皆口 藍
華のJC(女子中学生)こと……皆口 藍はこのわたし!
まさかのまさか。
前世ではすっぱいOLだったのに、いきなりの異世界転生。
オバチャン、びっくりだわー。
しかしなんでまたゲームの世界?チョロインな男をひたすら落としていく乙女ゲーム。
『魔法使いのお嫁さん』
これはやり込んだわ。ゲーマーで二次元大好きオタクなあたしはそれはそれはもう。
ゲームの為だけに仕事をやっているといっても過言でないというほど。
ちなみに好きなキャラはパッケージでセンターを飾る王道の俺様キャラ、東雲 遥斗
王道かもしれないが、その強引さにオバチャンめろめろ。やっぱりなんだかんだいいつつ、男は肉食系よねー。
けど、彼ってテンプレ通り家柄が優れているじゃなくただの一般家庭。しかも、弟妹が沢山の貧乏一家の長男。
学校から帰ったら弟妹の面倒をみる、買い物、料理、洗濯、掃除など一人でこなす、案外世話好きで家庭的な俺様なんだ。学校にいる時は上から目線のバリバリのテンプレ俺様キャラなくせに、帰ってから発動されるオカン属性にもうクラクラ。このギャップがたまらなく、オバチャンは年甲斐もなくキュンキュンしちゃったわ。
魔法使いの最高峰である御三家でもそれに連なる家柄でもない彼が努力だけで高校二年には二属性に目覚めてトップにまで上り詰める……。
努力の天才。
それを周囲に知られることなく、あたかも数ある人間の中で選ばれた才能ある人間。
火と雷の使い手。
破壊力は他の攻略キャラ6人と比べてもダントツに高い。むしろ、属性の中で一番火力が高い分遅いが貫通力のある火属性と素早さと攻撃力も火に次いで2番目で凡庸性に自信のある雷属性。最強である。
属性には火、水、氷、雷、土、木、天、地とある。
自然属性は基本的に生まれながらの才能に左右されやすい属性で、それとはまた別の無属性があり、これは魔法の適正を持つ者なら練習すれば誰でも使える魔法だ。
火とか雷とか自然属性では定番かもしれないが、なかなか目覚める者が少なく……それは遺伝でしか有り得なかった。
御三家の2つ、風凰院家は風と雷で、天羽家では火と天なのだが……
ゲームの中でつまりは聖ユールフィア学園ランキング2位、3年生の風凰院 湊は風と土。
ランキング3位、同じく3年生の天羽 莉玖は天と地。
つまりは跡継ぎである二人は遺伝しなかった…。
その事で色々と影があるのだが、それは後にしよう。
魔法使いのお嫁さんの看板キャラクターだけあって、優良物件中の優良物件である彼こと、東雲 遥斗。
ルート的にもヒロインと結ばれて、人類の存亡をかけた災厄のイベントもクリアし、その功績から学校を卒業してからは即、騎士団の団長に抜擢される。
ドン底から金も名誉も手に入れてイケメンという、将来性がとてもあるその彼が現実にいる。
ゲーム(二次元)からリアル(三次元)へ。
もう気分はハイテンション!
