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20話 鬼教官から課せられた無理難題?

 日を改めて体力を戻したラフィアと颯馬は今後の方針を考えていた。

 アレンの宿のテーブルにて、ラフィアは芯の通った声色で宣言する。


「これまでは何とか立ち回れましたが、『逆さまの世界樹』で痛感しました」


「何を?」


「颯馬のスタミナが足りないことです」


「トレーニングしろ……と?」


 ラフィアは満面の笑みで頷いた。

 やはり天使、えげつないことを提案してくると颯馬は顔を青ざめる。


「それってよ、ただ単に筋トレとかマラソンとか……ってわけじゃ無さそうだな……。

 何させる気だよ」


「颯馬の得意な戦闘スタイルはなんですか?」


「殴る、蹴る?」


「もっと具体的に」


「んー、って言ってもよ。

 他にないぞ? 武器使えってことじゃねぇよな」


「違います。はぁ……どうしてわからないのか……無意識のようですが、颯馬はトドメを刺す時は決まって足技を使っています。


 何をするにもまずは足腰。

 常人に比べれば遥かに強靭なのは認めますが、持久力があなたには足りない。

 防御力の高い変異体や、前にも一度言いましたが瞬発力の高い変異体。この二つに当たった時は内側にある悪魔に頼る他なくなる」


「だから足腰の持久力をつけると。

 理屈はわかるけどよ……、どうやって持久力なんて上げるんだ?

 一朝一夕で上がる代物じゃないだろ」


「はい。なので、私との模擬戦を一日やった後、夜通し通常の悪魔ゾルダートと戦って来て下さい」


「鬼かよ」


「いいえ、天使ですよ?」




 押し切られるようにアレンの宿から少し離れた場所へ移動し、お互い素手で構えを取って組み手を開始しようとしていた。


「ラフィアは武器を使わないのか?」


「ええ、これくらいが良いハンデでしょう」


「へぇ、随分と余裕じゃねぇか。

 泣いたって知らねぇぞ」


「大丈夫ですよ。あなたと私にはちゃんと差がありますから。全力でぶつかって来て下さい」




「はぁ……はぁ……」


「あら、もう終わりですか?」


「この野郎……絶対に一泡吹かせてやる」


 魔力無し、内なる悪魔のブーストなしの徒手空拳のみの戦闘。

 颯馬はラフィアに全力を確かに出した。

 遠慮がちに始めたが、次第にずっと涼しい顔で全ての攻撃が捌かれていくのに焦り、すぐに全力が引き出されてしまう。


 素手だけでは全く通用しないことから足技メインに切り替えるが、それでもまだまだラフィアには届かない。


 赤い髪がなびくが、その髪の毛にすら攻撃は入らずに完璧にガードされる。


「魔力の剣無しでこれは反則だろ……!」


 突き放しつつも、颯馬へのやる気を上げるために発破をかける。


「もう弱音ですか? 少し根性がないのでは?

 いいですか! 

 自分の限界を迎えた後に奥の手があるのは、自身の可能性を大きく狭めます。

 もっと貪欲に求めて下さい。


 私はあなたから致命打をもらったとしても絶対に死にません。

 まだまだ颯馬は私と比べれば弱い。


 だからこそ、ここまで上がって来て欲しい。

 それだけのポテンシャルはありますよ」


「ホントかよ……?

 想像出来ないわ。ラフィアと戦ってみたからわかる。こんだけ差があるとは思わなかった。

 この後に悪魔ゾルダートの狩りへ俺一人で行くんだろ?」


「そうです。肉体の限界をちゃんと迎えてから更にもう一歩か二歩、前に進んでもらいます。

 それを繰り返せば、立派な戦士になれますよ」


「やっぱ鬼だろラフィア」


「いいえ?」


「天使の所業じゃねぇぞ」


「よく言うではありませんか? 可愛い子には旅をさせろと」


「旅っていうか崖から突き落としてるじゃねぇか……」


 ラフィアが試すように颯馬を一度突き放したような言動を取る。


「どうするんですか? 

 止めるのですか? 

 私はいいですよ。止めたとしても私は構いません。しかし……」


「なんだよ」


 ラフィアは満面の笑みを作って


「あなたはどんな覚悟が、目的があって私に付いて来ているのですか?

 まさかまだ私に連れまわされているからなどと、言い訳を口にすることはしませんよね?」


 颯馬の覚悟を問う。

 汗を乱暴に拭いながら、一端の男として吠える。


「俺は……ラフィアに協力したい気持ちはある。

 だけどそれは与えられた願いだ。

 本物じゃねぇ……。

 だから日本を出る前に考えた。


 俺は、俺は!

 全世界の人を悪魔ゾルダートから守りたいなんて大それた願いは言えねぇ。

 その日暮らしでただ生きていればそれで良いと思ってた。

 今もその気持ちが全く無いわけじゃない。


 でもよ、目の前にいる命を助けられるなら、俺は出来るだけ助けたい。そう思う!

 正義の味方じゃない。

 俺はただ訳のわからねぇ奴に奪われる未来を、くそったれ共から守りたい。

 俺はそのために戦うよ。ラフィア」


 颯馬の瞳に青色ではない純粋な力が宿るのを見て、ラフィアは少し微笑んだ。

 期待とは時に残酷だが、それ以上の覚悟を見せてくれた相棒を信じて良かったとラフィアは強く感じた。


「あなたの覚悟は伝わりました。

 さて、では疲労も十分に溜まってきた頃合いですし、単独で悪魔ゾルダートを五体討伐して来て下さい。


 もし変異体と遭遇したら撤退を。

 再三になりますが、くれぐれも内側の悪魔の力を使わないように!

 では頑張ってきてくださいね。颯馬」


「おう。んじゃ行ってくるわ」


 朝日が昇る頃、傷だらけになって魔石をキッチリと五個持ち帰って来た颯馬は、倒れ込むようにラフィアの膝へ崩れ落ちる。


「ではこれを後六回」

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― 新着の感想 ―
ラフィアさん、やっぱり強いですね。それはそうと、たまに見える天然っぽいところもまたいいですね
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