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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『投票箱の外側で』

 瑠衣の生徒会長への立候補届は、

 少なからず学園に大きな波紋を広げた。


 一年、二年のSクラスでは、

 身分不相応な無謀な行動だと非難一色になる。


 一方、一般クラスでは、

 半数が支持の様相を見せ、

 残る半数は態度を決めかねている。


 そして、山は動いた。


 それまで立候補の動きを見せなかった、

 二年Sクラスの山内遥と、一年Sクラスの毛利由紀恵が、

 相次いで会長選への立候補を表明する。


 遥は立候補届を生徒会室に提出しに来て、

 雅に是非を問うた。


「会長。

 一年の藤崎さんは、一般クラスです。

 立候補をお認めになるのですか?

 生徒会長は、Sクラスから選出されるのが通例です」


「ええ。確かに通例では、そうね。

 今回は異例だった。

 ……ただ、それだけでしょう?」


 冷たい眼差しで見つめ、

 雅は言い放った。


 次に現れたのは、由紀恵だった。


「会長は、藤崎さんの味方ですか?

 なぜ我が学園の伝統を蔑ろにして、

 ただの一般クラス生徒の立候補を受け入れたのですか?

 Sクラスと一般クラスとでは、立場も、責任感も違います」


「伝統ですって?」


 隣で聞いていた梓が、

 眼鏡越しに由紀恵を睨む。


「一年生のあなたより、

 三年生の私達のほうが、

 伝統を知らないとでも?」


「それに“責任感”と言ったわね」


 皮肉を込めて、雅が続ける。


「あなたの言う責任感って、

 負けない闘いをすることかしら?」


 由紀恵はそれ以上、言葉を返せず、

 生徒会室を後にした。


「……どちらも、駄目ね」


 雅は小さく息を吐く。


「あの子達を見ていると、覚悟も責任感もない。

 あるのは、見栄だけ」


「藤崎さんが会長になっても、足を引っ張るでしょうね」


「ええ……まだ結果は分かりませんが」


 梓が応じる。


「仮にどちらかが会長になっても、

 お互い、足を引っ張り合うだけです。

 同じことですよ、会長」


「うちのクラスは、自由投票で問題ないわね?」


「はい。ただ――

 瑠衣の後ろに会長がいることは、薄々、分かっているみたいで。

 瑠衣に票が流れそうです」


「問題は……」


 梓は一拍置いて、続けた。


「瑠衣のクラス以外の、

 一年、二年の一般クラスに、

 二人の取り巻きが圧をかけているようです」


「……それ、事実なの?」


「はい。

 エマが、一般クラスの生徒の会話を聞いています」


 雅の表情が、わずかに変わった。


 Sクラスの影響力は大きい。

 その圧を、真正面から受け止められる一般生徒が、

 どれほどいるだろうか。


「ということは……

 六クラスが、圧を受けているのね?」


「はい。

 さすがに三年生のクラスまでは……」


 梓は言葉を選びながら、


「会長の人柄か、

 うちのSクラスと一般クラスは、

 比較的、壁が低いですから」


「……うふ」


 雅は、いたずらっぽく笑った。


「いいこと、思いついたわ」


 そう言って、

 梓の耳元に、そっと言葉を落とした。


 授業の合間の休憩時間、早速二人の取り巻きが動く。

 同学年の一般クラスに訪れて、当然のことのように言い放つ。


「皆さん分かってらっしゃるわね?

 この度、Sクラスの山内様が、会長選に立候補されたことを。

 当然、皆さんは一年生なんかに投票はしませんよね?」


「一年生を選ぼうと二年生を選ぼうと自由じゃないの?

 それが選挙じゃないのか?」


「生意気な、あなた山内様を敵にまわす・・・」

 そこで取り巻きの声が止まる。


「じゃあ、山内を連れてきなさい!」

 あかねは言い放った。


「せ・先輩.......なぜここに?」


「二年生の授業の復習するために授業に混ぜてもらってるが、問題あるのか?」


 一年生のクラスでも同じことが起こっていた。


「みなさん、分かってますよね?毛利様のお父様が、国会議員であらせられることを」


「ええ、知ってますわ。うちの父と同じ政党ですものね。それが何か?」

 彩が立ち上がる。


「あ、いえ何も.......」


「そうよね~ 議員の娘が、選挙の自由を奪うことなんかしませんね?

 うちの父なんかいつも、”選挙は公正であるべきだ”って言ってますから」


 どこも同じであった。


「これで、選挙は公正に行われるわね。後は生徒が変化をとるか、慣習をとるか。どちらにしても生徒を信じましょう。

 それが生徒会ですから」


「ええ、でも瑠衣はちゃっと立ち合い演説会できるかしら?

 一応原稿は作ってますが」


「やめなさい――梓。 アテナを使うことも禁止。

 あの子は、あの子の言葉で人を信じさせなければいけないわ。

 私達があの子達に残せるのは、言葉でも力でもない」

 雅は、真っすぐな目をして言った。



「ねえ、瑠衣立ち合い演説の原稿できた?」

 心配そうに沙百合は尋ねる。


「全然。私国語苦手だし、そもそも文才なんかないの」


「アテナに頼む?」


「駄目。それだけは......なんか総長を裏切るみたいな気がする」


「うん。やっぱりアンタは、うちらのリーダーだわ。でもそれで勝てる?」


「勝つ?それは.......自信ないわ。でも戦いたい。

 だって、あきらめたらそこで全てが終わる――終わらせたくないの」


 瑠衣は、正直逃げ出したかった。


「ねえ聞いた?山内先輩は、有名な文筆家に原稿を依頼したし、

 毛利さんは、お父様の政策秘書がついてるって、

 ねえやはりアテナに,,,,,,,,,」


「駄目、何度も言うように........

 アテナは、物じゃない――私達の友達なの。

 それに、アテナと私達の関係は皆知ってる。

 だから、なおさらアテナを晒しものにしたくないの」


「じゃあどうするの?原稿なしに話すの?」


 そんなやり取りが続き立ち合い演説会の日を迎えた。


「瑠衣、話すこと決まった?」


「ううん........昨夜考えようとしたのだけど........」


「だけど?」


「なんか、どうでもよくなっちゃって...........いつもより早く寝ちゃった。

 えへへ......」 

 さっぱりした顔で瑠衣は答える。


 そもそも言葉は、全てを語れない。演説は、語り過ぎれば、(へつらい)になり、内容が濃すぎると嘘になる。情に訴えれば、中身を失う。


 雅先輩のように公約を実現させる力はないし、梓先輩のように、知性もない。エマ先輩のような華麗さもないし、あかね先輩のような強さもない。


 そう考えた時、唯一の自分の持ってるもの――それは、諦めない心だと気づいた。


 すると、それまで悩んでいた事がすっかり頭から消えぐっすり眠った。

 朝の目覚めもよかった。


 そして今に至る。


「私には何もなかったの。でも今みんなと友達になってる。それだけは確かだわ。だから......私は.......十分幸せ」


「頑張ってくるから見ててね」


 そう言って演壇へと向かっていった。




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