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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『ターニングポイント』

 湘南会は神奈川南部を縄張りとする指定暴力団で、構成員は120名。 

 そのうち半数の六十名を鎌倉に送り込んだ。


 彼らは、若頭鷲尾の指示で闇の中で鎌倉の各所へ散開していた。

 作戦は単純。アルテミスや横浜連合を「個別撃破」で少しずつ削っていくことだ。


「暴走族」相手には、恐怖心を植え付ければ簡単に崩れる。

 傭兵上がりの鷲尾は、各地で数人ずつ叩きのめし、離れるという「ヒット&アウエー」が最も効果が高いと感じていたからである。


 だが、それは完全な誤算だった。


 材木座海岸――


 砂浜に五人のヤクザが潜んでいた。

「ガキども、ここ通りゃ袋だ……」

 しかし次の瞬間、ライトの列が押し寄せる。


 横浜連合二十人が一気に砂浜を取り囲み、竹刀や木刀を構えて襲いかかった。

 銃や刃物を使うわけにもいかず、素手と鈍器で応戦するヤクザたち。だが、二倍以上の数に押し潰され、またしても損害を出す。


 鶴岡八幡宮裏では、別働隊七人が、裏参道でルナゴスペルの特攻服をきた女を狙った。

 だが背後の闇から現れたのは、不如帰の漣が率いる精鋭十数人。


「裏道はこっちのテリトリーだ、極道さんよ」


 木刀が飛び、バイクチェーンが唸る。

 数分の乱闘の末、ヤクザたちは血まみれで崩れ落ちた。

 そして連合のほうも、骨折など数人の重傷者がで出た。


 由比ヶ浜の民宿街十人のヤクザが、横浜連合の宿舎を襲撃しようとした。

 しかし、そこはすでに横浜連合が張っていた包囲網の中心だった。


「ようこそ、狩り場へ」

 エマの挑発に続いて、連合三十人が裏口や路地から雪崩れ込み、狭い通りで一斉に畳かける。ここでも戦果と引き換えに数人の被害がでた。


 湘南会は六十人を送り込みながら、各所で「二倍以上の兵力」に逆包囲され、次々に戦闘不能者が出て行った。


 組の威信を背負って来たはずが、気づけば半数が鎌倉の路地裏に転がり、呻き声をあげるばかり。



 あかねの祖父宅アルテミスの司令部で、雅は報告を受け取る。

「……やはり”数で押す”しか能がない暴力団ね。情報を軽視した時点で勝負は決まっていたわ」


 梓が冷静にタブレットを操作しながら付け加える。

「湘南会、現地指揮系統が壊滅。残るは直々に乗り込んできた幹部クラス……」


 空気が一層張り詰めた。本当の戦いは、ここから始まる。


 湘南会本部。

 六十人が次々に鎌倉で潰されているという報が入った。


「なにィ!? 半数がやられただと!」

「相手は女子供だろうが! まだ勝負は終わっちゃいねぇ!」


 組長代行の一声で、なけなしの兵隊五十人が動員され、数台のワゴンとセダンに分乗して鎌倉へと向かう。


 だが、それこそが雅の狙いだった。


 湘南会の兵隊五十人を乗せたワゴン車列。

 その進路を塞いだのは、横転したトラック。


 近くのガードレールの上には、革ジャンに身を包んだ十数人の暴走族。

 チーム「夜叉連」の頭が、バットを肩に担ぎながら叫ぶ。


「おいオッサン共! ここから先は通行止めだ! 族の道は族が決めるんだよ!」


 続いて、別のカーブでは「紫電会」の連中が煙幕を焚いて車列を混乱させる。

 さらに山道では「漆黒連合」のダンプが土砂を落とし、道を完全に塞いだ。


 湘南会の兵隊たちは慌てて車を降りるが、どこを見ても暴走族の影がちらついている。


「……チッ、族どもが仕掛けやがったか」

「へへっ、車はもう動かねぇな。徒歩で鎌倉まで? 夜道で俺らに狩られながらよ!」


 連合も被害報告をうけ、直接攻撃を、間接攻撃にきりかえた。


 各チームの族長たちは無線で連絡を取り合い、互いの罠の成功を確認し合う。


「よし、狙い通り足止め完了だ!」

「雅のお嬢に報告だ!」


 横転したトラック、ガードレールを塞ぐ土砂、釘バットで叩き割られたタイヤ。

 湘南会の車列は完全に動けなくなっていた。


「くそっ、族のガキどもが……!」

「もう歩くしかねぇだろ、鎌倉までは数キロだ。急げ!」


 五十人は、やむなく夜の山道を進み出す。

 だが、すでにそこは暴走族たちの狩場だった。


 闇の奥から、エンジン音が唸る。

 ドゥルルルルル……ドガァン!

