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プロローグ「森の中の子供」

 そよ風が木々の間を吹き抜ける。

 そのたびに草木が音をたてて揺れ動いていた。

 葉の間から差し込む光は暖かく、時折飛び立つ鳥たちが耳に心地よい歌を奏でながら空の彼方へ消えていった。

 そんな森の中に、今一人の女の子が足を踏み入れた。

 その背中にはここに来るまでに集めた薪が背負われていて、彼女は家に帰る最中……。

 険しい坂道を登り、見つけたいい木を見つければ背中に背負い家路を急ぐ。

「早くかえらないと……心配しちゃうから」

 そんな独り言を呟いて坂を上りきると、不意に足を止める。

「え?」

 そこに女の子が一人倒れていた。

 黒い髪の毛でだいたい10才くらいの小さな女の子。

 何でこんなところに……?

 近づいていくと大木の幹の部分に女の子はねかせられていて、木の葉の間から差し込んだ光が目を閉じたままの女の子を照らしだしていた。

 それはとても神秘的で、一瞬天使か何かと間違えたほどだった。

 すごい……きれい……

「ぁ……ぅん……」

 ついその姿に見とれていると、目を閉じたままの女の子が身じろぎして目を開けた。

 はっと我に返った彼女が慌てて駆け寄る。

「あっ、大丈夫?」

 ぼんやり見つめてくる瞳をみつめつつ女の子の前にしゃがみこんだ。

「何でこんなところで寝てたの?」

「……え?」

 とても子供らしい、しかしかすれた声が帰ってきて彼女は眉をしかめた。

 良く見れば女の子の目元が赤く晴れ上がっていて、泣いていたのだと気づく。

「お母さんとはぐれちゃったの?」

「おかあ……さん?」

 首をかしげる女の子。

「そう」

 不思議そうに聞く女の子に、彼女は笑顔で答えた。

 すると……

「おかあさんっ」

「えっ!?」

 女の子は満面の笑顔を浮かべて抱きついてきた。

「ち、違うよ!?そうじゃなくて」

「おかあさん、おかあさんっ」

 そう何度も呼んで、ほおずりする女の子。

 それはまるで赤ちゃんがはじめて覚えた言葉のように何度も繰り返し呼んで、そんな女の子に彼女はいつしか反論する気も失せてしまい、笑顔で女の子を抱き締めていた。

「よしよし……」

 寂しかったんだろうなぁ。

 とりあえず、はぐれちゃったのなら親を探さないと。たぶん心配してるだろうから。

「私はナツキ。あなたの名前は?」

「………名前? 名前は……」


 ――しお………り……

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