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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『立候補者不在』

 気付けばアルテミスメンバーは、全員十八歳。

 ――高校三年生になっていた。


「学校も久しぶりですね」


 ここでの雅の肩書は、「総長」から「会長」へと変わる。


 この何気ない学校の雰囲気が、一時、雅の背負う重圧から彼女を解放し、

 一人の少女に戻していた。

 そう、ここはアルテミスの原点であり、安息の地でもあった。


「会長、そういえば私達、生徒会も引退ですわ」


 生徒会書記の山際琴音が、ふと漏らす。


「そうね、次の会長を選ばなきゃいけないわね」


「誰がなっても、うちらと比較されて大変だと思うわ」


 麗子が、少し憐れむような顔で話に加わる。


「梓、今の立候補予定者は?」


「それが……立候補者が一人もいません」


 さも当然のように、梓は報告した。


 通常、生徒会長の立候補者はSクラスから出すのが、

 ここ聖凰華の伝統である。

 しかし今回は、二年生だけでなく一年生のSクラスからも、

 立候補者が出ていなかった。


「何それ? 梓、一、二年生のSクラスの生徒に聞いてみたの?」


「ええ。めぼしい生徒には声をかけたわ。

 でもみんな、“会長の後は務める自信がない”という理由で……。

 中には、会長に来期もやって欲しい、という要望まで」


「ちょっと。私に留年しろとでも言うの?

