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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 冬のカーニバル 東光連合誕生

 

 大黒PAの出口ゲート前。

 何十台ものマシンが、ピタリと横一線に並んだ。

 さっきまで笑い声が響いていたはずの空間は、今やただ重低音のアイドリングと、白い息だけが漂っている。


 ヘルメットのバイザー越しに交わされる視線。


 蓮は不如帰の仲間と拳を突き合わせ、悠翔は紅の監視者の仲間へ小さくうなずき、

 アルテミスの面々は雅を中心に、それぞれが真剣な眼差しで前を見据えていた。


「……」

 エマが無言でグローブを握り直す。

 梓のインカムからは、無駄のない呼吸音しか聞こえない。

 琴音が小さく肩を回し、麗子は唇を結んでただ集中していた。


 一方で、PAの高架下に立つ旗振り役は、あかね。

 真っ赤なフラッグを肩に担ぎながら、全員の準備が整うのを待っていた。

 彼女の動き一つで、この巨大な走り納めが始まるのだ。


 観客に回ったチームメンバーたちも、誰もが息を呑む。

 横浜湾から吹き込む冷たい風が、凍りついたような緊張をさらに強める。


「……よし、カウント入るぞ」

 インカム越しに蓮の低い声が響いた。

 一瞬で全ライダーの心拍数が跳ね上がる。


 ......3。

 エンジン音が次第に高まり、マシンが小刻みに震える。


 .....2。

 バイザーの奥で、瞳が鋭く細められる。


 .....1。

 旗を握るあかねの腕が大きく振り上げられた。


 その一瞬。

 周囲の空気さえ凍りついたような、完全な静寂が訪れる。


 真紅のフラッグが振り下ろされた瞬間.........


