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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『我道、始動』

 次のページを開いた瞬間、

 雅は思わず声を上げていた。


「……あぁ!」


 それは驚嘆とも、確信ともつかない短い声だった。

 個室の空気が、一瞬で張りつめる。


「これですわ……今朝、うちの外壁に描かれていた絵や文字。

 まさに、この感じでしたの」


 雅の指先が、雑誌の写真をなぞる。


「エマさん。この子たち、ファッションモデルじゃありません」


 沈黙が落ちた。


「会長……それじゃあ、彼女たちは……」


 エマが言いかけた、そのときだった。


「わかりましたわ」


 梓が、静かに微笑んで口を開いた。


「――女性の、暴走族です」


 その言葉は、個室に小さな衝撃を走らせた。


 梓は淡々と端末を操作する。


「ブレンドに接続しました。うちで開発している情報解析システムですの。

 少々、セキュリティが強めですが……」


 次の瞬間、全員のタブレットに動画が表示された。


 夜。

 轟音。

 無数のライトを従えて、少女たちがバイクで走る。


「……すごい音ですわね」


 宗子が冷静に言う。

「マフラー、わざとでしょう。性能より“意思”を優先しています」


「秩序の真逆ですわ」

 琴音が眉をひそめる。「風紀的には、完全にアウト……」


「ねぇ梓さん」

 彩が首を傾げる。「この人、“喧嘩上等”って言ってるけど……?」


「直訳すると、“いつでも来なさい。負けないから”ですわ」


 その瞬間、

 低く、楽しげな声が落ちた。


「ほう……」


 あかねだった。


「それは、興味深いですね。成敗に行きましょうか」


「やめて、あかねちゃん!」

 梓が慌てて制止する。


 冗談に聞こえない。

 それが彼女の怖さだった。


 時計を見ると、十二時半。昼休みは、まだ残っている。


「……皆さん」

 雅が静かに言った。「少し、休憩しましょう」


 玉露と生八つ橋が運ばれ、張り詰めていた空気が、わずかにほどける。


 けれど、テーブルの中央には、開かれたままの雑誌。

 刺激的な写真に、誰も視線を逸らせなかった。


 雅は湯呑みを手にしながら、思った。


 ――私たちは、王道を歩ける。

 何もしなくても、未来は用意されている。


 でも、彼女たちは違う。


 あえて、危険な道を選び、

 笑われ、嫌われ、

 それでも走っている。


「……ねぇ」

 雅が、顔を上げる。


「今の生活、退屈だと思ったことはありませんか?」


 誰も、すぐには答えられなかった。


「私たちで――

 “レディース”を作りませんこと?」


 沈黙。

 そして、空気が変わった。


「え……それって」

 彩が戸惑う。「この雑誌みたいな……?」


「校則違反では……」

 琴音が言いかける。


 雅は、微笑んだ。


「皆さん、忘れていらっしゃるわ。S組は――校則の適用外」


 誰も、否定できない。


「でも、刹那的な覇道は目指しません」

 雅の声は、静かだが、芯があった。


「気高く、エレガントで、弱き者を守り、友情と連帯を大切にする。


 少し派手で、少し我が儘な――

 私たちの“我道”を走るレディースです」


「……それ、いい」


 誰かの呟きが、火種になった。


「楽しそう!」

「やってみたい……」

「私たちだからこそ、できる」


 雅は知っていた。

 これは“暴走”ではない。


 抑えていた衝動が、ようやく息をしただけだ。


「私は、持っている力を惜しみません」


 雅は、まっすぐ仲間を見る。


「皆さんも、今まで自重してきた力を、解放してください」


 そのとき、仲間たちの目が変わった。


 雑誌の少女たちと、同じ光だった。


 インターフォンが鳴る。


「お嬢様方、午後一時三十分でございます」


「井上さん」

 雅は迷わず言った。

「午後の授業、八人全員キャンセルしてください。

 それと、三時にアフタヌーンティーを」


「かしこまりました」


 当然のように、回線が切れる。


 雅は、最後に言った。


「さぁ……

 私たちの物語を、始めましょう」


 それは宣言だった。


 もう、戻れない。

 でも――


 誰一人、後ろを見ていなかった。



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― 新着の感想 ―
きゅ、給仕さんは・・・、ツッコミはしてくださらないのですか・・・?
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