隣の街で
城を出て隣のまちをめざす。駅馬車に乗ればすぐにつくらしい。
まあ歩いていける距離だけど馬車で移動する。モンスターが怖いしね。
2時間ほどして到着。
「駅馬車って結構高いんだな。」
運賃を支払って、ちょっと後悔。節約しないとな。
それからキョロキョロ辺りを見回しながら宿を探す。
ドン!
「おい、小僧」
「げっ」
マズイ。ぶつかっちゃた。
「ご、ごめんなさい」
「あん?ちっとこっちこいや」
太い腕の男につかまれて路地裏につれていかれる。
暗がりには男たちがまちかまえていた。
ついてないな。そう思い逃げ出そうにも、がっちりとホールドされている。
「逃げるんじゃねえ」
「すいません。許してください」
頭を下げて、必死に懇願する。
「まあ、別に許してやってもいいけどよ。」
「ホントですか?」
「ああ。俺のお願いをきいてくれるならな。」
「なんですか?」
俺がそういうと、男は笑顔で
「ちょっと金欠でよ、金貸してくんねえか?」
「えっ、それはちょっと」
「なに、すぐ返すさ。いいだろ?すこしだけだって。頼むよ。」
すこしだけならいいかな。はやくこの場から解放されたい。
でも戻ってくるかな?確認しとこう。
「ええと、すこしだけ貸してすぐに返ってくるならいいんですが。ただ・・・」
「おお、ほんとか。わりぃな。助かったぜ。すぐ返すからよ。はやく貸してくれよ。宿賃払えなきゃ追い出されちまうとこだったぜ。それにしてもおまえはいいやつだな。どうだ、俺と友達にならないか?困ったことがあったらなんでも言ってくれ。相談にのるぜ。なぁに、おまえには借りができちまったからな。気にする必要はねぇよ。どうした?元気がねぇな。メシ食ってるか?そうだ、今度いっしょにメシでも食いにいこう。いい店知ってるんだ。俺のおごりだ。けっこうウマいんだぜ。酒もいいもんそろえてるしよ。約束だ。俺たちは友達だからな。ところでそろそろ貸してくんねぇか?ちょっとばかし急いでるもんでよ。はやくしてくれよ。」
男は俺に言葉を接がせずに、一気にまくしたてた。
えっ、なに友達って?約束したっけ?いやいやそうじゃなくて確認しなきゃ。
「あ、あの友達といわれましても、名前も住んでる場所もわからないので困ってしまうというか。」
「ああん?なにいってんだ。はやく金かしてくれよ。急いでるっていってんだろうが。」
そう言って、さきほどまで笑顔だった男は俺を睨んでスゴんでくる。
コワイ。膝が震える。寒い。体が金縛りにあって動かない。ヤバい、ちびりそう。
兄ちゃん助けて!って、もういないのか。どうしよう。
金を払えばいいのか?いや貸すんだっけ?
返ってくるのか?でも友達っていってたな。名前しらないけど。
どうせ王様の金だし渡しちゃうか。だめだ。この金は魔王を倒すための軍資金だ。
渡しちゃだめだ。でもこの男たちと戦って勝てるのか?無理だ。
子供のときから喧嘩で勝てたことは一度もない。
道場の稽古でも勝てるのは年下の弱い子にだけ。
そもそもなんで勇者なんかひきうけたんだ?
ずっと家に引きこもってりゃよかったんだ。
臆病な俺に勇者が務まるはずがない。そうだ勇者なんてやめちゃえばいい。
この男に金を渡せばいい。そうすれば命までとられることはないだろう。
「わかりました。渡します。」
俺は震えた声でそういうとバッグから財布をとりだした。
「ちょっと待った。そこでなにしてるの。」
顔をあげて、声のするほうを見るとそこに女が立っていた。