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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『三島の報酬』

本日夜8時頃アップする話は、ちょっと変わった話になります。

 山間部トンネル群を抜けた瞬間、暗闇に慣れた瞳を切り裂くように、冷たい海風と港の光景が広がった。

 巨大な海上橋梁。左右はただ黒い海原。遮るものは何もない。

 そして橋の上を吹き荒れるのは、人工的に演出された強烈なクロスウィンドだった。


 アルテミスの先頭、雅が冷静に叫ぶ。

「横風はリズムでいなします! ハンドルで抗ってはだめ、車体を“斜めに走らせて”」

 梓が即座に後続へデータをリンク、エマが補助AIで最適角を算出。

 彼女たちのマシンは、風を利用してラインを描くように滑る。

 観客席からはまるでバイクが海の上を舞うように見えた。


 ルナゴスペルは真逆のアプローチ。

 美奈子が声を張り上げる。

「風がどうした! 押し返せぇぇッ!」

 千秋と涼子が車体を思い切り寝かせ、風を真正面から受け止めて突進する。


 玲奈はスロットルを一定に固定し、あえて「直進の軸」を保つことで隊列を乱させない。ルナゴスペルの姿は、荒波を切り裂く戦艦のようだった。


 蓮は冷ややかに笑う。

「横風なんざ昔の首都高で慣れてる」

 翔が叫ぶ。

「俺たちの夜風をナメんなよ!」

 彼らはあえて風に身を任せ、ラインを蛇行させながらトラクションを回復。”受け流す”走りで風圧をエネルギーに変える。


 ヴァルキリーズは秩序を守る。

 フリーダの指示は短い。

「列を固めろ。崩れたら死ぬ」

 五台が横一列に並び、互いの風圧をシールドとして利用。海上に一枚の壁が現れたかのように、直進力を誇示して進んでいく。


 マイクは狂気の選択をした。

「風? 楽しいじゃねえか!」

 彼は風を利用してあえて片輪を浮かせるように走り、次の瞬間、跳ね橋の可動部が不意に作動する。

 巨大な鉄の板が軋みを上げてせり上がる。


「やっぱ来やがったか!」

 マイクは笑いながら全開。跳ね上がる橋の端を利用し、空へと飛んだ。

 背後で観客が悲鳴を上げる中、彼のBuellは炎を吐く流星のように飛翔し、反対側の橋桁に着地する。


 しかし、後続のチームは避けられない。

 跳ね橋の隙間をどう抜けるかアルテミスはAI制御でジャンプの角度を正確に算出、最小限の飛翔で安全にクリア。

 ルナゴスペルは全員で叫び声を上げながら、荒々しい加速で強引に飛び越える。

 不如帰とヴァルキリーズは別レーンに回避し、橋が閉じる一瞬のタイミングを突いてすり抜けた。


 海上橋梁を飛び越えた各チームは、最後の立体交差ジャンクションへ突入する。

 夜が白みはじめ、空と街の光が入り、混じる中ライダーたちの視界は極限に。


 アルテミスはAI解析と精密なライン取りで、危うい分岐を次々と制覇。

 ルナゴスペルは力で押し切り、最後まで爆音と共に追い上げる。

 不如帰は影のように付かず離れず、隙を狙い続ける。

 ヴァルキリーズは隊列を崩さず、美しい編隊走行で食らいつく。

 クロムファングは狂気の単独アタックで、一瞬ごとに観客を沸かせた。


 そして、ゴールゲート目前。

 跳ね橋で飛んだマイクのバイクが横滑りし、火花を散らして減速。

 フリーダが冷静にかわす。その背後、蓮と翔が一気に仕掛けるが、雅と梓が巧みにブロックする。


 最後の直線、風を切る爆音が重なり合う。アルテミスとルナゴスペルが、わずか数メートル差でチェッカーを駆け抜けた。


 チェッカーフラッグが振り下ろされ、夜明けの湾岸に歓声が響き渡った。

 各チームのマシンは、限界まで酷使されたエンジンを震わせながら減速していく。


 無線には荒い息づかいと、安堵の笑い声、そして悔しさを隠せない呻きが混じっていた。

しかし、全員が同じ思いを抱いていた。

生きて帰ってきた、という事実だった。


「……見事だ。お前たちはただの走り屋ではない。

 仲間を信じ、己を信じ、そして死地を抜けた。

 それこそが――我らが未来に必要な力だ」


 淡々とした声に、誰もが黙り込んだ。

 勝敗を越えた充足感と、得体の知れない緊張が入り混じる。


 三島は、わずかに口元をほころばせた。


「試練はこれで終わりだ。……次は、お前たち自身が選ぶ番だ」


 その言葉を最後に、彼は背を向け、光の中へ消えていった。


 ピットエリアに設けられた簡易表彰台に、三島が姿を現す。

 背後の巨大スクリーンには、完走順と記録が映し出されている。


 残されたライダーたちは互いの顔を見合わせ、無言のまま笑い合う。

 そこに敵も味方もなく、ただ同じ時を駆け抜けた者だけの絆があった。


 朝焼けが、湾岸ジャンクションを黄金色に染めていく。

 そして彼女たちの戦いは、新たな舞台へと続いていくのだった。


 試練の第二ステージが終わり、まだ熱気の残る格納庫。

 巨大モニターが沈黙し、場に静けさが訪れた。


 三島が黒服の随伴を従えて、ゆっくりとアルテミスの前に歩み出る。

 その手には漆黒に塗り込められた、重厚なケース。


「……よく走り抜いたな。

 君たちはただの走り屋ではない。

 次元を越えた存在だと証明してみせた」


 低い声とともに、ケースが机上に置かれる。

 カチリ、と留め金が外されると、中には光沢を放つ一枚の認可証が収まっていた。


「これは特別走行認可証。国内の閉鎖区間、港湾、未供用道路……

 条件付きではあるが、君たちに“合法”を与える切符だ」


 彩が小さく息を呑む。

「……これがあれば、合法的に私たちの走りを試せる」

 アルテミスの面々が息を呑む。

 彩は手を伸ばしかけ、震える指を慎重に引っ込めた。


 さらに三島は、別の封筒を取り出し、机に滑らせた。

 朱と黒の二つの印章が押された書類。


「加えて、海外からの提供だ。一つは、アメリカNASA系の素材カーボンナノファイバー複合フレーム。

 もう一つは、イスラエル系防衛企業の次世代HUDバイザー。

 どちらも通常ルートでは絶対に手に入らない。君たちにこそふさわしい」


 梓が目を輝かせる。

「軍事転用レベルのHUDを、ここで……!?」


 雅は表情を崩さず、一礼した。

「……重すぎる報酬です。しかし、必ず我々の未来の走りに活かしてみせましょう」


 三島はわずかに口元を緩めた。

「その未来が光か闇かは君たちが決めることだ」


 黒いケースの認可証と、異国から届いた技術の証文。

 アルテミスは、ついに「自由と未知の力」を同時に手に入れたのだった。


 雅が静かに一礼し、低く答える。

「……感謝いたします。必ず、この力を正しい道に使いましょう」


 三島は目を細め、かすかな笑みを浮かべる。

「正しい道かどうかは君たちが決めることだ」


長い間レースの話にお付き合い有難うございます。 本日夜8時頃アップするのは、ちょっと変わったお話でです。

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