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34話 過去編 大天使ラフィアと統括天使アリストルの衝突

「何でしょうか?」


 アリストルの語尾がつい上がる。

 ラフィアからアリストルに話をすること自体数十年に一度あるかないかのレベルでレアと言えるから。


「あなたは今、自分が何をしているか本当にわかっているのですか?」


「どういう意味ですか?」


「何か悪巧みをしているのではありませんか?」


「ほう、悪巧みときましたか」


 素直に感心した様子のアリストルを見て、ラフィアは更に念押しをするように言葉を探しながら語気を強める。


「あなたは世界を全て消し去るつもりですか?

 石碑なんてものを設置して悪魔ゾルダートを無駄に集中させて、そこの世界に出向く天使を殺しながら世界を放棄させつつある。


 管轄外になる世界とバランスを取るように天使の数を減らしている。一体何のためにあなたは世界と天使をイタズラに消費しているのか」


 吐き捨てるようにラフィアは最後に付け加える。


「それなのに、私はまだ一度も地上に降りたことがない。矛盾しています」


「中々に痛い指摘ですね。あなたは物事を俯瞰的に見られる大天使の名に恥じない観察力をお持ちのようだ」


 アリストルが少し驚きながらも、頭のいいラフィアに対して拍手を送った。

 不快な響きはラフィアを苛立たせる。


「止めてください。あなたからの称賛はとても耳障りです。


 こうしてあなたに文句を言ったところで、誰も私に罵詈雑言を言う天使も、今はもう居ません。あなたのせいで!

 本当に最悪な状況を作ってくれましたね!

 アリストル!」


 アリストルは嘲笑うように提案する。


「なら最高神にでも直談判してみたらどうです?」


「この……!」


 大きなため息をつきながら、ラフィアは頭を手で抑える。


「最高神が機能していないことは私ですら理解できます。あなたは最高神が動かないことをいいことに、今の凶行に走っていることも」


 アリストルが浮かべている余裕の微笑が、堀の深い邪悪な笑みへと一瞬で変わる。

 その変化に、二面性に戦慄し、恐怖すら覚えた。


「……!! 

 あなたは一体何が目的でこんなことを!」


「ふふ……。フフハハハハハハ!!!

 あぁぁあああ!! ハッハッハ!!!


 いいですよ大天使ラフィア!!

 やはりあなたは私が汚さねばならない!!

 その清廉された心を!!


 私はね、大天使ラフィア。あなたを愛していると言ってもいいくらいに好いています。

 共に子を設けてもいいくらいにはね!」


「何を言って……!!」


 気色の悪い物を見るように、まるで路傍に転がる蛆虫を見るような表情を浮かべるラフィアを見て、アリストルは満足そうにある独白を始める。


「私はあなたから生まれる物を愛している。

 それが天使か悪魔かなんて正直どうでもいい! あなたがそれを生み出した結果、世界がどうなろうと知ったことではない!!」


「もういいです。黙りなさい」


 それでも言葉を紡ごうとするアリストルを見て、ラフィアは神剣・刹那を呼び出す。

 それが更にアリストルの感情に火をつけた。


「それが大天使となったあなたに与えられた専用武器ですか! 美しい剣だ」


 神剣・刹那をアリストルの正面に掲げるラフィアが本気の覚悟を見せる。


「さぁ、あなたも専用武器を出しなさい」


「おや、待ってくれるのですか? 

 お優しいですねぇ? 

 ですがもう、あなたは私の専用武器を見ていますよ」


「どういう意味ですか」


「この白いローブ、美しいでしょう?」


「まさか……!!」


「そう。私の専用武器はこの魔法で陣が施されたローブです」


 アリストルが魔力を高めると、それに呼応するようにローブに刻まれた天界の文字が淡く光を放ち始める。


 音もなく虚空から悪魔ゾルダートが五体現れ、天界の宇宙が紫色に染まった。


「ただの悪魔ゾルダートじゃありませんね」


「ええ、大天使相手にただの悪魔ゾルダートでは歯が立ちませんからね」


(神剣は出しているだけでも魔力消費が激しい。一気に決めなければ……!

 今ここで私が負ければ、それで天界は本当に、地上諸共に崩壊してしまう!)


 始めから全力でラフィアは神剣・刹那に赤い魔力をブーストさせた悪魔ゾルダートを屠っていく。だが、初めこそ均衡していた状態はすぐに崩れた。


 例えラフィアとアリストルの魔力総量が拮抗していたとしても、運用効率は両者に雲泥の差があった。

 次第にラフィアの魔力出力が下がっていくが、アリストルはただ新しい変異した悪魔を召喚して戦わせているだけ。


 一体一体の攻撃はラフィアから見たらまだまだ単調だったが、一斉に襲いかかってくることで弱点を上手く補っている。


(厄介な……!)


 ラフィアの消耗を感じ取ってか、アリストルが表面上は心配する声をかけた。


「息が上がってきましたね。大丈夫ですか?」


(魔力を通しているというのに、この硬さ……!

 悪魔ゾルダートとはこんなにも強靭なのか……!)


 ラフィアにとって今回が初めての悪魔ゾルダートとの戦闘。一度に四方から襲いかかる悪魔ゾルダートを一度に斬り刻む。


 しかしまたアリストルは倒された悪魔ゾルダートを補充するように、ローブへ魔力を通して再び五体の悪魔ゾルダートを呼び出すのみ。


 なぜ最高神はこの天使に悪魔ゾルダートを呼び出せる専用武器を与えてしまったのか疑問に感じながら、再びラフィアは悪魔ゾルダートへ身体を向かわせる。


 だが、本来アリストルに与えられた専用武器の用途は悪魔ゾルダートの召喚ではなかった。


「疑問に思っているようですね。なぜ最高神が私に悪魔ゾルダートを召喚できる専用武器を与えたのか」


(思考が読まれている……! 完全に相手にペースを握られているのをすぐに変えなければ!)


「私は……!」


 被せ気味にアリストルがラフィアの声を遮った。


「答えは一つ。このローブは思い描いた効果を天界の言語で具現化するための装衣。

 悪魔ゾルダートの召喚はその力の一端に過ぎません。勿論願いの大きさによって消費魔力が増減しますがね」


 数と個。どちらが継戦能力が高いのかは明白だった。


(私一人だけでは勝てない……!)

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