悪魔のような女
痛みが治まらない。
「クソッ」
激しくなるばかりで、爆発しそうな熱が膨れ上がるばかりで…………
変な感覚だ。
まるで別の生き物のように、ドクンドクンと動く心臓。
血流が一気に全身を廻って、魔力が…………魔力?
「ぁっ………………ん……はぁはぁ」
苦しすぎて何も考えられない。
ぐるぐると頭が車酔いしたかのように気持ち悪く、辛い。吐きたい。
だけど、吐くのは胃液や食物じゃなくてナニカ。
未知の恐怖に押し潰されそうになる。
なんなんだ、俺の身体の中で何が起きているんだ。
ふと思い当たる、二文字。
暴走
「ぁっ………………く」
「随分、辛そうですわね。御主人様」
声がする方へ目線を向けると、カーテンが揺れ、風がたなびく窓際に女性が座っている。
長い角が丸まり羊のような角と蝙蝠のような黒く皮膜のついた翼、長い尻尾がふらふらと浮かんでおり、目が合うと口の口角を上げ、ニコリと笑う。
多少の違いはあれど、俺と容姿の似た、正しく¨悪魔¨
桃色の髪が陽に照らされ、キラキラと艶を帯び、軽いウェーブを描き出して愛らしさを強調するかのように、少し垂れた大きな瞳。
睫毛と肉厚な赤い唇が色気を醸し出し、 イル(俺)よりも豊満な胸元を恥ずしげなく晒し出したコルセット型の黒いビスチェ。キュッと引き締まったくびれと実りに実った果実はなんとも目に眩しい。
零れんばかりに張り詰めている胸元と、決して太っているわけではない安産形の大きいながらに形の整った臀部が強調され、本当見るところに困る。
布面積の少ない服ながら、身体のラインがはっきりされ、女性の曲線美を余すとこなく醸し出してる。
まるで男を誘うかのような完璧なプロポーションだ。
徐々に近付いてくるその女性は、娼婦のように手招きする。
「御主人様。初めての覚醒がお辛そうなので、こちらで調整いたしますわ」
頭に手を置かれ、優しく撫でられると痛みが嘘のように消え、あんなに沸騰した頭が嘘のように冷えていく。
脳をかき混ぜられているような不快感は感じるのに、それを上回る心地良さで脳が麻痺する。
しばらく経っただろうか?
美しい女性に抱きしめられ、「終わりましたよ」と耳元で囁かれると、強烈な眠気に誘われ、その豊満な胸の中で目を瞑ってしまう。
ふにゅん、と柔らかい成熟しきった肉は肌触りがよく、また心地よい。
むにゅむにゅとわざとらしく胸を寄せてくる行為でさえ愛おしく感じるほど、極上の枕のように吸い寄せられるのだ。
ふわり、ふわりと夢の旅に誘われた。
起きたらベッドの上で、タオルで額を優しく拭かれ汗を拭き取られている。
どれくらい寝ていたのかわからないが、ずっと看病していてくれたのか。
優しい手つきにコイツが不法侵入者であることを忘れそうになる。
パチリと目を冷ますと、またおっぱいに目にいった事に自分を恥ながらも、顔が赤くなってしまうのを感じる。
クソッ。今は潜在意識がどこまでも男である自分が憎い。
「起きましたか。うふふっ」
「事情はよくわかりませんが…………ありがとうございます」
この人は何者だろう?
てか、何しにここに不法侵入してきたんだ?目的は?
皆が止まっている中、動けているのも可笑しいし、この格好も人外だし御主人様とかなんのプレイだし……わけわからん。
敵か、味方か。
「説明を求めます」
「あら。ごめんあそばせ」
「貴女は何も…………ふぐっ!」
ふにゅっ、と柔らかいモノが唇に押し当てられる。
やめろ、と抵抗しようとするが身体に力が入らない。
びくん、びくんと反応を繰り返すばかりで頭がボーッとしてくる。
くちゅりと唇を割って入ってくるモノが、舌と絡み付いて……別の動きをしているみたいだ。まるで蛇のように。
くちゅりくちゅりと生々しい音が流れて、身体の芯が熱くなってくる。
そう、キス。口付けだ。
しかも、深いやつ。
唾液が流れて込んできて、こくり、と喉が通るとカッと熱く焼ける。
どくん、どくんと心臓が煩い。
「契約完了ですわ。御主人様」
身体が脱力して、はぁ、はぁと熱が治まらず、快楽の余韻に浸っていると…………
「続きします?」
物欲しそうな顔でもしてしまったのだろうか、そう囁いてきた為、全力でぶんぶんと首を振った。
これ以上はマズい。色々と。
前世だったら、あったであろう息子がおっきして、力任せに押し倒し、続きを無理矢理でもするぐらい、俺は興奮している。
女の身体だからそれは有り得ないけど、この世に生まれて以来、奥が疼くような初めての快楽に戸惑っている。
この領域には足を踏み入れたくはない、男として。それは、何かを失うような…………
いや、待て。逆に男では味わえなかった快楽を味わうチャンスだと喜ぶべきところじゃないか?男として、それをしないのは勿体無いような…………
そもそも息子で味わう快楽を知っているかどうかもわからない俺がそれをいうか……はぁ、虚しくなってきた。
萎えてきた気持ちに察したのか、女はクスリと笑い、身を寄せてくる。
「それにしても御主人様は不思議な方ですわねぇ。
御主人様は女性の方なのに…………男の味がするなんて」
「はい?」
「しかも初物の極上の味ですわっうふっ」
当分の間立ち直れそうにない衝撃発言に、俺は身を固めた。
認めざる得ない発言に、頭がクラっとくる。
待て。得体の知れない女の言葉を信用するのか?
「まさか男の上質な精の気を味わえるとは思えなくて、思わず興奮してきちゃったわぁ。うふっふふふ」
「待て。早まるな」
「ああ、勘違いしないで下さいませ。別に御主人様が女であること貶しているわけではありませんことよ?
ワタクシ、見目が良ければ女もイケますから。その点、御主人様は合格どころじゃなく、あまりにも美しい宝石しすぎて……っ!
ワタクシの方が少女のように頬を染めてしまいますわぁっ、ああっ!」
勘違いが違うわっ!!!
危うい貞操に思わず尻込みする。
妖艶な彼女を果たして上手くかわせるだろうか?
いや、イルの貞操を守るんだっ!
意識新たに彼女にまた面と向かうと、その獲物をかるかのようなギラついた瞳とぷるんっと押し付けてくるおっぱいに……早速心が折れそうになった。
副タイトル「童貞をこじらせてガチの魔法使いになりました」←New
嘘です。