 無責任にも程があるわ」


 少しだけ怒気を含んで、雅は返した。


「まあ、このままでは生徒会選挙はできませんね。

 立候補者の強制はできませんから」


「それに調べたところ、一年生Sクラスと二年生Sクラスの間に対立があり、お互いを牽制し合っている様子もあります」


 梓の説明ではこうだ。2年生のボス的存在の娘は、新興のEコマースの社長令嬢、1年生のボス的存在の娘は、古くから続く家系で政治家の名門の息女。


 どちらも内心では、学園の主導権をとりたい。 しかしどちらも立候補して、負けたとき痛手が残る。そしてどちらも負ける可能性がある。


  「馬鹿みたい。そんなので出ないなんて。梓このまま立候補者だ出ない場合は?」


「校則によれば、現会長による推挙となってます。つまり彼女達は、負けない手段をとってます。推挙になれば、それは負けではないと」 


「無責任の極みね。

 簡単に言うと、前者はお金はあるけど権威がない。

 後者は権威はあるけど、お金がない。

 だから、権力が均衡しているってことね?」


「まあ、簡単に言えばそうですね」


「まずは状況把握ね。

 実際の雰囲気を見ないと。

 昼食に、あの子達を呼んで」


 昼食時間は、本来楽しいものだ。

 授業を離れ、友人達とのたわいない話で食も進む。


 雅達専用の個室に、ゲストが到着した。


「こんにちは、総……いや、会長。お久しぶりです」


「本当に久しぶりね。ごめんね、あなた達を放っておいて」


「とにかく座って。好きなの頼んでいいから」


 そう促され、ルナエンジェルのメンバー達は席についた。


「うわ、個室での昼食……初めてです」


「食事しながらでいいから、ちょっと聞きたいの。

 今回の生徒会長選挙だけど、揉めてるのは知ってるよね?」


「はい。

 正直、うちらの中でも嫌気が蔓延してます。

 二年生のSクラス先輩も、一年生のSクラスの人も、

 お互い足の引っ張り合いで……学園の雰囲気は最悪です」


 リーダー格の瑠衣が、率直に言った。


「会長達がいないことをいいことに、

 Sクラスの人達、ちょっと横暴になってて」


「で、今はどちらが優勢なの?」


「正直、分かりません。

 先輩達が学園に戻ってきてから、急にその話題が消えましたので」


「じゃあ、言い方を変えるわ。

 あなた達なら、どちらを押す?」


「どちらも押す気はないです。

 ――というか、興味もないです」


 少し間を置いて、瑠衣は続けた。


「まあ、選挙になればどちらかに投票はするでしょうけど……

 それは義務であって、支持ではないですね」


「私も同じです」


 柚葉が、静かに言葉を重ねる。


「だって、あの人達、生徒会長っていう肩書が欲しいだけですから。

 その重さも知らないで……」


 一瞬、言葉を選ぶようにしてから、


「雅会長とは、根本的に違います。

 一般生徒からすれば――どちらがなっても、何も変わりません」


「じゃあ、他に――

 一年、二年のSクラスの中で、

 “この人は”っていう第三の候補はいないの?」


 梓が、淡々と次を投げた。


「うーん……

 そもそも今の一年、二年のSクラスの人達と、私達、ほとんど接点がないですし」


「向こうからしたら、一般生徒は別の学校の生徒みたいな扱いですから」


 少し間を置いて、瑠衣が言った。


「三年生の先輩達は、

 確かに私達からすれば天上人でしたけど……

 でも、差別されてる感じはしなかったです」


「だって、初対面の私達も受け入れてくれたし、学園祭も楽しかった」


 しばらく彼女達の話を聞いていた雅は、ふと、ある事を思いついた。


「ねえ、梓。生徒会選挙の立候補者の資格だけど……

 Sクラスから、という校則はあるの?」


「いいえ。

 慣例上、Sクラスから選ばれているだけです。

 そのような制限があれば、一般生徒は生徒会に入れなくなりますから」


「あ……そうよね」


 梓は、雅の言わんとしていることを理解した。


「一般クラスから、立候補させればいいのよ」


 雅は人差し指を立て、微笑んだ。


「雅会長、それは無理です」


 瑠衣が、即座に首を振る。


「だって一般生徒の家は、普通の家庭です。

 うちの父なんて、ただの会社員ですよ」


「立候補しただけで、どんなイジメが来るか分かりません。

 それも、生徒だけじゃなく……家庭にまで、圧がかかります」


 朋美が、続けた。


「それを全部飲み込んで立候補する一般生徒なんて……」


 言い切る前に、雅が言葉を挟んだ。


「いるわ。私に、一人心当たりがあるの」


「え……そんな人が?」


「みんなには、その子を説得してほしいの」


「どう、できる?」


『はい――やります。……いえ、やらせてください。

 全員で、支えます』


 ルナエンジェルズ全員が、声を揃えた。


「じゃあ、その子はね。一年生なの」


「大丈夫です。交流はありますから」


「それにね、

 私達にも物怖じしないメンタルを持ってるわ」


「すごいですね……」


 瑠衣は、頭の中で何人もの顔を浮かべながら、絞り込んでいく。


「初対面の私達に、何の繋がりもなかったのに、

 いきなりチームに入れてくれ、って言ったくらいだから」


「え?」


 一瞬、言葉が消えた。

 代わりに、鼓動が胸を打つ。


「それでね。私達の無理難題も、全部クリアしてきた子」


「フフフ……

 女王様から庶民が騎士になれ、なんて。

 会長、相変わらず無茶ね」

 エマは、楽しそうに眺めている。


「あの……まさかとは思いますが」


「みんな、さっき“やります”って約束したわよね。

 瑠衣さん」


「無理、無理、無理、無理です。

 無理です。

 私の家も、サラリーマン家庭ですよ」


「あら。私の頼みでも、無理かしら?」


「総長、ここは.....私達で説得できないなら、

 美奈子さんに説得をお願いしましょうか?」


「ちょ、梓先輩。それ、説得じゃなく……」


「まあまあ、梓。ここは私に任せて」


「あなたが受けてくれたら……

 私達のマシンを、あなた達に譲るわ」


「え?先輩達の……あの伝説のマシンを?

 本当ですか?」


 後輩達の目の色が変わった。


『やります。瑠衣が拒否しても、私達が説得します』


 こうして、個室での密談は、思わぬ方向で決着した。

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