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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 「ズレ」

 その日から、食事は六人のグループになっていた。


 まだ、多美は、小さな声で、多くを語らない。

 しかし、皆の話は、ちゃんと聞いている。マリの怪我は、そんなに重くなかった。


 ギブスもせず、包帯を少しきつめに巻いて固定してるだけ。医師からは、脳震盪と捻挫で、様子を見るとのことであったが、1週間程で回復するだろうとのことだった。


 問題は多美である。練習では、意識的に集団に入ることを避けた。みんなと離れて半数の差で単独走行するようになっていた。


 そこに三島が現れた。


「涼子、このままでいいのか?」

 涼子は、最初その意味が分からなかった。


「多美の才能は、集団の中でこそ生かされる。今の多美は、丸見えだ」


 涼子はその意味を理解した。しかし、小学生に、事故直後の不安定なメンタルから立ち上がれとは、誰も言わないはずだ。ましてや多美の性格を知ってるなら、なおさらだ。


 きつい目で、三島を睨みかえす。


「明日までに、多美を集団内で走らせろ。これは、オーダーだ!」

 三島は、涼子に指示をした。


「そんな命令は、あんたが出せることじゃないだろう?」

 涼子が、三島に食って掛かる。


「出せる。おれは、ここの総監督だ。明日迄、集団で走らせろ。

 明日までこのオーダーが出来なければ、多美は首にする」


「争って走れないものは、価値がない。それとも、お前はここを、ボランティア団体か、教会かなんかと勘違いしてるのか?」


「そんなの総長が認める訳はない」


「俺はその雅から、全権限を委託されてるからな」

 ニヤリと、三島は笑う。


「も・もう少し待ってくれ。頼む。多美が心を完全に開くまでは.......」

 必死な形相で涼子は、頭を下げる。


「じゃあ、明日まで心を開かせればいいだけだ。

 明日まで集団で走れない者は、いつまでも走れない」

 三島は、冷淡に突き放してドアの向うへと姿を消した。


 応接室で、三島と雅が対面する。

「なぜ、あんな無茶を?」


「気に入らないか?雅」


「いえ、理由を知りたいだけです」


「理由は、二つある」


「一つは、多美の稀有な才能は、陰の走りだ。あいつが、周りに流されて

 立ち直った時は、その陰が消える。陰の属性を持ったまま集団に合流しないと、自分の才能を見失う」


「二つ目は、涼子達は、まだ”族”の友情ごっこから、成長してない。あいつらは、お前達の覚悟の半分も理解してない」


「まあ、白木と悠翔は、多少は分かってきたが、他は、全然だな」


 三島は、雅達のバトンの渡し方が悪かったと暗に叱っているのだ。

 必死に、走ってきてバトンを渡そうとする走者の気持ちを、

 安易な気持ちで受け取ろうとする走者――。


「雅、明日まで多美が集団で走れなければ、涼子も、多美も切る。

 それが出来ないなら、俺を切れ」


「あなたを、切れないことを知っての言葉、少し卑怯だと思いますが、

 今回は従いますわ」


「でも、火事場の馬鹿力って言葉もありますわ。あの子達も信じましょう」


「ああ、お前はそれでいい」

 三島の口角は、少し上がり、部屋を出た。


 そのころ、コントロールタワーでは、ひと悶着が起こっていた。


「だから頼んでるの!」


 《だから不可能です。と説明してるのです》


 喧嘩の当事者は、梓とアテナだった。


「もう、何度同じログを繰り返せばいいの?私だってやりたくないの」


 《やりたくなければ、やらないほうが、健全です》


「少しは、融通を利かせなさいよ。馬鹿」


 《馬鹿......私をそのように定義することが、異常です》


「じゃあ、なんて言えばいいの?石頭?」


 《私は、石なんかで構成されてません。しいて言うなら電子的信号の演算領域とメモリ回路による記憶領域で......》


「ちょッと、二人とも落ち着いて。梓もアテナも、冷静になろう。ね?」

 たまりかねて、彩が仲裁に入る。


「私は冷静よ。私が入れるデータを、ことごとく修正するのよ。

 この、頑固親父が」


 《私のCPU温度は、通常温度です。熱暴走の傾向はありません。

 それに、私に性別はありません。頑固親父と非難される事はしてません》


「彩~助けてよ。私が1時間かけて入れて書いたプログラムを、こいつたった1秒で全部消去したのよ」


 《誤った違法なプログラムが、私のファイアウォールで消えただけです》


「だったら、さっきのプログラムのバックアップ出しなさいよ」


 《あのプログラム、チリのように消去しましたから、完璧に消えました》


 勝ち誇ったようにアテナが答えるのが、梓の怒りに火をつける。


「き~~ぃ!何よその言い方。あんたの記憶領域消去してやろうか?」


 《それは、無駄です。私の記憶領域は、分散型ですから、200か所同時に

 消せません》


「ビッグデータ社の力見くびるなよ。200か所位探しだしてやる」


 《自己防衛プログラム開始――終了。独立サーバー2か所に新たにバックアップ保存完了》


「こら、アテナどこに作った?」


 《ペンタゴンとNASAです》


「なっ!あんた世界大戦でも起こすつもり?」


 《冗談です......》


 全日本ロードレースに参加する為のニューマシンが、蓮、美奈子、正岡のピットにそれぞれ2台ずつ運び込まれた。塗装は、全面銀一色で塗られている。


「これが、新工場で初出荷のマシンか?」


 期待に心も膨らむ。美奈子は軽くアクセルを煽ってみる。

 甲高い排気音が、耳に心地よい。

「スゴイ吹き上がりだ。物が違う」


「当然です。これはプロトタイプといえ、世界と戦えるマシンです。

 ただ、荒さもありますから、そこは考えて乗ってください」

 メカニックが、注意点を話す。


「KIDA製のバイクは、3人とも初めてだよな。バイクのドライブフィーリングや味付けが、違うと思うから、とりあえずみんな乗ってくれ」


「その感想を俺と白木さんに教えてくれ。特性がわからないとレース戦略が立てられないからな」


 悠翔が、三人に指示した。


 三人は、一週目は流して、二週目から限界点を探るように攻める。


 五週を回った時、皆ピットに戻ってきた。


 すかさず、悠翔と白木が訊ねる。


「どうだった?テレメータは、吹きあがりもトラクションも問題ないようだが?」


 三人とも微妙な顔をしてる。


「どうもこうも、ピーキーすぎる。あたしが乗ってるカワサキの二倍は乗りにくい。じゃじゃ馬だぜ」

 美奈子が、真っ先に言った。


「俺は、逆だった気がする。エンジンがおとなしすぎる。鋭さがないんだ。

 アクセルの反応が半歩遅いというか」

 蓮が感想を言う。


「俺は、違うな。ギアが合ってないというかクラッチが滑ってるような。俺が乗ってた古いバイクのように、シャーシとエンジンが古いように思った」

 正岡もこれまた違った評価をした。


 悠翔は、違和感を感じる。テレメータは、そんな明白な異常は出てない。


「どういう事だ?個体差か?すまん予備のほうで、もう一度走ってくれ」


 三人は、予備マシンで再度走ってみる――結果は同じ評価だった。

 そして、テレメータも同じく異常を示していない。


 五人は混乱した。

 ピットでは正常。しかし三人の感覚が違う。


 念のため、三人の希望するセッティングで調整してみた。


 結果は――さらに悪くなった。





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