移動
みんなが出て行ったあと、隕石が近くに落ちてくるのが見えた真は、香奈の近くへと走り、手近にある机を倒して簡単なバリケードを作り、その後ろに香奈と共に伏せた。
その直後、隕石の落下による爆風により窓ガラスが割れて吹き飛び、机も一緒に飛んできた。
一応男の務めとして香奈を庇っていたため、机で出来たバリケードの隙間から飛んできた窓ガラスの破片が身体に刺さったり、椅子が飛んできたりと痛い目に合ってしまう。
「………痛いな。」
「大丈夫?」
香奈の方を見ると特に外傷はないようだ。こちらを心配そうな目で見てくる。
「まあ少しガラスが刺さったけど大丈夫。とりあえずもう少し安全な所に移動しないか?」
「……分かった。」
移動に納得してくれた香奈を連れて教室を出る。
教室から出た生徒は隕石が落ちる前に見た時には、校門の方へと走っていったところを見るに、自分の家へと向かっていったのかもしれない。
先生に至っては車にて出ていったのか、校舎裏には車が残っていなかった。
………よくみると1台だけ残っているのが見える。
次の落下がある前に移動するべく、とりあえず体育館の奥にある鉄筋コンクリートで出来ている倉庫にいくことにした。
そこを開こうとすると閉まっており開けなかった。
「あれ?おかしいな。授業時間中は開いているはずなんだけど………。」
少し焦りつつやっていると中から声が聞こえてきた。
「………誰かいるの?」
どうやら既に誰かが避難していたようだ。
「ああ。2-Bの近藤だけど中に入れてもらえないか?」
「ちょっとまって。」
そういうと中に居た女生徒は中でガサゴソとしだし、少ししてから両開きの扉が開いた。
「助かったよ。サンキュ。」
「こんにちは。」
「早く入って締めて!」
女生徒は焦ったような声を出して催促してきたので、真は香奈を入れるとすぐに扉を閉める。
それを確認すると女生徒は扉の裏側に棒を挟み、扉の前に跳び箱などの障害物を置いて塞いでしまう。
それを終えてから女生徒は一息つくとマットの上に座り込む。
「あなたたちは帰らなかったのね。」
「どこに落ちてくるか分からないからね。どこに居ても大体は一緒と思っただけだよ。」
「それは私が言った言葉。」
香奈からの突込みが入る。
確かに真としてはここで死んでしまっても仕方ないのかな………というような思いも在った。
両親が死んでしまってから周囲の環境に慣れたとはいえ、慣れただけであって心までが癒されたわけでは無く、物事をどこか客観的に見てしまうようになってしまっていた。
「ということだったんだけど、教室の爆風を受けたんでとりあえず移動することにしたんだ。」
「………まあ。私も同意見ね。ただ教室だと何かが飛んできたときに防ぐことが出来なさそうだったから、周りに窓のほとんどないここを選んだのよ。構造的にまだマシだとは思うしね。」
「………だよね。」
「それにしても来てくれてよかったわ。一人でここにいると心細くて仕方なかったの。みんな家の方に向けて走って行ってしまうし。」
「所であんたの名前はなんていうの?………どこかで見たことがあるような気がするんだが………。」
「本気で言ってるの?」
「真は無知だから仕方がない。」
なぜだか二人から仕方がないなこいつは………的な目で見られている。
………なぜだ?