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静かに暮らしたい最強は、どうやら巻き込まれ体質のようです  作者: じゅくすい
第6章

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仕事が繁忙期に入っているため、少し速度落ちます。ごめんなさい。

「第5試合!アストラ・ノーグ対サルネ・クルー!」


 開始の合図と同時に、アストラは動かない。

 いや――動くのは彼ではない。


 紫電を纏う【狼】。

 暴風を操る【鷹】。

 鋼鉄の巨躯を持つ【巨兵】。


 三体の精霊が、同時に実体化する。


 詠唱はない。

 命令の声もない。


 盤面が、一瞬で構築された。


 雷が牽制し、

 風が軌道を制御し、

 巨兵が中心を守る。


 完璧な三角陣に、観客席がどよめく。


 維持するだけで常人の脳を焼く戦闘方式。

 だがアストラは平然とポケットに手を入れたまま、精霊だけで場を制御していく。


 サルネは焦らない。真正面から突破はしない。


 まず風を削る。

 次に雷を遅らせる。

 最後に巨兵の足元へ圧縮弾を滑り込ませる。


 対処は正確。


 盤面が、じわりと削られていく。


(……読まれてる?)


 アストラの視線がわずかに細くなる。


 三体はまだ動いている。

 連携も崩れていない。


 だが、負荷が増している。


 再配置。軌道修正。出力補正。

 常に“次”を要求される。

 サルネは決して無理をしない。

 攻めずに削る。


 その積み重ねが、静かにアストラの集中を削っていく。


 やがて――


 巨兵の動きが、ほんの一拍遅れた。


 その瞬間。


 圧縮された衝撃波が、面で叩き込まれる。


 雷が散り、

 風が崩れ、

 三柱の均衡が崩壊した。


 アストラが初めて一歩踏み出す。


 だが遅い。


 追加の術式が足元を封じる。


 結界が閃光を放った。


「勝者、サルネ・クルー!」


 歓声は大きくはない。だが、納得のざわめきが広がる。


 アストラはゆっくりと息を吐き、精霊を還す。


「……ここでもまだ足りないっすか」


 苦笑い。アストラの選抜戦勝ち残りも苦しくなった。



 ◆



「第6試合!シュナ対リリア・アジルス!」


 3日目最終試合、絶対王者ルイ・コフィーンに次ぐと目されているシュナが登場する。


「なんで、強いのはみんなクールなんやろなぁ」


「知らないよ」


 ナギがニヤニヤと口角を上げながらシオンを見る。


 見た目だけなら、ルイといい、シュナといい、性格が似たり寄ったりに見えるのだろう。

 ナギ視点で同等、いやそれ以上の力を持っているように見えるシオンが異質なのか、それともあの2人が特別なのか定かではないが、ナギがシオンを弄るには十分だった。


「ただいま戻りました!」


「おー!ミナ!アリスは大丈夫やった?」


「容体は安定しています。アリアさんがいらしたので、入れ替わりで戻ってきました」


 ミナが現状の報告と共にシオン達の元に戻ってくる。


「アリアが試合後すぐにいなくなったのはそういうことだったのか」


 アリアが試合後にすぐ演習場から姿を消した件について、各自納得がいき、アリスの件含めて安堵の表情が浮かぶ。

 それぞれが落ち着きを取り戻す中、各ゲートが開き選手が入場してくる。


「……な、なんかシュナ先輩こっちのほう見てへんか?」


「奇遇だな、俺も同じ感想だ」


 ナギとエルドがお互いに目を見合わせる。実際にシュナの顔はシオン達の方を向いており、対戦相手のことなど全く見ていなかった。


「そうか?大勢に囲まれてるから緊張でもしてんじゃないの?」


「そんなわけあるかいな。2年の1位やで。シオンもアストラ戦みたやろ?そんな先輩ちゃうのは一目瞭然や」


「そうですよシオンくん。シュナ先輩は昨年も圧倒的な実力で選抜戦突破をしています。学院内でもルイ会長に次ぐ2番目の実力者と言われています。そんな彼女が緊張しているなんてことは考えづらいです」


 ナギとミナがシオンに対して同時にツッコミを入れる。しかし、シオンはどこ吹く風。2人のツッコミも意に介さずに空を見上げている。


 試合は実に簡素であった。


 精霊魔力行使エレメンタル・ドライブを連発するリリアに対し、自分の周囲をその圧倒的な冷気で覆い魔術を完全に遮断するシュナ。

 魔力量でも違いを見せつける氷の魔女は、リリアの魔術を全て弾いた後、息切れで動けないところを確実に氷の檻で折檻する。

 試合後も涼しい顔で、戦った余韻すら見せないシュナは試合後もシオン達のほうを向いているように見え、試合のことなど眼中にないような様子であった。


「なぁ、やっぱりこっち見てるよなぁ」


「そうだな」

「そうですね」


「考えすぎだろ。友達でも見にきてんじゃないの?」


「いえ、シュナ先輩は孤高の強者。誰かと懇意にしていることなど聞いたことがありません」


「なんか、かわいそうなやつだな」


「確かに冷たい印象はありますが、それゆえにファンの方も一定するいると聞きます。やはり、実力。強さが全てを解決するんですね」


「そうなんや。たしかに顔はものすっごい美少女やで。もっと笑ったらええのに」


「それも含めてシュナ先輩の魅力ですよ。新入生の私たちにはわからないことがまだまだ沢山あるということです」


「そんなもんか〜……」


 3日目の全日程が終わり、観客は皆、帰路につく。

 A〜Cグループは2日目を終え、大勢が決まりつつあるが、2位での敗者復活もあるため気が抜けない。

 例年、3戦目は辞退するものも現れるため、D〜Fグループの大勢が決まる4日目までが選抜戦の大きな盛り上がりとなる。

 特にD〜Fグループは突出した実力者が多くいるわけではないため、今年の4日目は白熱した試合が楽しめるだろうと生徒も教師陣も外部からの観客も楽しみにしているのが帰路から聞こえる雑踏にまぎれている。


 夕暮れに沈む太陽が姿を消した頃、4日目の組み合わせが発表される。

 各自、気合いを入れ直して生き残りをかけた4日目に臨む。それは選抜戦の日程が進むほど、熱を増し、学院全体を巻き込んでいった。

 

 

 

 


 

 

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