プロローグ
「ハハハ! そらそらそらぁっ!」
少年が笑いながら、火炎を雄哉目掛けて投げつける。
雄哉は間一髪のところで避け、火炎はそのまま壁にぶつかる。
火傷一つ負っていないことに安堵する暇もなく、雄哉は再び逃げ始める。
「すごいねえっ! でも、何時まで逃げられるかなあ!?」
次の瞬間、目の前の道が凍り始め、そのまま壁になって雄哉の前にそびえたつ。
纏う冷気がやたら寒いが、そんなこと気にして入られない。
背中から熱気が迫る。丁度、真冬の朝一番にストーブを焚き始めてすぐの温度差に近い。
振り返れば、少年が炎を空中で弄びながらこちらに迫っている。
「無駄だよ。僕の二律背反に、アンタみたいな凡人が逃げられるわけ無いだろ?」
少年は楽しそうに、それでいて残酷に笑う。
「仕方ないよねえ。君がさっさと寄越してくれないんだもんさあ? 素直に渡せば、今からでも命は助けてあげるんだけど?」
一体どういうことなんだ。
どうしてこんなことになったんだ。
俺は、どうしてこんな目にあってるんだ。
訳がわからない。
一体、何が、どうなったらこんなことになるんだ。
そう、雄哉には、一体何がなんだか、一切、全然、微塵も理解できていなかった。
ここで、少し時間を巻き戻そう・・・