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35話 過去編最終話 封印と召喚の儀

 片膝を突き、肩を上下に揺らしながら荒い呼吸をするラフィア。

 アリストルは後一歩を追い込むべく、神剣・刹那の維持すら出来なくなったラフィアへ語りかける。


悪魔ゾルダートは『天界にいる天使』によって生まれる! であるならば、天界に天使が居なくなればいい!

 そう思いませんか?」


「永遠に天使が下界に降り続ければ、それだけで人間の文化に多大な影響を与えてしまう。

 ここでの記憶を持ち出して下界に居続けるなど、やっていいはずがありません」


「ふむ。それは確かにその通りです。私達天使が下界に与える影響は大きい。

 ならばどうするか、あなたは既に答えを持っているのではありませんか? 大天使ラフィア」


 ラフィアの思考を狭めるために、アリストルが更に続ける。


「あなたが本当に悪魔ゾルダートをこれ以上生み出さないことを願うならば、天界にいる数少ない天使を全て下界に送ってしまえばいい」


「何を、世迷言を」


「私が知らないとでも、気づいていないと思いましたか?

 あなたは最高神にもう一つ、『神剣以外に力を与えられている』はずだ」


 ラフィアの表情に凄まじい緊張が走る。


「おや、揺さぶってみて正解でしたね。

 ラフィアさんは意外と表情が豊かなようだ。

 助かりましたよ?

 ここだけは一種の賭けだったので」


 アリストルがゆっくりと透明な床を歩いていく。外界を覗き込みながら、静かに笑みを隠すように手で抑えている。


「なぜ……、私がもう一つの力を最高神に与えられていると思ったのですか」


「簡単ですよ。悪魔ゾルダートを一度も生み出したことのない天使など、私を含めてもあなた以外に一人たりともいないのですから。

 木偶の坊の最高神が特別視していても、何も不思議はありません」


 ラフィアは足下に視線を落としながら、最高神から賜った力について話し始める。


「最高神は私に言いました。アリストルの暴挙を止めてくれと、あなたは要注意だと警戒なされていたのです。

 だからこそ、あなたの権力が大きくなっても観察を続け、真の狙いを探るために様子を見ていた」


 ラフィアはアリストルを強く睨みつけ、最後の力を振り絞るように宣言する。


「あなたの狙いが天界の掌握ならば、私はこの天界自体を封印します!

 例え記憶の欠落という代償を負ったとしても!」


 アリストルの狙い通り動こうとしているラフィアを見て、心の中だけでほくそ笑む。


(来た……! キタキタキタ!

 願ってもみない提案だ。私の計画はここで大きく進む!)


 アリストルは表情をわざと泣きそうな顔へと変化させ、ラフィアを煽り立てる。


「それだけは! それだけは! 私の長年の夢を奪わないでくれ!」


 ラフィアの魔力が翼に集められ、何倍にも膨れ上がっていく。


「封印の儀、発動!!」


 ラフィアが発動した瞬間、アリストルもまた表情を笑みに変えながら魔力を高めて唱えた。


「召喚の儀、発動」


「……っ!!」


 一度発動させた術はもう止められない。

 ラフィアはアリストルの変わりように驚きながらも、そのまま完遂まで維持をし続ける。


「ハハハハハハハ!!!!

 これで私の願いはようやく叶う!!

 あなたから生まれるものを、私は見たい!


 さぁ、ここからが物語の始まりだ。

 観客は私一人のみ。破滅へと向かうあなたの奏でる鎮魂歌を、特等席で見られることに感謝しますよ! 大天使ラフィア!!」


 これが千年前の崩壊現象のトリガーとなった。

 封印の儀を行い天界内の記憶をほぼ全て失ってしまったラフィアは、もう知る手立てがなかった。


 しかし今、シエルという贄で天界に施された封印が解かれ、代償となった記憶が全て戻ったラフィアが頼れる相棒である颯馬を連れ、天界までの一本道を飛んで行く。


「ラフィア」


「なんですか?

 今あなたにお話ししたことが全てですよ。

 何かわからないことが?」


「いや……、まぁ大体何があって、なんで崩壊現象が起きたのかはわかったけどよ。

 それでもやっぱりわからねぇことがある。


 アリストルは、結局ラフィアから悪魔ゾルダートを生み出したい一心で、ただそれだけの言っちまえば好奇心だけで動いていたのか?


 何個も世界をぶっ壊しながら、天使を殺しながらよ。そこまでして達成したい意味がわからねぇんだけど」


「それは私にもハッキリとはわかりません。

 ですが、行動原理がわからなくなるほど、アリストルの魂は歪んでしまっていたのは確かです。


 天界を我が物にしようとする野望ではなく、本当に私個人に向けられたドス黒い感情のみで動いているのでしょう」


 飛んでいるラフィアの額に汗が浮かんでは風に流されて消えていく。


 きっとラフィアはまだ迷っている。

 ラフィアの不安そうな顔を見た颯馬にはわかる。


 口ではしっかりと覚悟を誓ったとしても、やはり後ろ髪を過去のトラウマに近い現実に引っ張られてしまい、鈍ってしまうことだってきっとある。


 この時、颯馬は心に再び願いとも取れるような誓いを立てた。


(俺がラフィアの手足になって、最後までとことん付き合う。

 だからお前はどんな結果になったとしても、自分の心に嘘をつかずに胸を張っていて欲しい)


 ここからが正念場と気持ちを切り替えて、二人は天界に向けて再び立ち向かうべく進んで行く。

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