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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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200/235

お嬢さま 「クロスオーバー」

  雨が降る。それが意味することは――混沌


 このレースでは、1時間前後の設定でマシン調整されいるため、ほぼタイヤ交換無しで走り切るギリギリの距離。


 それが、雨と言う不確定要素が介在し、先の見えないレースになった。


 各チームのレースメーカーは、1から戦略の見直しに追いやられた。前半飛ばし逃げ切りを図ってたチームも、後半に追い込みをかけるつもりだったチームも、この雨で全てリセットされる。


 そしてタイヤの消耗戦が、雨が去ったあとの路面状態の判断、タイア交換の見極めタイミングに置き換わった。


 蓮のピットでも悠翔が厳しい顔をしてる。ピットからでは、全ての路面状態は、把握できない。そこは、ドライバー判断に任せる以外ないから。レインへの交換は、ピットで出来る。問題は次・・・・


 コントロールタワーでも雨に対する対応が取られた。


「冬香さん、医療スタッフの準備を・・・・」


「ええ、すでにスタンバイ状態ですよ。これは折りこみ済みですから」

 その落ち着いた言葉の裏に、その手は緊張を隠していない。


 そして、雨粒が、ポツポツ――コースを薄黒く染めていく。


 マシンの背後からわずかながら水煙が尾を引く。


 各ピットに緊張が走る。レインタイヤはすでに所定の場所に準備された。

 ピットボードが出される。次の週回後の指示が表示される。選択の1週目が決まる。 


 コースはまだ雨水をためていない。しかしあと1週で表面を覆うだろう。そのギリギリがこの週回。


 悠翔は、迷わずピット指示を出す。


 そして千秋もピット指示を出そうとしたとき、アテナから止められた。

「なぜ?」


 《美奈子は、雨に強い。混雑時は、リスタート制限される可能性が高い。そのロスタイムとタイヤでのロスタイムのトレードオフで計算しました》


 白木は驚いた。

(こいつ、どこまで考えてるんだ・・・)


 路面の黒さが、所々光を反射し始めた。ドライバー達は、無意識にペースが落ちる。それはナンバーズ達も同じ。取れるラインの数が徐々に制限されていく。


 その中で、ペースを無視する2台があった。


 蓮は、使えるラインを正確にトレースし2台を抜き去る。美奈子も15番を抜き去り、さらに次のコーナーでもう1台をそして得意のS字でもう1台を抜き蓮の後ろに付く。


 15番の男は、ヘルメットの中で顔を崩す。

(あいつら、ぶっ飛んでやがる。恐怖はないのか?)


 蓮は、後ろを走るドライバーの雰囲気が、変わったことを感じた。

(美奈子か・・・)


 先頭を走るナンバーズが、ピットインする。

 そのシーンがセンタースタンドの大画面モニターにタイマー付きで映し出される。


 スタンドの視線が、コースからモニターに流れる。


 『9:12』


「早い・・・」 

 観客の一人が思わず呟く。彼は、タイマー等見てなかった。

 この言葉は、ピットクルーの動きが、まるで手品師のように見えた自然の感嘆。

 そして、ナンバーズ達は、何もなかったように定位置に戻った。


 第二集団もピットに戻る。 間を置かず蓮や美奈子の第三集団も入る。

 そこに一台だけ、ピットにはいらないドライバーがバックストレートを疾走する。


 観客から、「ザワっ」と声が上がる。そのマシンは、他と違った甲高い音を残してストレートを走り過ぎた。

 ”REN JP” の文字が、一気に階段を駆け上がりナンバーズの次に来る。


 驚いたのは、観客だけでなかった。


 悠翔は、少しの怒気を含んでピットクルーに尋ねた。


「ピットボードは、ちゃんと出したのか?」


「はい、出しました」


(蓮の見落とし?いや違う・・・・)



 そしてもう一つのピットでも同じ事が起こっていた。


 《美奈子が、ピットに入ります。準備を急いでください》


「なんで?ピットインの指示だしてないよ」


 《今は、まだ理由はわかりません。とにかくタイヤ交換を》


 白木は、驚いた。

(何が、このレースを支配してるんだ?万能に見えたアテナがわからない?)


 美奈子が戻ってきた。アテナリジェーネが稼働する。そのシーンがまた、大モニターに映される。意図して運営は人間とAI支援ロボットの対比を見せるようだ。


 巨大なアームがバイクを少し浮かせ2本のタイヤを外す、そしてクルリと180度回転し2本のレインタイヤを2か所同時に設置した。

「オオーッ」 スタンドから歓声が上がる


 タイマー止まった数字は、

 15:03


 コントロールタワーで見てた雅は誰となく言った。

「さすがに、早さでは師匠たちのピットには及ばなかったですね」


「ええ、安全性の観点からもここまでが限度です。でも、バイクの構造をユニット化して、タイヤだけじゃなくユニット交換式にすればもっと短縮できます」

 宗子が答えた。

「その為の新式バイクは、今うちの会社で試作中だけど、これが実用化されれば、故障も、修理も飛躍的な時間短縮ができますし、アップグレードも簡単にできます」


「そう・・・夢のバイクですね」

(わかっている。それが人の生活を便利にする技術なのも。だから今回、アテナにリジェーネを預けた)


 ピットでは、美奈子が簡単な情報交換をアテナとする。

 そしてリスタートした。


 《美奈子の判断は正しかった。タイヤの空気圧が、想定より減ってます。このまま走れば、1週のどこかでバーストしました》


「そうか」

 白木は妙に納得した顔で答えた。


 蓮は、必死にナンバーズを追う。しかし背中を追えたのは、最初のコーナーまで。それ以降は、タイヤ性能の差でコーナー毎に離される。いやタイヤが条件が同じでも結果は一緒だったろう。


 次のピットでは、美奈子にさえ追い抜かれてる。

(あいつ、怒るよなぁ......)


 9番目の名前が、10番目に、そして11番目に、ピットに入った時には15番目まで落ちていた。


 ピットで蓮が釈明をしようとしたら、悠翔が止めた。


「話は後だ。まかせろ。アテナリジェーネのタイムは抜いてやる」

 13秒でタイヤ交換を終わらせると蓮は、加速した。出口で美奈子と並ぶ。


 最初のコーナーでは、お互い譲らない。美奈子は反射の鋭さで、蓮は、合理的なラインをトレースする。


 感性と理論のせめぎ合いが続く。


 そして、気付けば2人の走りに不思議な調和性が訪れる。

 ラインは違っても、二人の差は広がらない。


 美奈子は、蓮の完成された走りを渇望し、蓮は美奈子の感性の走り

 が欲しいと相互に思っていた。


 その時、1台の15番の車体マシーンが前に現れる――いやとらえた。


 第2カーブで蓮は、15番のインをつく。美奈子は、反射的にアウトに車体を持っていく。そして2台のマシンは、15番のマシンをパスし綺麗にラインを交差させる。15番のマシンは、アウトにもインにもラインがなく後方に押しやられた。


 美奈子にとっては、2度目のデジャブである。ただし今度は、やった方だが・・・


(チッ!、”種明かし”してしまったか・・・)

 しかし蓮は、わるい気はしなかった。


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