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37話 後悔と絶望

(こいつ……! 息をしていない!!)


 焦る表情を隠すことなく、颯馬がラフィアの名を叫んだ。


「ラフィア! 

 一旦交代だ! シエルにすぐヒーリングを!」


 神剣・刹那を振り下ろし、アリストルを一旦下がらせてからお互いに距離を作る。


 入れ替わり、ラフィアがシエルの閉じたままの瞼を開けると、そこには光が既に失われている瞳が覗くのみ。


「シエルさん! 戻ってきて!!」


 シエルの身体はまだ温かい。

 心臓マッサージと人工呼吸を懸命にするが、一分以上続けてももう手遅れだった。


(私があの時、悪魔の心臓を抜き取っていなければ……)


 この時のラフィアの心境はもう後悔と言ってもいいくらいには情緒がぐちゃぐちゃ。

 もう魂がどこか遠くへ行ってしまったシエルの亡骸を見てラフィアは悲しみの涙が止めどなく溢れていた。


 ヒーリングは魂が器に入っていなければ意味がない。そのことを理解していながらも、ラフィアは何度もヒーリングをシエルにかけていた。


 その様子を颯馬の攻撃を躱しながら見ていたアリストルが怪しく笑う。


「てめぇ、こうなるのを狙ってやがったな」


「勿論です。ラフィアの心動かせるのなら殺すのだって何の躊躇いもありませんよ。

 今、ラフィアは『天界内での後悔』を初めて経験している。

 待ちに待った瞬間が見られますよ!!」


 反射的に颯馬はラフィアが後悔の感情に押し潰されている現実を、このままでは不味いと思う。


 すぐにアリストルを何とかしてラフィアの下に駆け寄り、力強く抱きしめやりたい。


 大丈夫だと声をかけてやりたいと、感情に引っ張られるように再び青い魔力がチカッ、チカッと体外に溢れ始めようとしていた。


 しかし、颯馬がラフィアの下へ駆け出そうとした時、アリストルがいつの間にか潜伏させていた変異体の悪魔ゾルダートを使って歯がいじめにする。


「焦るなよ。これからがいいところじゃないか。黙ってそこで見ていたまえ」


「この……! クソ野郎!! ラフィア! ラフィア!」


 必死にラフィアの名前を呼ぶがラフィアの反応は無い。どこか感情を押し殺そうと勝手に流れ落ちる涙を我慢しているようにも見える。


 ラフィアの身体からオレンジ色の光が、天使が悪魔ゾルダートを生み出す前兆の光を放ち始め、アリストルの表情は更に彫りの深い笑みへと変わっていく。


 理性。葛藤。正当化。そして後悔。

 ラフィアは今まで経験のしてこなかった感情の渦に飲み込まれ、心の中で自問自答を始めていた。


『誰がシエルを殺した?』


(アリストルだ)


『なぜシエルは殺された?』


(アリストルがシエルさんを天界の封印を解くために利用したから)


 段々と心の中の質問のボリュームが大きくなっていく。


『なぜ、天界の封印をしなきゃならなかった?』


(アリストルが私を利用しようとしたから。

 だから、だから崩壊現象が起きた! 

 私はこの千年間ずっと頑張ってきた!

 最後に胸を張って終わらせるように、颯馬と一緒に最後の試練を乗り越えようって!!)


 心の自問自答から声を張り上げて否定する。


「違う」


「うるさい! 何も違くない!! 私は、私は千年間の精一杯やれることをやった!!」


「違う。もっと根本原因があるだろう。それを私は気づいていない。見ないようにしているだけだ。

 さぁ、思い出せ。最もこの状況を招いた原因は誰だ」


「それは統括天使が! 天界の裏切り者が!

 アリストルの……! 

 私に……、執着することがなければ……。

 私……! 私だって! わたし……」


 そして一番思い描いてはいけない真っ黒な感情が自然とラフィアの口を動かす。


「私なんて、生まれてこなければよかったのに」

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