表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/227

お嬢様 『スーパーお嬢様の親父は、やはりスーパー親父だった』

 聖凰華学園の中庭に設けられたアルテミスの特設ブース。

 6台並ぶスーパーシミュレーター・オリュンポス8は常に行列ができ、まさに学園祭の目玉となっていた。


「次のお客様、どうぞ〜!」


 係の生徒が笑顔で案内していたそのとき、場違いな怒鳴り声が響いた。


「おい! 俺たちを先に乗せろ!」


「テメェらお嬢様に並ぶなんて、やってらんねぇんだよ!」


 粗野な声とともに、学園の空気にそぐわない不良3人組が割り込んできた。

 革ジャンに金ネックレス、下卑た笑いを浮かべながら順番を飛ばして前に出る。


 周囲の生徒たちは一斉にざわめき、怯えたように後ずさった。


「きゃっ……」「な、何よあの人たち……」


 アルテミスのメンバーが立ち上がろうとしたその瞬間――


「待ちなさい」


 重厚な声が背後から響いた。


 振り向けば、そこに立っていたのはスーツ姿の3人の男。

 宗子の父・木田技研開発社長。彩の父・内閣官房長官。

 そしてもう一人は、あかねの父・神奈川県警本部長。


 ただ立っているだけで、圧倒的な威厳が漂っていた。


「順番を守れない者に、レーサーの資格はない」

 木田社長が静かに告げる。


「秩序を乱すなら……こちらも秩序の力で相手をするまでだ」

 官房長官が目を細め、凛とした声で続ける。


 そして最後に、本部長が一歩前に出た。


「俺たちが、相手になろう」


「どうせなら、原付じゃなくリッターバイクのレーサーでやらないか?」

 と彩の父。


「お、いいですな。久々だから燃えますわ。おい宗子、設定変更だ。1000ccレーサーに変更しろ」


「ふふふ、白バイ乗ってた時を思い出します」


「ちょっとお父様。そんなバイク乗ったことあるのですか?」

 と彩が心配そうに聞く。


 すると上着から免許証を取り出し、「お前の中型普通とは違うぞ」と見せつける。

 そこには、堂々と大型二輪免許の印が。


 あかねの父も宗子の父も、仕事柄当然のように所持していた。


「リッターバイクだぁ!? そ、そんなもん危険すぎんだろ!」


「おっさんら、本気で言ってんのか!?」


 不良たちは明らかに動揺する。だが、観客は大興奮。


「うそ……社長さんたち、リッターバイクで!?」


「やばい! 超見てみたい!!」


「原付体験が、本当の世界選手権になったみたい!」


 シミュレーション画面の設定が切り替わり、マシンは「KIDA-ZX1000R レーサーモデル」へ。

 その姿が映し出された瞬間、歓声が爆発した。


「お、木田さん、いいバイクに仕上がってるじゃないか」と官房長官。


「うちは木田CA1300Pだから、それにしてもらおうかな?」と県警本部長。


「いや、本部長。あれはツーリング用がベースですから、こっちの方が」

 と木田社長。


 父親3人は慣れた手つきで操作を確認し、姿勢を整える。

 宗子の父がちらりと娘の方を見てウィンクした。

「見ていろ。これが“大人の本気”だ」


 彩の父が官房長官らしい冷静な口調で付け足す。

「権力や肩書きだけが我らの武器ではない。誇りだ」


 そして最後に、本部長が低く宣言した。

「不良よ、警察に捕まる前に……走りで悔い改めろ」


 会場は最高潮。不良3人組は冷や汗を垂らしながら、強がりの声を張り上げた。


「や、やってやろうじゃないか!!」


 スタートシグナルが赤から青に変わる。

 轟音のように響くエンジン音が、VR会場全体を震わせた。


 不良たちは最初こそ勢いで飛び出す。

 だが石畳のカーブ、ブラインドの急坂、S字前の直線――父親たちの走りはまるで別次元だった。


 宗子の父は、熟練のマシンコントロールで最初の急カーブを完璧にトレース。


「切り返しはこうだ!」


 彼のマシンが描く軌跡は美しく、観客から歓声が上がる。


 彩の父は冷静にラインを読み取り、インを突いて不良を追い抜く。


「見通しが甘いな。政治も走りも、一手先が勝敗を決める」


