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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 「選択」

  挿絵(By みてみん)


ハアハアハア・・・息苦しい。ヘルメットの中だけは、外界の喧騒は遮られ、

自分の音だけが、大きく聞こえる。


いっそのこと、今スグにもヘルメットを脱ぎ捨て、外の空気を思いっきり吸い込みたい。


しかし、自分はレーサーだ。そして今は決勝レースの真っただ中、出来ないことは初めから分かってる。


そうしてると次のコーナーに差し掛かる。


美奈子は、考える間もなく体が、コーナーのイン側に傾く。そしてコーナーリング中の外側のへの遠心力を2つのタイヤに預ける。速度・ブレーキ・アクセルワーク全ては、頭が考える前に体が反応する。


(なんだが、自分の体が乗っ取られたみたいだ)

思わず美奈子は、ヘルメットの中で苦笑いをする。


《美奈子・蓮二人の心拍数・呼吸・反応速度全て異常なし。マシンも異常な

し》

ピットでは、機械的にアテナが悠翔に報告する。


「ラップタイムはどうだ?」


《一周の毎のラップタイム、振れ幅0.5秒以内に収まっています》


「五位以下が仕掛けるとすれば?」


《残り13周ですから、ストレートではありえません。こちらのマシンが馬力も伸びも上です》

《コーナーでミスが出ない限り、ねじ込むスペースもありません》


「わかった。このペースでいかせよう」


一方、白木が監督を務めるピットでは、違った話で盛り上がっていた。


「なんか、全てがちがうな。前は、部品一つでも手にいれずらくて、よく似た部品で代用してたが、ここは、純正部品がすぐに手に入る」


「タイヤもだな。ここじゃ完全な消耗品だしな。だましだましで走って時、本当につらかったな。ここじゃ、アテナが摩耗度を監視してて、すぐに交換できる」


「あの、後ろにある予備エンジン、全部アテナが組み上げたって言ってたが、本当なの?」


《アルテミスRCのエンジンは、私が、クリーンルームで組み上げてます》


「なあ、監督。あのマシーンに乗ったことあるのですよね?

 どんな感じだった?」


「ああ、俺が現役だった時のマシーンから4世代は進んでるな。

 まあ、テストドライバーの目線でみても、化け物だ」


「でも、同じマシーンは他チームも使ってるよね?

 なんで差がでるの?」


「それは・・・」

そう言って白木はアテナに目を向ける。


《私が作ったのが、オリジナルだからです。

 私のは、熟練工αモデルと言って他に出してません》


「なんかアテナ、ドヤってない?」


「俺もそう感じたぞ」


決勝レース中なのにピット内には笑いが包まれた。


コントロールタワーでは、重い空気が漂っていた。


「本気ですか?」

雅の怒気を含んだ声が上がる。


「ああ、それがベストだ。鈴鹿耐久は、うちから2チーム出すが、美奈子は外す。そのかわり外部から1名を入れる」

三島は、冷静に、冷酷に答える。


「納得いく説明をしていただけますか?」


「お前が、俺を選んだ理由はなんだ?」


「それは、うちのチームが世界に出るためです」


「お前は、実力よりも”情”を表に出してチームが勝てると思ってるのか?」


「それは・・・」


「美奈子は、スプリンターだ。耐久向きじゃない。いいか、耐久は、純粋に体力が必須だ。これは、勝利条件だ。男と女の体質的な問題だ」


「・・・・・・」


「美奈子も、それがわかっているから、今必死に克服しようとしてるのは、理解できる。鈴鹿が、従来通り秋だったら間に合っていたかもしれんが、今回は5月だ。間に合わない」


「3人チームで臨めば?」


「雅、諦めろ。2人チームと3人チームじゃスピード勝負で2人チームが上だ。勝てる可能性を少しでも上げるのが、俺の優先事項だ」


「わかりました。せめて美奈子さんには、私の方から伝えます」


「ああ、俺は、もう一人のドライバーの選別に入る」


いつもの皮肉も言わずに、三島はコントロールタワーから出て行った。


傷心した、雅にそっと横からコーヒーを差し出すものがいた。


「梓・・・私・・・美奈子さんに何て言えばいいの・・・」

そこには、いつもの気丈な顔が、一人の思い悩む少女の顔をした雅の姿があった。


梓にだけに見せる――極稀な雅の葛藤する少女の顔だった。


梓は知っていた。女帝として君臨する雅の絶対的な態度の裏には、その数倍の優しさを内在してる親友の素顔を。


いつもより小さく見える肩をそっと包み込み、梓は言った。

「こんな時位、私を頼りなさいよ。何もかも貴方一人で抱えこまないで。

 まだ時間はあるわ。考えましょう」


二人の間には、静かにコーヒーの立ち込める香りだけが漂っていた。


レースは、結果的に、1位~4位までアルテミスRCがが占める。

これは、2戦連続での優勝台独占と言う快挙に終わる。


その後2時間半のインターバルを置いて、ダブルレースの2戦目が行われる予定だ。


華やか表彰の裏で、ピットでは、次のレースに向けた準備に余念がない。

ただし、多少の違和感がでる。山口、蓮。正岡に比べ、美奈子の疲労が少し大きい。


「美奈子、大丈夫か?」

悠翔が尋ねる。


「ああ、地元開催なのでちょっとばかり気が入ってしまった。

 すこし休めば、回復するレベルだよ」


「そうか、じゃあシャワーを浴びて回復カプセルを使用しろ」


「ああ、この位で疲れてたら鈴鹿耐久には、出れないからな」

笑いながら美奈子は、シャワーへ向かった。


「蓮、美奈子は、大丈夫か?」


「ああ、心配ないと思うぞ。ただな・・・」


「ただ?」


「後半だが、少しキレが落ちてた気がするが・・・まあ、気にする程のミスは、なかったしな」


それを聞くと悠翔は、アテナに向かった。


「アテナ、後半の美奈子の平均値ラインと前半の平均値ラインの比較を出してくれ」


《提示します。青が前半のライン、赤が後半のラインです》


「やはり・・・」

前半の平均値ラインより、後半の平均値ラインが、わずかに膨らんでいた。

(後半、マシーンの抑え込みが足りない)


「アテナこのラインから推定される、美奈子のパフォーマンス持続可能時間は?」


《1時間30分と推定されます》


「では、鈴鹿耐久で、3ドライバーで、8スティントの最適配分にした場合の美奈子のパフォーマンス維持は?」


《その仮定は、成り立ちません。

 なぜなら2ドライバーに比べて3ドライバーは、

 不利になるから三島が採用しません》


「では、蓮と組んで2ドライバーで、8スティントの最適配分なら?」


《美奈子が、4スティント蓮が4スティントですが、実際では、美奈子の3スティント目4スティントに大幅なパフォーマンス低下になります》


「では計算のやりなおしで、美奈子3スティント、蓮5スティントでは?」


《蓮のパフォーマンスが落ちます》


「しかし、うちには4人のドライバーしかいないんだ。2ドライバーで2チーム出すには、美奈子が必要だ」


《それには、お答えできません》


「まさか1チームだけ出すのか?」


《お答えできません》


「なぜだ?アテナ」


《私には、人事権はありません。AIが持ってはいけないもの

 ――それこそが人事権です》


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