「ダオーン」とういう轟音。

 まるで大地そのものが震えるかのように、数十台のマシンが一斉に吠えた。

 黒煙を撒き散らし、火花を散らし、タイヤは白煙を上げながらアスファルトを蹴り飛ばす。


 先頭を切ったのは不如帰の蓮。

 特攻服をはためかせ、巨大な「横浜連合」の旗を背に、仲間たちを率いて疾走する。

 その背中には「俺たちが神奈川を護る」という誇りが刻まれていた。


 すぐ横にはアルテミス。

 彩のロータリーエンジンが鋭く唸り、雅の冷ややかで優雅な走りが一行の中心に風格を添える。

 ルナゴスペルとルナヴァイオレットも並び、夜の道を光の群れのように飾った。


 そして悠翔率いる《紅の監視者》。

 彼らは乱雑な爆音で威圧するでもなく、むしろ秩序だった隊列を組み、赤く塗られたマシンの群れを整然と並べていた。

「俺たちは関東を見張る者だ」そんな意志が伝わってくる。


 バトルではない。

 だが、各チームは己の走りを見せつける。

 加速で主張する者、整然と揃えた隊列で威厳を示す者、そして派手なスモークやライトで存在感を放つ者。


 ネオンの街を背景に、ヘッドライトの川が延々と流れていく。

 走りそのものが一つの「パレード」であり、同時に「示威行為」でもあった。


 その空気に飲まれた野次馬たちが、大黒PAや橋の歩道から歓声を上げ、スマホで必死に撮影している。

「すげぇ……東京湾が揺れてるみたいだ!」

「これが全部、新東光連合の走りかよ……!」


 勝負じゃない。

 だが、この夜の走りは、各チームが自らの存在を示す“無言の戦い”に他ならなかった。


 ベイブリッジを渡り切ったあたり、横浜の夜景を背にして各チームの走行隊列が色濃く浮かび上がっていた。

 ただの直線走行ではないそれぞれが自分たちの「色」を示すように、個性をぶつけ合い始める。


 最初に目立ったのは、調布走院ちょうふそういんの行馬が率いる“お坊さんチーム”。

 法衣を模した黒金の特攻服に、隊列を組んで念仏のリズムでクラクションを鳴らす。

「南無妙法蓮華経ぉぉぉ!」

 マフラー音と混じり合い、異様な荘厳さに包まれた車列に、他のチームから笑いが漏れる。


「お経で走るのは反則だろ!」と、ルナヴァイオレットのしおんが肩を震わせると、

 隣でひまりが「でもリズムが揃っていて……ちょっとカッコいい」と真顔で呟いた。


 次に現れたのは、東京東を拠点とする康率いる《鬼氣蕗きけろ》の面々。

 派手な鬼面をヘルメットに装着し、走りながら火花散るチェーンを振り回す演出。

 まるで鬼の百鬼夜行。

「おいおい、湾岸を地獄にすんのか!」と不如帰の蓮がツッコミを入れるが、

 その迫力に横浜連合の若手達も「うおおっ!」とどよめき、士気が上がる。


 アルテミスはというと、統制の取れた美しい編隊走行で魅せた。

 雅の指揮のもと、等間隔に並んだバイクがまるで舞踏のように動く。

「力じゃなく、品格で勝負する」と言わんばかりの存在感に、周囲の目は自然と引き寄せられる。


 ルナゴスペルは爆音重視。

 美奈子が先頭でクラッチを煽るたび、雷鳴のようなサウンドが夜空を裂いた。

 千秋や涼子らが派手な手信号で応じるたびに、観客のように後方のチームから歓声が飛ぶ。


 ルナヴァイオレットは芸術的。

 みちるの後部座席から色とりどりの紙吹雪が夜風に舞い、

 いずみは光沢加工の特攻服でLEDを反射させ、まるでパレードのような幻想感を醸し出していた。


「……ふふ、ただの走行じゃなくて、祭りね」

 エマが肩をすくめて笑い、彩は微かに唇を上げる。

 爆音、祈り、鬼火、気品、轟音、煌めき。


 それぞれのスタイルが湾岸の夜を彩り、ただの合同走行を超えて、一夜の祭典へと変貌していった。


 大黒パーキングを飛び出した数百台のエンジン音は、ベイブリッジの夜空に轟いた。

 統率のとれた隊列を組むアルテミス。彩や梓が冷静にラインを守り、雅が先頭でペースを作る。その姿はまるでパレードのような威厳を放っていた。


 だがその横を、派手な旗を振りかざし爆音マフラーを響かせる横浜連合が並走する。蓮率いる《不如帰》は、やけにエンジンを吹かし気味だ。

「おいおい、これじゃアルテミスの後ろを走ってるみたいだぜ。ちょいと前に出てやるか」

 誰かのそんな声に、隊列の端からじりじりと前へ躍り出る影があった。


 さらに、紅いラインを光らせた《紅の監視者》が左右に広がる。悠翔が低く呟く。

 監視者の隊列はややアルテミスの速度に合わせながらも、ピタリと真横に並んで辺りを威圧する。


 後方からは、異色の一団《調布走院》の僧衣姿が淡々と加速。静かなエンジン音なのに、じわじわと車間を詰めてくる不気味さ。

「南無……」と誰かがマイク越しに呟くたび、他の走り屋たちが妙なプレッシャーを感じた。


 一方、東東京から来た《鬼氣蕗》は逆に陽気すぎた。サイレン風のラッパを鳴らし、奇妙な蛇行を交えながら煽るように走る。

「おーい!もっと面白ぇ走り見せてくれよ!」


 彼らの挑発に、ルナゴスペルの美奈子が思わずスロットルを開けた。

「なによ、こっちは横浜最速なのよ!」


 瞬間、各チームの間に火花が散る。

 誰も「レース」とは口にしていない。けれど各々が無意識のうちに順位を意識し、互いの存在感を競い合っていた。


 合同走行は、静かな対抗心に火を灯され、ベイブリッジの夜をさらに熱くしていく。


 ベイブリッジを渡り、大黒PAから湾岸線へ。

 最初は各チーム、整然と二列で並んでいた。アルテミスは統一された特攻服の白と紫が街灯に映え、ルナゴスペルは濃紺の旗をたなびかせる。


 後方には、僧衣姿に近い改造特攻服を着た調布走院チーム、そして異様に派手な鬼の面を模したヘルメットで揃える「鬼氣蕗きけろ」のチームが、低音の爆音を響かせてついてくる。


 最初は笑顔と合図で和やかに並走していた。

「お坊さんって走るときも鐘鳴らすんだ!」

 宗子が笑い混じりに言えば、調布走院の僧侶ライダーが本当に腰に吊るした小さな錫杖を「しゃらん」と鳴らして応える。


 一方、鬼氣蕗は後方から「オラオラ、前空けろや!」と爆竹を投げるパフォーマンスで自己主張。


「やれやれ……荒っぽいけど憎めないわね」

 梓が苦笑する。


 しかしスピードが上がるにつれ、自然と空気が変わっていった。

 アルテミスのロータリーサウンドが高音で伸びやかに響けば、ルナゴスペルは低音のスーパーチャージャーで応じる。


 調布走院は規律正しく隊列を崩さずに加速し、「修行の走り」を見せつける。


 そして鬼氣蕗は蛇のようにラインを左右に振り、挑発的に前へ出ようとする。


「ふふっ、抜かせると思って?」

 エマが冷ややかにスロットルを開ける。


「面白ぇ……じゃあ本気出してやるよ!」

 鬼氣蕗の一人が叫び、爆音がさらに激しくなる。


 いつしか横一列に近い形で、それぞれのチームが“我こそは”と個性を前面に押し出して走り始めていた。


 摩天楼のネオンを背景に、爆音と排気の競演それはレースではなく、誇りを示す「合同演舞」に近い。


 そして終盤。

 各チームが互いの走りを認め合うように徐々に速度を合わせ、最後はベイブリッジの上で自然と一列縦隊となった。


 紫、濃紺、墨色、鬼火色、全ての旗が夜風にたなびき、エンジン音がひとつの大きな和音に溶け合う。


「これぞ、東光連合!」

 誰かが叫ぶ。


 その瞬間、数百メートルにわたる爆音の奔流が首都高を揺らした。

 敵でも味方でもなく、ただ走りを愛する者同士。


 夜空にひとつの物語を描きながら、東光連合の隊列は光の川となって消えていった。


 SNSでは、神奈川、東京、栃木が、盟主アルテミスの下ワンチームになり「東光連合」が誕生したと知らせていた。



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