 そして本部長。直線に差し掛かった瞬間、彼のマシンが炸裂するように加速。


「職務の本質は追い詰めることだ。逃がさん!」


 その言葉通り、不良の一人を一気に抜き去り、逃げ場を失わせた。


「う、嘘だろ!?」


「バイクの怪物かよ!?」


 不良3人は焦ってラインを乱し、次々とコースアウト寸前に。

 最後の直線、3人の父親が揃ってゴールを駆け抜けた瞬間――


「ウォォォーーーッ!!」


 会場は総立ちの大歓声で溢れる。


 シミュレーターを降りた父親たちを、娘たちが迎える。


 宗子は胸を張って言った。

「……やっぱりお父様が世界一ですわ」


 彩は静かに笑いながら。

「まさか外交交渉よりも、走りで魅せてしまうとは……お父様らしいです」


 あかねは少し目を潤ませて。

「お父さん……やっぱり、最高の警察官だね」


 観客席は総立ち。


「やばい!! 社長さん強すぎでしょ!」


「官房長官カッコよすぎる!」


「警察本部長って現役ライダーですわ!」


 SNSには〈#聖凰華学園祭 #親父たち最強 #リッターバイク無双〉のタグが並び、即トレンド入り。


 レースが終わり、よろよろと降りた不良たちは、観客の熱狂の中で立ち尽くしていた。


「くっ……ありえねぇ……」


「オッサンたちに、完全にやられた……」


 観客の失笑と拍手が入り混じる中、彼らは観念したように父親たちの前に進み出た。


「すみませんでした……俺たち、調子に乗ってました」


「こんなに強い人たちがいるなんて、知らなかった」


 宗子の父は、腕を組んで厳しい声で言った。

「走りは命を賭けるものだ。遊び半分で踏み込むものじゃない」


 彩の父は冷静に続ける。

「君たちの熱意は悪くない。ただ、向ける方向を間違えている」


 そして、あかねの父・本部長が一歩前に出て、短く告げた。

「警察に連れて行くこともできるが……更生するチャンスをやろう。正しい場所で、本気で走れ」


 不良たちは驚いたように顔を上げ、深々と頭を下げた。


「はいっ……本当に、ありがとうございました!」


 その姿を見届けた3人の父親は、ふっと肩の力を抜き、互いに目を合わせて笑った。


「しかし官房長官もやりますな」木田社長が言う。


「いやぁ、毎日くだらない駆け引きばかりでね。たまにはこうしてエンジン音を聞かないと、内閣が潰れますよ」


「今度、3人でツーリングでもどうです? 温泉巡りなんてどうでしょう。SPはバイクに乗れるやつをつけますから」


「いいですね。1500ccのツアラー、うちで3台用意しましょう」


「決まりですな。次の休みが楽しみだ」


 3人は旧知の仲間のように笑い合いながら、上着を肩にかけ、その場を後にした。


 その背中を見送りながら、美奈子がぽつりと呟く。

「かっこいい……あの3人で族作ったら最強じゃん」


「やめて。中年暴走族なんて、考えただけでも恐ろしいですわ」

 彩が顔をしかめる。


「スーパーお嬢様の親父は、やっぱりスーパー親父だったな」

 千秋の一言に、全員が笑った。


 夜の聖凰華学園は、ライトアップされた校舎が幻想的に輝き、噴水の周囲には無数のランタンが浮かんでいた。

 大講堂前の広場には特設ステージが組まれ、後夜祭が華やかに幕を開ける。


 吹奏楽部の演奏に続き、ダンス部の華麗なパフォーマンス。屋台では最後の販売が行われ、生徒たちの笑い声が響き渡る。


「お父様たちも会場に残っていらっしゃるわ」

 彩が誇らしげに振り返ると、観客席に先ほどの“英雄三人”の姿があり、拍手で迎えられていた。


 そしてステージにて、学園長が登壇。


「本日の学園祭は、生徒諸君と、支えてくださったご家族・来賓の皆様のおかげで大成功を収めました!」


 その言葉とともに、夜空に大輪の花火が打ち上がる。

 生徒たちは手を取り合い、笑顔でその光景を見上げた。


 アルテミスの面々も、静かに夜空を見つめながら互いの存在を確かめ合う。


「私たち、もっと強くなれるわね」


「ええ、きっと」


 その光は、彼女たちの未来を照らすように、夜空に広がっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