隕石
その日、地球に隕石が落下した。
ここは九州の片田舎にある普通の高校だ。
生徒総数は、ここ地域に1校しか無いことから、自然とこの高校へと集まってくるため、約300名と少なくない人数が来ている。
その中に近藤<こんどう>真<まこと>は通っていた。
学年は高校二年クラスは2-Bで、成績は中の上あたりになる。
中学の終わりまでは、京都の比較的都会の方に居たのだが、飛行機事故により両親が他界したため、親戚に引き取られることになった。
その親戚というのが今居る九州となるわけである。
転校当初は両親を失ったことに理解が追いつかず、ただ漫然と日々の生活をしていたが、1年も経つと周囲の環境にも慣れ、普通に話せるようになったため、幾人かの友達も出来た。
そんな中の一人である河津<かわづ>剛士<つよし>が声をかけてくる。
「おーい、まこと。今週土曜日だけど川に行かないか?」
「ああ。最近暑いしいいね。」
現在の季節は7月に入ったこともありかなり暖かくなっている。
高校生にして遊ぶのが川?と思うかもしれないが、この田舎にはゲームセンターやカラオケなんていうものがあるはずもなく、どうしても遊ぶとなると山や川といったものとなってしまっていた。
少し出ればいいのかもしれないが、出るだけでも3時間かかるとなれば、往復で6時間となり遊ぶ時間があるはずもなく諦めてしまうことが多かった。
「じゃあ竿も一緒に持ってきてくれよ。」
「わかった。」
返事をすると、そのすぐ後にチャイムが鳴り、それを聞いた剛士は自分の席へと帰っていった。
授業が始まりしばらくして誰かの携帯が鳴り始めた。
それを機会に他の携帯も鳴り始める。
「なんだ?」
「どうした?」
「他のも?」
どうやら先生の携帯も鳴っているようで、携帯を見るなり急に窓へと走っていく。
他の携帯を持っている生徒も同じように窓際により空を見ている。
「どうしたんだ?」
俺は携帯を持っていないので、近くに居た生徒に尋ねてみた。
「なんか緊急速報入ってきてるんだけど、隕石が地球に降ってくるみたいだよ!」
その女生徒(梅谷<うめたに>梢<こずえ>)は興奮気味に、携帯をこちらへと押し付けると空を見始める。
真は携帯の内容を読んでみた。
内容は簡単に言うと隕石がアジア地域を中心に落ちてくるというものだった。
落ちてくる時刻は数分後とのことで、生徒や先生までもが空を見ている理由がよくわかる。
真は席が窓際ということもあり、自席に座って空を眺めていた。
そして数分後、メールの予告した通り空が光ったかと思うと、それがどんどんと増えてきているのが分かる。
「………おいおい。」
「あれって………。」
「やばい!にげろ!」
誰が言ったのか、その言葉を引き金に生徒は脱兎のごとく教室の外へと出ていく。
「こら!お前たち!勝手な行動をするな!おい!」
そういいつつも、先生も同じように教室を出ていってしまった。
教室に残ったのは真と神崎<かんざき>香奈<かな>………俺が預けられた先の親戚の子である。
「香奈は逃げないのか?」
香奈は窓の外に向けていた視線をこちらへと向ける。
「あれだとどこにいても一緒のような気がする。」
そういうとまた窓の外へと視線を戻した。
「そうだな。」
真もその意見には賛成で、香奈と同じように視線を窓の外へと戻した。