第5話『無力なボクらにできること…だぽ』
窓から見る空は、しだいに赤く赤く塗り替えられていった。
夏の朝って早いんだね。もう、明るくなり始めている。
まだ、4時過ぎだよ。
夜おウチについたのが12時くらいだったから、4時間くらいずっと泣いていたのか…
どれだけ泣いたら涙って止まるのかな
ほっぺたが、可哀想だね。ワタシの涙で風邪ひいちゃうよ。
ほんのり、明るくなり始めた頃、ワタシはもう一度チャットルームを覗いて見た。
♂ヤマー:…なんでこんな事になるんだ
♂ヤマー:みんな脳ミソもってるからな…
♂ヤマー:…クソッ…涙が出てきやがる
♂ヤマー:ボクは信じてるYO!みんな絶対帰ってくるYO…
**お知らせ**
ぽ 入室
♀ぽ:やまぁ〜まだ起きてたぽ!?(*^□^*)
♂ヤマー:やぅ!ぽ様(´艸`)ノシ
♂ヤマー:チミこそ、こんな時間に…!?夏休みなんで、これからラジオ体操でもいくってか…ワラヾ(・∀・)
♀ぽ:ばか・・・(*^_^*)σ
♂ヤマー:チミはもう寝ろよ。体壊すぜ。今日も夏期講習あるんだろ!?
♂ヤマー:チミの気持ちは分かってる。ダイジョーブ!ボクが、みんな待っとくからさぁ(*´艸`)b〃
♀ぽ:やまぁ〜(T_T*)
♂ヤマー:でもまぁ、哲サンも「リアルから弾き飛ばされたヤツらの集まり」とはよくいったものだYO…ワラ
♂ヤマー:まぁ、確かにボクなんか、リアルじゃ全然うだつのあがらねぇ人間だけどサッ…ワラ 確かに、ここはキズのなめ合いだわさ…ワラワラ
♀ぽ:何いってるぽよ。やまぁ〜。(´∀`*)
♀ぽ:じゃぁ、うだつのあがる人間ってなんなぽ!?ヽ(´ー`)ノ
♂ヤマー:そりゃぁ、仕事も出来て、金持ってて、要領良くて、女に不自由なくて…まぁキリがないYO!?
┐(´艸`;)┌
♀ぽ:ホントにそんな人間が素晴らしいぽ!?(o^-^o)
♀ぽ:やまぁ〜が、言った人間って、それぽのパパの事だぽ。(`▽´*)
♂ヤマー:へー、ぽ様のパパ様ってカッコイイじゃん! Σ(´艸`ノ)ノ
♀ぽ:カッコイイ!?
♀ぽ:全然らよ!ぽはパパの事なんて大キライ!!らって、ぽの事なんて、どーでもいいぽよ。自分の娘を愛せないない人間が、他の人間を愛せると思う?パパのやってる事って、それこそ、偽りだぽよ。
♂ヤマー:ぽ様…
♀ぽ:ホントに、素敵な人って心がキレイな人らと、ぽは思うぽ。ヽ(´ー`*)ノ
♂ヤマー:心がキレイな人!?(*o´艸`)
♀ぽ:例え不器用れも、何かに一生懸命れ、いつもいつも優しくて、困った人をほっとけなくて、ばかみたいにショージキな人・・・(u_u)o〃
♂ヤマー:ぽ様…チミ…それ哲サンの事!?
♀ぽ:きゃはっぽ。(^-^*)
♀ぽ:ここのみんらの事らよ。ぽはね、キレイ事でもいいんじゃないかなって思うぽ。らって、キレイ事がなくなったら、それこそ世の中終わりだぽよ。
人って結局みんらワガママじゃない。だから、せめて、キレイ事れも言ってないと、それこそいつか勝手気ままに自分だけの事しか考えられなくなっちゃうぽよ。
♀ぽ:てっぺーは、自分が言った事はただのキレイ事っていってるけど、でもそれによって、ぽっていう一人の人間が救われたんらよ。だから、てっぺーはぽの心の恩人らぽよ。(*T‐T*)
やまぁ〜や、ダイズ、あこおばちゃんもね。(T^T)ノ
♂ヤマー:ボクらは、チミの心の恩人!?(´艸`*)
♀ぽ:そ〜らよ。みんらのおかげで、ぽの心の寂しさはなくなったんらもん。毎日、毎日がどれだけ忙しくて、イヤな事があっても、みんらに夜ここで逢えたら、すっごく幸せになるぽ。また明日も頑張ろうってなるぽよ!p(T-T*)q
♂ヤマー:…クソッ…外は明るくなってきてるってのに、涙がとまらないぜ。
♀ぽ:だから・・・だからね・・・みんらがいなくなるのは絶対イヤらぽ
♀ぽ:みんらと100年先までずっと一緒にいたいぽよ〜!!o(*T□T*)o
♂ヤマー:ぽ様…ヤベッ…ボクもケータイが洪水になってきた
♀ぽ:人と人との出逢いって奇跡なんらよね。らってね、人はみんら泣き虫らぽ。強い人なんかいないぽ。らから、支えあって一緒に歩いてゆかなきゃいけないぽよ。この長い道のりはきっとまっすぐじゃないぽよね。山があったり、谷があったりでこぼこ道らよ。らから、決して一人じゃ歩いてゆけないぽ。
♀ぽ:ぽはね・・・リアルもネットワークも関係ないと思うぽよ。リアルの世界じゃ救われない人間らって、こーしてネットワークの世界で誰かに救われ、もっともっと強く生きてゆこうって『勇気』をもらったんらよ。ぽは、みんらに逢えなかったら、きっとこの長いでこぼこ道は歩けなかったぽ。
♀ぽ:ここは、みんら純粋で、心が優しくなれる場所だぽヽ(TーT*)ノ
♂ヤマー:ぽ様…ワラ…涙ってこんなでるもんなんだネ…ワラ
♂ヤマー:ボク…人と付き合ってって、こんなに感動したのはリアルでもないYO。チミの言う通り、ここでは、みんな純粋で心が優しくなれるのかもしれない…
♂ヤマー:…
♂ヤマー:…
♂ヤマー:…なぁ、ぽ様…チミはボクらに救われたって言ったよね。
♀ぽ:うん。そぅらよ。
♂ヤマー:…でも、チミのホントに望む生活って、前と変わったか?
