序章
むかしむかしあるところに、
とても美しい女性がいました。
慈悲深く心の優しい女性に神は恋に落ちた。
神は悲しむ妻と別れ、女性の手を取りました。
それは他の神から反感を買うことにもなりましたが、
2人は愛を深めあい、次第に祝福されるようになりました。
そして、美しい女の子が産まれたのです。
やっと手に入れた幸せ。
家族の平穏。
しかしそれらは、長くは続きませんでした。
神の元妻が女の子から神の力を奪ってしまったのです。
元妻は神から死神へ落ちましたが、
女の子の力は戻りません。
神と女性は嘆き、悲しみました。
人間となってしまった以上、
女の子は神の世界にはいられないのです。
人間の世界へ女の子を送るとき、
2人はせめてもの祝福を授けました。
神は『人の生は短いので、永遠の命を』
女性は『人は老いるので、永遠の美しさを』
こうして女の子はルカと名付けられ、
人間の王族として育てられました。
可哀想なルカ。
彼女の愛した人は、老いて死んでしまう。
彼女の愛した人は、彼女をおいて逝ってしまう。
そして神の子を利用しようと、
欲深い人間しか彼女のまわりには集まらない。
『だれも私を見てくれない』
『みんな私を置いて逝く』
ルカは嘆き、両親に願いました。
『どうか命に終わりを。』
『限りない生は地獄と等しい。』
両親はそんなルカを見て心を痛めました。
しかし、神は恵みを与えるもので
生を奪うことはできません。
奪うことが出来るのは、死神だけです。
死神は言いました。
『私はお前が憎い。』
『私がお前から生を奪うことはない。』
とうとうルカは絶望してしまいます。
そして
美しい髪を切り刻み、
珠のような肌に醜い傷を付け、
自らに呪いをかけます。
『人といるから辛いのだ。』
『ならば人と会わないようにしよう。』
『私をここに閉じ込めて。だれも入れないように』
『1人で永遠を生きるための空間を。』
―――…だれどもし、もし、心優しい人が来たら。
その時は空間に入ってきて。
1人は寂しいの。辛いの。お願い。