 改造単車のマフラーが山に反響し、まるで獣の遠吠えのように響く。


「な、なんだ!?」

「おい、前だ! ライトが……!」


 松明のようにライトを焚いたバイクが、山道の上から一気に滑り降りてくる。

「烈火隊」の特攻隊長がチェーンを振り回しながら突っ込み、数人を一撃で薙ぎ倒した。


「オラァァ! 夜道で迷子か、オッサンども!!」


 背後からもエンジン音。

「黒蜻蛉会」の面々が山肌を駆け下り、木刀で湘南会の隊列を崩す。


「チッ、罠か……!」

「バラけるな! 固まれ!」


 だが山道は狭く、横一列に並べない。

 暴走族は次々にバイクで突っ込み、すれ違いざまに木刀を叩きつけていく。


「ぐわぁっ!」

「ひっ、ひるむな! 相手はガキだぞ!」


 しかし、その「ガキ」たちこそ修羅場を潜った連合の精鋭。

 夜道での集団戦に慣れた族たちにとって、重たい靴で歩くヤクザは格好の獲物だった。


「ここは横浜連合の庭だ。オッサンども、今夜は鎌倉まで辿り着けねぇぞ!」


 罵声と笑い声、轟くエンジン音。

 湘南会の兵隊たちは一人、また一人と狩られていき、隊列は崩壊していった。


 夜明け前の鎌倉。

 人影のない大通りを、よろめくように歩く男たちがあった。

 服は破れ、顔は血にまみれ、靴底は剥がれ、肩を貸し合いながら必死に足を進めている。


「はぁ……はぁ……くそ、もう走れねぇ……」

「……十人いたはずが……俺らだけかよ」


 最初は五十人。

 だが横浜連合の夜の狩り場に踏み込んだ結果、なんとか鎌倉までたどり着いたのはわずか七人。

 しかも誰もまともに戦える状態ではなかった。


 そこへ、黒塗りのワゴンがゆっくりと路肩に停まる。

 ドアが開き、鋭い眼光をしたスーツ姿の男たちが降りてきた。

 湘南会幹部クラスがついに鎌倉入りした。


「……このザマはなんだ?」

 低い声が響いた。

 組の若頭補佐・鷲尾が、氷のような目で生き残りを見下ろす。


「す、すみません……罠に……連合が……」

 かすれた声で報告する兵隊。


「罠だぁ? あのガキどもにここまでやられたってのか」

 鷲尾は煙草に火を点け、吐き出した煙をわざと兵隊の顔に吹きかけた。


「鎌倉は俺らの庭にするはずだった。なのに、半日も経たず半壊だと? ……笑わせやがる」


 幹部の一人が苛立ちを隠さず吐き捨てる。

 だが、別の幹部は冷静に状況を読む。


「連合は素人じゃねぇ。相当練れてやがる。……後ろに誰がいる?」

「さぁな。だが一つだけ確かだ。鎌倉を抑えるには、今までみたいな小細工じゃ通用しねぇ」


 幹部たちは互いに視線を交わし、決断を迫られる。

 生き残りの兵隊たちはただうなだれ、震える手で煙草を欲しがった。


 雅と梓が張り巡らせた網は、確かに湘南会の力を削いでいた。

 だが、ここから本格的な「幹部戦」が動き出す気配が漂っていた。



「馬鹿な……百二十のうち、八十が潰れたってのか」

「もう半分以下じゃねぇか……」

 ざわめく声を、鷲尾が一喝した。


「黙れッ!」


 鎌倉市街の外れ、古びた料亭の一室。

 黒服姿の幹部と残存兵たちが集まり、座敷の空気は敗戦の臭気に満ちていた。


「……本部は、まともに動ける兵が十もいねぇ」

 報告役の声は震えていた。


 座敷は静まり返る。

 鷲尾は険しい顔で煙草に火をつけ、深く吸い込むと灰皿に叩きつけた。


「確かに戦力は尽きかけてる。だが、ここで尻尾を巻いて逃げりゃ、湘南会は終わりだ。

 極道は一度舐められりゃ、二度と立ち直れねぇ。横浜連合に、いや背後で糸を引いてる奴らに見せてやる」


 しかし別の幹部が恐る恐る口を開いた。

「……鷲尾さん、報復つっても、この頭数じゃ大規模なことは無理です。

 市街で暴れりゃ、警察が一斉に動いて一網打尽でしょう」


「承知の上だ」


 鷲尾は鋭い鷲鼻を撫で、静かに目を光らせた。

「報復は必要だ。だが百を越える殴り込みはもう不可能。

 ……やるなら、幹部自らが先頭に立ち、十人を死兵としてぶつけるしかねぇ」


 その言葉に、場の空気が凍りついた。

 退路はない。

 残された選択肢は、壊滅覚悟の報復戦か、屈辱の撤退か。


 幹部たちの目に宿るのは怒りよりも、むしろ恐怖に近かった。



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