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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『聖都ローマに刻まれた走り』

夜のローマ

月明かりと街灯が交錯する永遠の都ローマ。昼間は観光客で賑わう街も、深夜には静かな闇に包まれる。


だがその闇を切り裂くように、石畳の路地に低く響くエンジン音が広がり、命懸けのレースの幕開けを告げていた。


スタート地点はコロッセオ。二千年の歴史を誇る円形闘技場を背に、ライトに照らされた直線路が闇を貫く。


昼間の喧騒とは違い、深夜のコロッセオは巨大な影の塊。その威容を見上げる場所が、戦いの始まりだった。


コースは旧市街へと入り込む。細い石畳の道は急カーブを描き、両脇にはバロック建築のファサードが迫る。窓からは住民が驚いた顔を覗かせ、タイヤは凹凸に跳ね、スリップの危険が常に付きまとう。


やがて視界が開け、フォロ・ロマーノの遺跡を横切る直線。壊れかけた円柱の間を抜けると、ライトアップされた遺跡群が幻のように流れていく。


ナヴォーナ広場では巨大な噴水を中心に馬蹄形の広場を一周し、再び狭い路地へ。さらにパンテオンの丸屋根を駆け抜け、急カーブが待ち受ける。


そしてクライマックスはサンタンジェロ城からバチカンへ向かう大通り。テヴェレ川を渡ると、サン・ピエトロ大聖堂のドームが夜空に浮かび上がり、ゴールはその前の広場。そこには白布をかけられた金塊が眩しく積み上げられていた。


深夜のコロッセオ前。観光客を装った仲間や闇市の連中が集まり、即席の観客を作り出す。バイクのアイドリング音に混じり、挑発的な笑い声が響いた。


「1000万ユーロの金塊を賭けるなら、こっちも本気だ」

リーダー格の大男ロレンツォが宣言する。黒革ジャンに身を包み、改造ドゥカティを操る巨体。その背後には二人の手下。


「観光客のお嬢ちゃんなんざ、すぐ壁にキスさせてやる」

観衆から野次が飛ぶ。


一方、アルテミスの雅・梓・宗子が前に進む。人質がいるため警察の介入は禁じられていた。広場中央に並ぶ六台のマシン。ロレンツォがスロットルを煽り、爆音を響かせる。


「夜のローマは甘くねぇぞ。骨を拾う準備はできてるか?」


梓は冷静にインカムを操作し、解析データを呼び出す。

「石畳のグリップは予想より低い。突っ込めば転ぶのは相手よ」


宗子はハンドルを握りしめ、低く呟く。 「世界一の技術で組んだマシン、見せてあげるわ」


雅はヘルメットを被り、ロレンツォを見据える。 「勝つ。それだけよ」


赤い信号弾が夜空に打ち上がり、六台のエンジンが咆哮する。火花を散らしながら石畳を蹴り、クラシック・ナイトレースが始まった。


ロレンツォが力任せにトップへ躍り出る。宗子の進路を塞ぐ手下を、宗子は冷静にインから抜き去る。梓が無線で告げる。 「次は急カーブ。奴らは減速が遅れる」 その通り、手下の一人が制御を誤り転倒。


コロッセオ横の大通りでは、雅とロレンツォがサイドを擦るほど接近。梓が解析で最短ルートを指示する。 「雅、右路地へ。突き放すわ!」 雅は即座に反応し、狭い石造りの路地へ飛び込む。


サンタンジェロ城付近。宗子がトルクを引き出し、直線で手下を突き放す。残るは雅とロレンツォ。最後の一騎打ち。ロレンツォが体当たりを仕掛けるが、雅はブレーキを入れ後輪で弾き返す。雅が先頭で聖堂前にゴール。梓と宗子も続き、アルテミスの完全勝利。


