表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/239

お嬢様 「二つのピット」

「なあ、アテナって言ったか?お前自分の指示を無視されても、何も感じないのか?」


《感じる?それは感情の事ですか?》


「ああ、すまねえ。機械に感情なんてないよな」


《否定します。私にも感情はあります。今回の美奈子の指示拒否は、私が彼女の気持ちを見誤ったからです》

ホログラムが浮かび上がり柔らかな顔をした、アテナが浮かび上がる。


「感情?何言ってるんだ。機械が感情って・・・」


「あるよ。アテナは感情を持ったAIなの。だから私達は対話できるんだよ」

千秋は、そう白木に説明した。


ピットに美奈子が戻ってきた。ヘルメットを脱ぐと、なるほど勝気そうな顔が現れた。


そして開口一番アテナに頭を下げる。

「アテナ、すまねえ。指示を無視して。だが、もう少しで何かがつかめそうだったんだ。許して」


《はい。許します。それとタイムもさらに縮まってきました。私もうれしいです》


白木は、ますます混乱してきた。

(AIに謝る?人間が?――そしてそれをAIが許す?そして、”うれしい”?)


その時だった。

《白木さん、なにか私達に疑問があるようですね》


その一言で、ポーカーフェイスが崩れる。


「あはは、無理、無理!アテナに感情は隠せないよ。アテナとポーカーしたら絶対負ける。究極のイカサマ師だから」 


《私をイカサマ師扱いにしないでください。息づかいやしぐさ、瞳孔の開き具合、体温の上昇などから・・・》


「アテナそれまで!」美奈子が止めた。


「で何が聞きたいのさ?」


「あんたらとアテナの関係だ」


「すまん戸惑ってるんだ。あんたらが、アテナと普通に話してることが、それも自然にだ。うまく言えないが、会話に違和感がないことが、()()()なんだ」


「なんだ、そんなことか。簡単だよ。うちらとアテナはダチだからな。遠慮もクソもないよ」


白木の()()の認識が壊れていく。だが、彼女達とアテナの間にしっかりとした絆がある事だけはわかった。


「すまん、手を止めさせて。セッティングを続けてくれ」


美奈子は、マシーンの所に行きアテナと話ながらセッティングを煮詰めている。


白木は、それをみていたら、ふいに話しかけられた。

《今回は、あなたに『一切の判断を求めるな』と、雅様に命令を受けてます》


「オワッ!」白木は、思わず声にだす。

「お前、いま美奈子とセッティングしてるんじゃなかったのか?」


《わたしは、現在192人と同時に話せますから》


「わかった。わかったよ。同時処理能力ってやつだな」

白木は降参するように手を広げた。



スタートまで、まだ時間はあった。だが蓮のピットには、計った時間などは一切無意味だった。


「美奈子が、大化けしやがった」


蓮は、焦る表情を隠しきれない。


まだ足りない――このままでは、あの女に勝てない。それは、タイムでない。走りの質が変わってきてるのだ。悠翔のレースマネージメントか完璧だった。


タイムアタックでは、新型マシーンの力を100%にしてくれた結果、予想以上のタイムで決勝に残った。


だがあの弱S字コーナーで美奈子の背中には付けたが、抜けなかった。

マシーンの性能ではない、いやマシーンの性能では、この新型のほうが勝ってるだろう。


(くそ~劣ってるのは、俺の腕か、何が足りない)


苛立ちが思わず顔を崩す。


その苛立ちに最初に気づいたのは、悠翔だった。


「何を焦ってる?タイムも想定以上だしラインも問題ない」


「すまん、顔に出てたか?足りないんだ、マシーンも問題ない。お前のレー  スメイクも問題ない。でも足りない・・・」


「お前でもか?」

一瞬で、悠翔は、足りない対象者が誰か理解した。


「総長からは、『勝てとは言わない、世界を見て来い』と言われたが、今は、あいつの背中だけしか見れないんだ」


珍しく悠翔の態度が変わった。いつもの冷静な顔が引き締まりじっくり話を聞いた。

弱S字のワンブレーキコーナーリング。

背中には、付けるが追い越せない。

速度を上げようとする僅か0コンマ数秒先に、あいつが先に速度を上げる。


「うむ、分かった。まさかそこまでとはな。たぶんだが、美奈子は――()()()()を見に付けたのかもな」


「後ろの目?」


「ああ、俺はこんな男だ。感性より理論を先に考える。だから理屈に合わないオカルトの(たぐい)は一切排除してきた」


「ああ、お前はそんな男だ。だからお前に頼んだ」


「後ろの目の正体は、わかりやすく言えば、背後の認識能力とその未来予想位置の把握だろうな」


「それは、俺にはない。じゃあ絶対勝てないのか?」


「まあ待て。それは、お前もそのうち手に入れられる」


いま勝てないなら、意味はない。美奈子の背を抜かないなら世界の背中が見えないからだ。たぶん自分の前にいるほとんどのライバルたちは、美奈子と同じ目か、それに替わる目をもっているのだろう。それがタイム差だ。


そしてその差は、本来のレースでは、駆け引きに直結する。複数の走者が相手になる以上、後ろの目は、圧倒的なアドバンテージとなる。そしてその目は、レース中に美奈子のように手に入るとは思えない。


「美奈子は、どうやってそれを身に付けたのだろう?」


「お前は間違ってるぞ。後ろの目は、元々持ってたのだろう。今回開花したのは、前の目だ。その結果後ろの目が、本来の力を発揮した。」


「前の目は、お前はすでに持ってるものだ。それは、コーナーの先を読む力。ただ美奈子がやっかいなことは、前と後ろの目を手にしたことで鳥の目も得たことだな。ひょっとしたらアテナも絡んでるかもな」


「とにかく分かった。抜く方法はある。心配するな。お前は美奈子に勝てる」自信を持って悠翔は答えた。



《クシュン・・・》

「どうしたのアテナ?くしゃみのマネなんかして」

《わかりません。たぶんバグだと思います》

「まあ、AIがくしゃみなんかありえねよな」



双方のピットでは、最後の確認が行われる。


アテナは、全ての情報を同時処理して、断捨離を行い、必要な注意点と情報のみを美奈子に伝える。


それだけで美奈子は、自分の中で走りをシュミレートする。頭の中に走るイメージが涌く。エンジン音もあの焼けたオイルの匂いさえも再現される。


そしてアテナに一つだけ尋ねた。

「アテナ、それで私が師匠達に届く可能性は何パ―セント?」


珍しくアテナが即答しない。そしてホログラムが浮かぶ。

《それは、神のみぞ知る所です。》


「へえ~アテナが神頼みか。わかった。私も神に祈るわ」

笑いながら美奈子は、ヘルメットの紐を引き締めた。


一方、蓮のピットでは、マシーンの整備に余念がない。最後の最後まで続けるつもりだ。


「いいか。蓮、ローターリーは、パワーが出るが、唯一の欠点が熱だ。スリップばかりに入るな。コーナーでは幾分アウトを回りしっかり熱を逃がせ。

それと、ラバーの消費を減らすため序盤は無理なバトルはするな。例の作戦は、こちらで合図を出す。それで美奈子は抜けるはずだ」


「わかったよ、相棒。まかせた」


ピットのマシーンに次々に火は入る。 


勝負の瞬間は、すぐに来る。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