序章
毎日がイヤだった・・・
ガッコが終われば、ピアノにお茶に英会話、そして家庭教師のセンセとのお勉強。
私の自由な時間なんてない。
私の遊ぶ時間なんてない。
そして・・・
私にはガッコのお友達はいない。
お昼はいつも一人だった。
なんで、他の子はお弁当があるのに、私にはないの?
ねぇ、ママ。
忙しいのは分かるけど、私もクラスの子たちと一緒にお弁当を食べたい。
一人で食べる学食のお昼は胸がいつも苦しくなるよぉ。
パパとママはいつも仕事仕事で忙しい。
私のことなんてきっとどうだっていいんだ。
パパは会社のエライ人らしい。
ママは都内で何店舗もある有名なエステの社長みたい。
でも、パパもママも、私だけのパパとママなんだよ。
たまには、一緒にお出かけしたいよぉ。
私はガッコのお友達が羨ましい。
放課後楽しそうに、ガッコのそばのスタバでお話ししたり、ゲームセンターで遊んでみたい。
でも、ガッコが終われば毎日毎日お稽古事ばかりの日々
放課後楽しそうに、ケータイ片手にメールしたり、お話ししたり一度でいいからしてみたい。
だけど、わたしのアドレス帳には誰かの電話番号もアドレスもはいっていない。
着信はいつも大ママからしかない。
「早く帰って来なさい。先生がお待ちよ。」
授業が終わったチャイムとともに、私のケータイが震えだす。
私はそんなケータイが大キライだった。
夜中・・・
私は窓から夜空を眺める。
それが、一日の務めが終わった私の毎日の日課だ。
思いっきり夜の空気を吸い込んでみる。
寂しさでいっぱいな張り裂けそうな胸が、かろうじで蘇ってくる。
その夜、大キライなケータイにちょっと触れてみる。
ケータイの画面いっぱいに無機質な模様が流れてゆき、あるサイトに辿りついた。
** 憩いの広場 **
↑
チャットならここ
ケータイから青白く放たれる光に包まれ・・・
気がつけば、ケーターイをクリックしていた。
それが、わたしの冒険の始まりだった。
私にとって、大切な、とっても大切な、ひと夏の忘れられない想い出の始まりだった。
哲平:誰かいる〜
哲平:ふぅ〜今日も一日終わった終わった・・・
誰もいないチャットの部屋で、哲平という男の子が一人でしゃべっていた。
私は・・・私の名前は・・・
『ぽ』
うん、『ぽ』がいい。
赤面症な私は、慣れない人の前ではすぐ赤くなる。
うん、『ぽ』がいいな。
なんども、心でつぶやいていくうちに、寂しかった心が少し楽になった。
心が少し楽になったとたん、私は思いついた。
『ぽ』は私とは正反対。明るくて活発で、なんでもいいたい事を言えるそんな女の子。
『ぽ』は、パパやママや大ママの目を気にしない女の子。
ありのままの自分になりたいと誓い、私はその部屋に入っていった・・・
**お知らせ**
♀ぽ 入室。
これから始まる見知らぬ世界への旅立ちに、胸いっぱいの期待に包まれ、ケータイを押す指が少し震えていた。