観衆が歓声を上げる中、ロレンツォは悔しげにヘルメットを投げつける。だがなおも食い下がる。


「石畳で滑ったのは運だ!金塊は俺たちのもんだ!」


「審判はいねぇ、ルールなんてねぇ!」


「日本のお嬢様が裏社会をなめるな!」


広場に緊張が走る。梓が冷たく呟く。

「負け犬の遠吠えね。データでも映像でも、勝ったのは私たちよ」


ロレンツォの手下がナイフをちらつかせる。ざわめきが広がる。雅が一歩前に出て告げる。 「誇りも掟も持たぬ者に、バイクを語る資格はない」



その瞬間、重厚な声が響いた。革ジャン姿のアントニオ師匠が堂々と歩み出る。観衆がどよめく。

「敗者が刃物を抜くなど、バイク乗りの恥だ。ここは聖なる都ローマ。卑しい連中は消えろ」 師匠の眼差しにロレンツォは顔色を失い、退散する。


観衆が落ち着いた頃、アルテミスはあかねを囲む。彼女は首に絆創膏を貼りながらも無事に立っていた。

「ごめん、みんな……でも助かったの」


雅が前に進み、冷ややかに告げる。

「このレースは真の目的じゃなかった。本命はあかねの奪還。欧州経済の守護者にして、私たち三条家と古くからの繋がりがあるロスチャイルド家に依頼し、彼らの部隊が救出したの」


一同は息を呑む。宗子が呟く。

「レースは囮だったんだ……」


雅は頷く。

「ええ。敵の目を完全に引きつけるため。それが最も確実だった」


あかねは涙を拭い、微笑みを取り戻す。

「……みんなが走ってくれたから、私は帰って来れたんだね」


梓は肩をすくめ、苦笑を浮かべる。 「相変わらず雅は用意周到で恐ろしい。でも、正しいわ」


宗子も深く息を吐き、マシンから降りながら呟いた。

「囮にされたとはいえ……あの走りは本物だった。誇れる勝利だ」


夜空にはまだ赤い信号弾の残光が漂い、サン・ピエトロの夜空にはまだ赤い信号弾の残光が漂い、サン・ピエトロ大聖堂のドームが静かに輝いていた。永遠の都ローマは、再び静寂を取り戻しつつある。だがアルテミスの心には、確かな絆と新たな決意が刻まれていた。


あかねは仲間たちを見回し、涙を浮かべながら言葉を紡ぐ。

「……みんなが走ってくれたから、私は帰って来れたんだね。本当にありがとう」


梓は肩をすくめ、冷静な笑みを浮かべる。

「相変わらず雅は用意周到で恐ろしいわ。でも、正しい。あなたを救うためなら、どんな危険も意味がある」


宗子は深く息を吐き、マシンのハンドルから手を離す。

「囮にされたとはいえ……あの走りは本物だった。誇れる勝利だ。私たちの技術も、誇りも、裏社会の連中には負けない」


雅は静かに仲間を見渡し、冷徹ながらも誇らしげな声で告げる。

「勝利は結果にすぎない。本当に守るべきものは、仲間の命と誇り。それを忘れないで」


その言葉に、梓も宗子も深く頷いた。あかねは涙を拭い、微笑みを取り戻す。観衆の歓声はまだ広場に響いていたが、アルテミスの心は次なる戦いへと向かっていた。


広場の片隅では、退散したロレンツォの残党がまだ不満げにざわめいていた。しかしアントニオ師匠の存在が圧倒的な威圧となり、誰一人として再び刃を抜く者はいなかった。師匠はアルテミスの面々に近づき、低い声で語りかける。

「よくやった。お前たちの走りは、ただの勝負ではない。誇りを示したのだ」


雅はわずかに頭を下げる。

「師匠……私たちはまだ未熟です。けれど、仲間を守るためなら、どんな走りも意味を持ちます」


アントニオは満足げに頷き、観衆に向かって手を挙げた。

「この夜を忘れるな。真のバイク乗りは、誇りと仲間を守る者だ」


その言葉に広場は再び歓声に包まれ、アルテミスの名はローマの夜に刻まれた。

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