♀ぽ:!?どーゆー事らぽ!?(;□;)!!
♂ヤマー:…チミは『勇気』をもらって前より心は強くなったかもしれない…
♂ヤマー:でも、チミがホントに望む事ってそれだけ!?
♀ぽ:うん。今は幸せらよ。(/_;)
♂ヤマー:…
♀ぽ:やまぁ〜急にどうしたんらぽ(*^_^*)
♂ヤマー:ぽ様、チミ、ボクと最初に逢った時、お金なんかいらない、お金があるからパパ様もママも様も愛してくれない、家を飛出したいっていってたよな(*o´艸`)*゜
♂ヤマー:…今もそう思ってる!?
♀ぽ:うん。お金がぽに注がれる愛情を邪魔してるぽ。
♂ヤマー:…そっか、そっか…ワラワラ
♀ぽ:なんだぽ!どーしたんらぽ、やまぁ〜!!
♂ヤマー:ぽ様…チミ…ボクらがさらに救うよ!!『勇気』は持てたかも知れないが、なんだかんだ言っても、チミは心の奥までは救われてない。チミがホントに救われるときは、パパ様とママ様の愛情を知ったときだYO!ヽ(´艸`)ノ〃
♂ヤマー:ハハハ…ハハハハハ…救ってやるゼ!!ぽ様、チミをやぅ!!(o´艸`)v
♀ぽ:!?
♂ヤマー:親の愛情をたっぷり味あわせてあげるYO!
♀ぽ:ホントぽか!?パパとママがぽを愛してくれる方法があるぽ!?
♂ヤマー:オフコース!!ぽ様
♂ヤマー:リアルじゃ何にもできねぇ、無力なボクだけどさぁ、ネットワークの友情がどんなにすげぇもんなんか、リアルの世界に見せてやる!!
♂ヤマー:ぽ様、夏期講習終わんのいつだ!?
♀ぽ:8月19日に終わるぽよ。ねぇ、やまぁ〜いったいどうしたぽ!!
♂ヤマー:ボクらが、チミをホントの意味で救ってやるYO!!
♀ぽ:ホントぽか!?なんだか、よく分からないけど、嬉しいぽ!よろしくお願いしますぽ
♂ヤマー:ハハハ!!そうと決まれば、みんなにメールしなきゃ!!
♀ぽ:みんな!?また、みんなとチャットできるようになるぽか??(*^□^*)
♂ヤマー:バケヤロウ!!(*o`艸´)ノ チャットどころじゃねーゾ!!リアルでみんなに合わせてやる!!
♀ぽ:リアルで・・・!?ホントぽか!?みんなに逢えるぽ!?
♀ぽ:わーぃぽ\(^O^)/わーぃぽ\(^O^)/嬉しいぽ!楽しみらぽ!(*´▽`*)
♀ぽ:・・・
♀ぽ:・・・哲平にも逢えるぽ・・・!?(*^□^*)
♂ヤマー:あぁ…連絡はする。だが、あとは本人しだいだ…
♀ぽ:・・・
♀ぽ:・・・わかったぽ。よろしくらぽ。
♂ヤマー:んじゃ、ボクはちょっとぽ様救出大作戦を立てて、みんなにメールしなきゃいけないんで、オチるな!!
♂ヤマー:チミも、寝てないんだから、後はボクがなんとかするから、早く寝ろよ!!
(*´艸`)b"
**お知らせ**
♂ヤマー 退出
♀ぽ:やまぁ〜はりきってたぽよねぇ。(^-^*)
♀ぽ:これから、一体何が起こるんだぽ・・・!?
気がつけば、窓の外は明るくなって、朝日に変わっていた。泣きつかれたせいか、ヤマーとのチャットで心が少しラクになったのか、ヤマーとお話を終えたとたん、倒れるように眠りについた。
夢をみたんだ…
みんな笑ってる
みんな手をつないでる
みんなで生きている
「塾に遅刻するわよ!!起きなさい!!」
大ママの恐々しい声でワタシは、強制的に起こされた。
しかし、寝ていない体を目覚めさせたのは、大ママの声のせいではなかった。
携帯電話に入っていた、ヤマーからの1件のメールだったのだ!!
集結せよ!!渋谷109!!
時は8月20日正午12時
『ぽ様誘拐大作戦』
を決行する!!
詳細は当日説明する!!
って、えっ…えっ…ちょっと待ってよヤマー。
ワタシを誘拐するって、どういう事!?
ワタシを救ってては頼んだけど、誘拐するって、一体何考えてんのよ。ちょっと、ヤマー!!!!!
こうして、私の長い長い夏が、今始まろうとしていた。
第1部完了




