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14話 共に背負う者、次の目的地は『逆さまの世界樹』

 殺到する悪魔ゾルダートを一撃で海の藻屑に還してから、点々と前へ進む。


(私と同じように翼が生えているみたいに身軽な身のこなし。私も負けていられない)


 その時ふとした瞬間に颯馬そうまの瞳の色が青く濁りを孕んでいたと横目で気づいたラフィアは、視力を更に意識して上げて確認する。


 だが、すぐに黒茶色の瞳に見えたために、見間違いだと納得して再び悪魔ゾルダートを討伐する。

 背後に魔力の矢を出現させ、弓の形状をとることなく手をかざしただけで一斉に射出して一掃する。


 神剣・刹那の顕現は、その空間に留めておくだけでラフィアの魔力が比にならないレベルで消費されていく。


 長くて三十分が限界の奥の手は、今回のように通常の悪魔ゾルダートの集団では寧ろ足を引っ張る、出力過剰の攻撃手段となり得る。


 それが理解できないほど場数をただ歩んできたラフィアではない。

 最初に遭遇した変異体の悪魔ゾルダートに神剣・刹那を使わなかったのはそれが理由だった。


 対多数の数を捌くための必要な魔力運用経験は、確実にラフィアへ蓄積されている。


 今はただひたすらに余計な神経を使わずに、向かってくる悪魔ゾルダートの方向へ魔力の雨を降らせながら少しずつ進んでいけばいい。


 戦いが数十分を超えた頃、颯馬の息が切れ始める。額には大粒の汗が滴り落ち、呼吸は肩で息をするほどハードな様子が見て取れるが、討伐して悪魔ゾルダートが墜落する前に移動しなければならない。


 足の踏ん張りが効かなくなり、殴りつけた悪魔ゾルダートから溢れる青紫の血液で足元が大きく滑る。


「颯馬!」


 限界に近い相棒が墜落していく。

 海面まであと数メートルというギリギリの高さでカバーが間に合う。


「悪い。助かった」


(意外と素直……、体力的にしんどくなると結構年相応なところがあるのですね)


「少し休憩しましょう。無茶し過ぎです」


「数分経てば身体も元るはずだ。

 すぐにまた下ろしてくれ」


「何を馬鹿なことを。

 人の限界です。

 そもそも、空中で跳び乗りながら討伐と前進を繰り返すことが出来ているのがおかしいと思わないのですか?」


「いや、それくらいなら出来るはずだ。

 敵もまだいる。

 休むのは全部討伐してからだ」


「逃げても私は文句を言いません。

 あなたは良くやっています」


「違うぞラフィア。

 アンタの目指すところはなんだ?

 ここにいる悪魔ゾルダートを全部倒して、そんでもって人類に平和を取り戻す。

 俺は寧ろこんなに固まって出てくれるのはチャンスだと思ってる。違うか?」


「それは、あなたの言っていることも一理あるでしょう。悪魔ゾルダートの数は膨大で、一度の戦闘で減らせる数は限られている。

 颯馬の言ってることは天使の目線から見たら正しい。

 ですが、その目線を強制するつもりはありません。颯馬は人の子なのですから」


「俺がやりたいんだよ。ラフィアの使命、というか夢か? 前に一度言っただろ。

 一緒に背負うっていうのはそういうことだ」


「ふふ、あなたの思いは私に伝わりました。

 そういうことなら、とことん付き合ってもらいますからね。

 さっきの話は無かったことにしてくれって頼んでも、もう取り消してあげませんから」


「そんなだせぇことは言わねぇよ」


 軽口の応酬で気力が回復した颯馬が、再び悪魔ゾルダートに向けて降下する。

 二人は止まることはなく全ての悪魔ゾルダートを討伐して、アメリカの土を踏み締めた。


「お疲れ様でした」


「あぁ。そっちもお疲れ」


 花の街と噂されているニューヨーク。

 悪魔ゾルダートが大量に発生しているのにも関わらず、残存人類の約四割にも到達している。


 その理由は人口の多さによる力技。マンパワーによるものが大きい。

 多文化の寄せ集めで大きくなった社会は、悪魔ゾルダートという脅威で団結し、人種による差別意識は徐々に薄れ、プラスの方向に働いていた。


「ここがアメリカ……?

 なんか実感ないが、本当についたのか?」


 疑問を口にする颯馬を見て、ラフィアが少し得意気にある建物を指差した。


「アレを見てください!

 ここアメリカには日本にはないモニュメントがあるのですよ!」


「マジか……!」


 天から捻れるように螺旋を描いた白い巨塔がそびえ立っている。

 だが、颯馬は同時に嫌な気配を感じていた。


「なぁラフィア。あの白くてデカいやつの近くだけどよ」


「気づきましたか。あの塔は『逆さまの世界樹』と呼ばれています。

 私も何度かあの世界樹に赴いて悪魔ゾルダートの掃討を行いましたが、数日で元の量に戻ってしまいます。

 恐らくこの世で一番、悪魔ゾルダートの発生場所として有力な場所ですね」


「有力な場所ってことは、中には入れないのか?」


 ラフィアは首を横に振って否定する。


「いいえ、中央の吹き抜けになっている最深部には私も到達しています。

 ですが、あるのはただ読めない字で書かれた石碑のみ。


 世界樹自体私がこの現世に降りてきた時からあったので、初めからこの世界に存在していたのかどうかすら、もう記録も残っていません」


「この国に住んでいる奴に聞いてもわからねぇの?」


「はい。千年前にも一度聞き込みはしましたが、国民に聞いても、もっと昔からあったような気がするようで、正確な出現タイミングはわかりません。


 ただ、この『逆さまの世界樹』でハッキリとわかることがひとつだけ。

 それは確実に悪魔ゾルダートと関係していること。人間の技術レベルでは到底不可能な建築難易度ですので」


「あれが悪魔ゾルダートとねぇ……、一度行ってみるか?」


「いえ、それよりもまずはあなたの疲れを癒すのが先です。宿に着いてからヒーリングをかけますから」


「全くそこだけは引かねぇのな」


「はい。天使ですから」


 満面の笑みで言葉を返すラフィアに、颯馬は観念して後をついて行く。

 この廃墟と緑が混在する日本とは違うアンバランスな環境。


 一体どこに疲れを癒すことのできる宿があるのかは想像もつかなかったが、『逆さまの世界樹』を目的地とするなら、十分な休息が必要。

 颯馬のみならずラフィアにも休息が必要なほど、持久戦は体力と魔力、共に消耗が激しいのだ。

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― 新着の感想 ―
拝読いたしました! サンドイッチの描写があまりに美味しそうで…!! 食べたくなりました☆ そして空中での戦闘の爽快感! 勢いがあり、読みやすい素敵な作品ですね! ファンタジーと現実が混ざり合っている世…
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