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静かに暮らしたい最強は、どうやら巻き込まれ体質のようです  作者: じゅくすい
第6章

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 会場の喧騒は、時間が経つにつれて興奮から悲鳴、そして諦めに似た溜息へと変わっていった。

 魔法スクリーンに一斉に映し出された全6グループの組み合わせ表。それは、今年度の1年生にとって「死の宣告」に等しいものだったからだ。


「……終わった。私の選抜戦、ここで終了」


 シオン達が集まる場所にやってきたアリスが、抜け殻のように椅子へへたり込む。

 アリスと一緒にやってきたルシアも腕を組んで黙り込んでいるが、その表情は険しい。無理もないだろう。彼女たちが放り込まれた『グループA』は、あまりにも慈悲がなさすぎた。


【グループA】

 1.ルイ・コフィーン(3年序列1位)

 2.ユーゴ・グレイス(3年序列5位)

 3.ルシア・アルステッド(1年序列2位)

 4.アリス・フェンリズ(1年序列3位)


「1年生のトップ2人が、学院最強の生徒会長と同じ檻に入れられるなんてな……」


 エルドが同情の視線を向ける。

 ルイ・コフィーン。この学院の頂点に君臨する3年生であり、王級契約者。その実力は教師陣すら凌ぐと噂される、正真正銘の化け物だ。


「会長だけじゃないですわ。もう一人の3年生、ユーゴ・グレイス先輩も上位ランカー。……正直、1つ勝つのも難しい」


 ルシアが悔しそうに唇を噛む。

 彼女の実力なら、他学年の下位ランカーとなら渡り合えるかもしれない。だが、相手は3年間この学院で研鑽を積んできた上位層だ。

 

 魔力の総量、技術、経験。たった1年、2年の差が、精霊使いとっては埋めがたい「壁」となることを、彼女たちは痛いほど理解していた。


「まあ、アリアのところはまだ希望があるな」


 シオンが視線を隣の『グループB』に移す。


【グループB】

 1.アリア・フェンリズ(1年序列1位)

 2.クレア・セントール(3年序列4位)

 3.サリッサ・ピジョル(2年序列2位)

 4.ウェルズ・ブランドン(2年序列5位)


「アリアのところもキツそうだけどね……3年のクレア先輩は曲者で有名だし。でも、アリアならなんとかなるかも……」


 アリスが力なく呟く。1年生の中で唯一、予選突破の可能性を感じさせるのはアリアだけだろう。

 だが、他のグループを見渡しても、1年生の行く末は前途多難だ。


【グループC】

 1.シュナ(2年序列1位)

 2.サルネ・クルー(2年序列3位)

 3.アストラ・ノーグ(1年序列4位)

 4.リリア・アジルス(2年序列8位)


 遠くの席で、アストラが誰かと話し込んでいるのが見える。


「……アストラ君もなかなか厳しそうですね」


「アタシでも難しそうなグループでアタシと互角だったあいつが勝ち残るのは難しいだろうね」


 アリスが哀れむように首を振る。

 今年の2年生は全体的に「不作の世代」と言われているが、序列1位のシュナだけは別格だ。彼女一人が2年生全体の評価を支えていると言っても過言ではない。

 アストラは少なくとも2位を目指した戦いになるだろう。


 そして、他の1年生が放り込まれた残りのグループもまた、過酷な戦場となっていた。


【グループD】

 1.エルマ・サンディ(3年序列2位)

 2.ススピール・バラシア(2年序列4位)

 3.レイ・ティティ(2年序列7位)

 4.セルナ・アシュミール(1年序列6位)


【グループE】

 1.ユーノ・ナテラ(3年序列3位)

 2.ユアン・ファレファ(3年序列7位)

 3.ザルマ・ウルヴィッフィ(3年序列8位)

 4.フェザー・グレイン(1年序列5位)


 グループDには3年序列2位のエルマが、グループEには3年生が3人も固まっている。

 1年生の新顔であるセルナやフェザーが、上級生の洗礼を浴びるのは火を見るよりも明らかだった。


「こうして見ると、本当にシオンのところだけ異質だな……」


 一周回って、全員の視線が最後の『グループF』に戻ってくる。


【グループF】

 1.タルマ・ネウギ(3年序列6位)

 2.ナービィ・ブライト(2年序列6位)

 3.シオン(1年序列7位)

 4.エド(1年序列8位)


「Aグループ見た後やと見劣りするなぁ」

 

「見劣りなんて言うな。3年と2年のトップなんだぞ」

 

「でも、会長やシュナ先輩に比べたら可愛く見えるのは事実やん」


 ナギの言う通りだ。

 他のグループが「殺し合い」なら、ここは「スポーツ」くらいの空気感に見える。


「……ん?」


 ふと、シオンは視線を感じて顔を上げた。

 喧騒の向こう側。同じグループの枠にいる男子生徒――エドと目が合った。

 特徴のない顔立ち。小柄で、気弱そうな少年。1年生の序列8位というギリギリの順位で滑り込んできた存在。

 彼はシオンと目が合うと、ニコリと人懐っこい笑みを浮かべ、軽く会釈をしてきた。


「…………」


 シオンは無言で会釈を返す。

 ただの挨拶だ。なのに、背筋に冷たいものが走った。

 Aグループの絶望感とは違う、正体不明の違和感。まるで、そこだけ空気が澱んでいるような――。


「どうしたんですか、シオンさん?」

 

「……いや、なんでもない」


 シオンは思考を切り替える。

 今は余計な勘ぐりをしている場合じゃない。この「幸運なグループ」を引き当てた以上、目立たず、騒がず、適当にやり過ごすことが最優先だ。


「よし、解散だ解散!明日から試合だろ?僕は帰って寝る!」

 

「ちょ、待たんかいシオン!作戦会議や!まず選抜戦は明日ちゃうで!」

 

「必要ない。なるようになるさ」


 ナギの制止を振り切り、シオンは逃げるように会場を後にする。

 背後では、まだアリスの嘆き声と、生徒会長ルイ・コフィーンが登場したことによる黄色い歓声が入り混じっていた。


 選抜戦開幕まで、後2日。

 1年生にとっては過酷すぎる試練の幕が、上がろうとしていた。

 

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