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43話 貴方のための

悪魔ゾルダートとしての誇りがあると、そう言うのですね」


『……』


 ラフィアはため息を付きながら、神から与えられた二つ目の力。封印の儀をするべく魔力を再び高め始める。


 ラフィアの手に白く柔らかな光、されど悪魔にとっては苦痛の光が集まっていく。


「アナタを生み出した天使は、さぞ自我が強かったのでしょう。

 わかりました。

 この道を選んだのはアナタ自身。これ以上はもう何も言いません。

 封印の儀、発動」


『クソ……!』


 封印を寄生している悪魔のみにかける。

 颯馬がした最後の契約を踏み倒し、魂から完全に分離する。


 魂は人間には観測できない。

 だが天使や神にとっては実際に質量を伴った物質と定義づけられており、魂に干渉することが可能だ。

 ラフィアは優しく颯馬の魂を抱き締めて、最高神に懇願した。


「最高神様。私はもう一度颯馬と同じ時を過ごしたい。それが天使という特権を全て失い、定命の寿命となろうとも」


『うん。君はそれだけの功績をした。

 悪魔ゾルダートも結果的に全て打ち倒したんだ。それくらいの願いは聞き届けるよ。

 しかし本当に天使の座はもう必要ないのかい?』


 最高神はラフィアの気持ちを最大限尊重してくれるだろう。それでも、ラフィアの決心は変わらなかった。


「天使の座を捨てて、真に同じ立場で言葉を交わし、そして共に老いていく。

 それこそが私の望みです」


 ラフィアの言葉に納得したように、最高神の言葉が柔らかくなる。


『本当に君は成長したね。

 統括天使アリストルの策略に巻き込んでしまった時は、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


 でも君はこの千年間で一つの答えを得たようだ。私は産みの親として誇らしいよ』


 しみじみと最高神はラフィアの成長を喜んでいたが、本人には割とどうでもいい話。

 頭の中は颯馬をどうやってこちら側に呼び戻すかだった。


「颯馬の魂が入る器ですが、転生という形を取るのでしょうか?」


『そうだね。赤子として転生させるのがセオリーだけど、それでも構わないかい?』


「嫌です。それでは一緒に歳を取るどころか会えるかもわからないじゃないですか」


 少し困った様子で最高神は考え、言葉に詰まっている。念押しするように、ラフィアは不敬とも取れる言葉を投げかける。


「何とかして下さい、最高神様」


『うーん……。よし! わかった! 

 大好きな子供の願いだ。

 本当は天界規定にガッツリ引っかかる輪廻転生だけど、今回は目を瞑るとしよう。

 後ろを見てごらん』


 振り返ると、そこには一本の苗木が心細そうに生えている。


「これは……?」


『その苗木に水をやるように、颯馬君の魂をかけてあげて』


 言われるがまま、ゆっくりと膝をついて颯馬の魂を苗木へと近づける。

 緊張して手が震えるラフィアとは対照的に、魂が一人でに苗木へと近づき、そして木に吸収される。


 すると青白く苗木が光り始め、急速に成長を遂げる。見上げるほど大きくなった木の枝から、一つの果実が実ろうとしていた。


 その果実はあまりにも巨大で、ラフィアの身の丈以上にまで成長し、果実の中に部屋が出来上がっている。


 中には人影が一つ。窓越しに確認できた。

 直感的にラフィアは身体が自然と動き始め、そして果実に出来た扉を開けるために飛び上がる。


「颯馬!!」


 冷える手を擦り合わせて緊張を誤魔化しながら、大きく深呼吸を二つ。

 唾を飲み込んでラフィアが扉を開いた。


 中には見知った顔が一つ。

 今まで何度も助けられた相棒が一人。椅子に座って目を閉じている。

 まるで何かをずっと待っているような、頭を少しだけ下に向けた状態で座っていた。


「颯馬……?」


 呼びかけられた少年はゆっくり瞼を上げて目を醒ます。

 身体をラフィアに向けて優しく微笑んだ。


 ラフィアの瞳から止めどなく涙が流れ落ちる。

 手首で拭っても拭っても、止まることはない。


「ごめんなさい。私……。っ!!」


 その時、椅子から立ち上がった少年が、優しくラフィアを抱き締めて頭をポンポンと軽く触れ、一言だけ声をかける。


「随分と懐かしい顔じゃねぇか。

 一人にして悪かった」


「ううん、いいのです……! 貴方だけの天使ですから!!」

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