます。あと一年も経たずに》










死神がいるとしたらきっと後ろに立って俺を嘲笑っていたであろう。


冷たく無慈悲に、鎌を振り落としながら









ナチュラルに〇〇なフレンズというのをサブタイにしようとして、流石にやめました。

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