いい歳のババアがはしゃぎますよ、そりゃあ、誰だってあのイケメンが見れるなら気分もアゲアゲでしょう。
JC…中学生最後の春に頭を打ち、それから三日間寝込んで思い出した前世。
ゲームの脇役キャラ、皆口 藍。
もとい、ヒロインの親友役。
所謂、ヒロインの後押ししたり攻略キャラの情報などを売り渡していく人物にあたしは転生した。
最初は困惑したし、前世の自分と今世の自分、どっちが本当の自分なのか。
だけど三日寝込んでいる内に上手く融合して、折り合いはつけたし、今はちゃんとあたしはあたしだ。
前世成分が強いけど、あたしはちゃんと皆口 藍だ。
ゲームの世界と自覚してからは上手いことあたしのところに色々と情報がくるにくる。
交友関係も広いし、何より皆口家は偵察、隠密などを生業にする家業だ。
皆口家が代々受け継がれる無属性の影魔法。
普通は無属性は誰でも練習すれば使えるが、影魔法だけは別途だ。
これは皆口家だけしか使えなく、その事実を知るのも国の上層部だけ。
皆口家はあくまで隠密だから、一般に知られてもマズイしね。
お年頃になると、皆口家の者は魔法適正者が通うユールフィア学園に通う。
将来有望な主を見つける為に。
自分の一生を捧げられる、そんな主人を。
できるなら、前世のデータを踏まえて彼、東雲 遥斗に仕えたい。
俺様だけど人格者だし、悪くは扱われないだろう…そうだとは思う。そうだと思いたい。
しかし、データはデータでしかない。
ゲームの情報が正しいとも限らないのだ。
ヒロインにもまだ会ってないし、あたしの未来はまだまだ不確定に満ちてる……
ゲームの脇役とはいえ、ヒロインにとってはあたしは美味しいキャラの筈だ。キャラクターを攻略するのに必要な情報を握ってるし、そこそこゲームの地位はあると思う。
少なくとも仲良くしといて損はない。
もしかしたら、ヒロインはあたしみたいに転生者かもしれないが。
主人公の親友、皆口 藍攻略キャラとは別枠の好感度、友好度というものが存在し、友好度の高さによっても情報の質、キャラへの橋渡し(攻略キャラのファーストコンタクト)が違ってくる。
魔法使いのお嫁さん…略してマホヨメは、恋愛だけでなく¨友情¨も力を入れている為、一部の女子には人気だった。まぁ、あくまで一部であって、恋に恋する乙女にはいらない要素とは言われたが。
本当、女ってゆーのは……(あたしも女だけど)
男同士の友情には涙するくせに、同性の女には嫌悪する。恋愛する上での障害にしかならないからだ。
いつだって恋愛モノとなるとヒロイン以外の女は悪役か、引き立て役の親友しか存在しない。
女同士の友情なんて薄いのはあたしが女だからわかる。
無駄に群れて、グループ意識が強いのに…裏表が激しく、表ではちやほやもてはやしていても、裏では酷く叩かれているものだ。
そして男が絡むと必ずもつれる。
どんなに長年の親友でも………男(恋愛)の前では呆気なく崩れさる。それが女の友情。
はぁ。こんなところで前世思い出して悲観的になってしまったよ。いけないいけない。
あたしはゲームの脇役でも、人類の勝利を導く為の密偵である皆口家の跡継ぎ。
今世の両親には情も感謝もあるし、2歳年下の妹は可愛い。
家庭の為に主人選びは慎重に行わなければいけない。
前世の知識を駆使して、この世界を生き残る………
そう、今、人類は破滅の道を歩んでいるんだ。
「おねーちゃん」
ハッとする。
今世の妹、秋宮 玲。ゲームには登場しない裏の裏の脇役。
同性に苦手意識を持つあたしが唯一裏表なく信じられる子。
汚いところを全く知らずに育ったかのような………温室育ちの純粋培養。
あたしとは違って魔法の適正もなく、とても優しそうな老夫婦がいる皆口家の分家である秋宮家に預けられた子。
だからといって魔法適性がないからと嫌悪され離されすぎているわけではなく、月に一度は皆口家に帰ってくる皆口家の天使だ。
可愛い可愛いあたしの妹。
皆口家とはどういう一族かも知らない、本当に何も知らない無垢で無知でそこら辺にいるような普通の可愛い女の子。
皆口家の修行は厳しく、たまに八つ当たりしたくなる時はあるが……それでも傷付けたくない。
この子はあたしの良心。
前世の、あたしに似ているのだ。
何も知らなかったあの頃、ただ普通に青春して恋愛して無我夢中になっていた頃の自分に思えて………
あたしみたいに汚れて欲しくないと思う。
ただ、純粋に慕っていると確信できる真っ直ぐな瞳に応えるかのように手を伸ばし……
この子に傷付ける存在ができたら許さないと誓う。
たとえ、それがゲームの運命だとしても…
テンプレストーリー
『脇役転生だけど目立っちゃいます!』始動です。




