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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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19/227

お嬢様 『月の雫プロジェクト』

18と19間違えましたので入れ替えしました。


挿絵(By みてみん) 

アルテミス エマ・ベルナール 学生服


一夜のカーニバルが終わった翌朝。 美奈子は、三人の後輩たちとともに、ある場所へ向かっていた。


小柄で勝気な千秋。 無口で切れ者の涼子。 少しおっとりした沙耶香。 そして、美奈子。


四人は、昨日“アルテミス”の総長を名乗った少女——三条雅から手渡された名刺を頼りに、街を抜け、タクシーを降りた。


目の前に現れたのは、白い外壁と偏光ガラスに包まれた、近未来的なビル。 その入り口には、控えめな文字でこう記されていた。


「月の雫プロジェクト」


「ここが……アルテミスの指定した場所なんスか?」

千秋がぽつりとつぶやく。


美奈子は無言で名刺を見つめたまま、頷いた。


四人が恐る恐る自動ドアの前に立つと、重厚な扉が静かに開いた。 中から現れたのは、昨日と同じ聖凰華女学園の制服を着た少女だった。


「いらっしゃいませ」

その声は落ち着いていて、どこか余裕を感じさせる微笑みをたたえていた。


「あ、あたしら……その、アルテミスの総長さんに呼ばれて……」

  美奈子が名刺を差し出す。


「ええ、もちろん覚えておりますわ」

少女——雅は、柔らかく微笑んだ。

「美奈子さん、そして皆さん。お待ちしておりました」


「えっ……じゃあ、昨日の総長って、あんた……?」


「普段通りのお言葉でどうぞ。お気になさらずに」

そう言って、雅は中へと案内した。


大理石の床に、雅のヒールの音が静かに響く。 ロビーはまるで高級ホテルのようで、昨日のバトルとはまるで別世界だった。


入り口の両脇には、昨日カヲルに突き返した妨害者二人を押さえていた、黒スーツの男たちが控えていた。


エレベーターに乗り、最上階の6階へ。 案内されたのは、広々とした会議室だった。


そこには、雅と同じ制服を着た七人の少女たちが、テーブルの片側に整然と座っていた。


「ようこそ、アルテミスの本部へ。皆さまを歓迎いたしますわ。どうぞ、おかけになって」


椅子はレザー張りで、座り心地は抜群。 机は重厚で、まるでドラマのセットのような上品さが漂っていた。


「簡単にご紹介いたしますわ。手前から順に——  梓さん、彩さん、あかねさん、宗子さん、エマさん、麗子さん、琴音さん。そして、わたくし雅。これがアルテミスのメンバーです」


「うちらは……あたしが美奈子。で、千秋、涼子、沙耶香。よろしくな」


そう言いながらも、美奈子は驚きを隠せなかった。 まさか、あのアルテミスのメンバーが、全員こんなに若い高校生だったとは——。


「ひとつ、聞きたいことがある」

美奈子の声が、静かに響く。

「アルテミスは……本気で、女だけで走ってるのか? 本気で、女だけで頂点を獲るつもりか?」


雅は微笑みを崩さず、まっすぐに答えた。


「ええ。本気です。そして、その未来に……あなたたちの居場所もあると、私は思っています」


“未来”——その言葉に、美奈子は思わず眉をひそめた。


「……すまねぇ。あたいら、学がないもんでさ。“将来”と“未来”の違いって、よくわかんねぇんだ。なんか、違う気はするけど……」


その言葉に、雅は一瞬だけ目を見開いた。 そして、ふっと微笑んだ。

「“将来”は、個人や団体の先のこと。でも“未来”は、まだ出会っていない仲間や、まだ見ぬ可能性も含めた、もっと広い先のこと。私は、あなたたちと一緒に、その“未来”を見たいのです」


美奈子は、しばらく黙っていた。 そして、ぽつりと口を開いた。


「……うれしいよ。でも、あたいらを受け入れるってことは、あんたたちも巻き込むことになる。“横浜狂想会”を敵に回すってことだ。あそこは、やばい。  総長の親父は、土建屋で議員。警察も手が出せねぇ。……あいつらに逆らうと、ただじゃ済まねぇ」


その言葉に、アルテミスのメンバーたちの表情がわずかに変わる。 あかねの眉がピクリと動き、彩の口元がきゅっと引き締まる。


「関係ありませんわ」

雅の声は、静かに、しかし力強かった。

「私たちは、あなたたちを“支配”するつもりはありません。これは“友好同盟”です。条件はひとつだけ——  あなたたちが立ち上げる新チームの名前に、“ルナ”という言葉を入れてほしい。それだけです」


美奈子は、三人の後輩に目をやった。 千秋がうなずき、涼子が無言で頷き、沙耶香が小さく笑った。


四人は立ち上がり、揃って頭を下げた。


「よろしくお願いします、総長!」


その瞬間、アルテミス初の友好団体が誕生した。


雅は手を差し出し、美奈子と固く握手を交わす。


その背後で、アルテミスのメンバーたちは、静かに“悪知恵”を巡らせていた。


「おじい様に、いい情報を渡せそうね」


「お父様の政敵なら、潰すのは簡単よ」


「融資を止められたら、あの土建屋も長くないやろ」


「下請けのリスト、精査してみよか」


——彼女たちは、ただの走り屋ではない。 知恵と力を持ち、未来を見据える“女たち”だった。


「では、皆さまにこのビルの設備をご案内いたしますわ」

雅の声に導かれ、彼女たちは未来の中へと足を踏み入れた——。


【5F:戦略と知のフロア】

まず案内されたのは、戦略と作戦を司るフロア。 巨大なLEDビジョンが壁一面に広がり、全国の路面状況、天候、風速、気温がリアルタイムで映し出されている。


ここでは、あらゆるバトルのシミュレーションが行われ、 仲間たちの走りを支える“頭脳”が日々、磨かれている。


隣には、友好チームごとに割り当てられた専用会議室と休憩スペース。 レザーソファにWi-Fi完備の作業デスク、仮眠室まで整った空間は、まるで秘密基地のようだった。


そして、バリスタが常駐するカフェラウンジ。 香ばしいコーヒーの香りが、緊張していた少女たちの心をふっと和らげる。


【4F:鍛錬と癒しのフロア】

次に訪れたのは、身体を鍛え、心を整えるための空間。


最新鋭のトレーニングマシンが並ぶジム。 反射神経、体幹、持久力——走りに必要なすべてを鍛え上げる。


その隣には、プロのトレーナーが常駐するリカバリー室。 マッサージ、ストレッチ、酸素カプセル…… 戦いの疲れを癒すための設備が、惜しみなく整えられていた。


さらに、室内プール、ジャグジー、サウナまで完備。 まるで高級スパのような空間に、少女たちは言葉を失う。


そして極めつけは—— 八基の“スーパーシミュレーター”。 現実さながらの走行感覚を再現する、8軸駆動のドライブマシン。 ここで、誰もが“最速”を目指して研鑽を積む。


【3F:バイクと技術のフロア】

ここは、アルテミスの魂が眠る場所。


メンバーたちの愛車が並ぶガレージは、まるで美術館のように整然としていた。 一台一台が、手入れされ、磨かれ、誇りをまとっている。


隣接するメンテナンスフロアには、AI補助型の自動修復装置“ジェネシス”が鎮座していた。 傷ついたマシンを、まるで魔法のように蘇らせるその力は、すでに伝説となっている。


さらに、風洞装置、シャーシダイナモ、各種測定器を備えた研究室。 ここでは、エンジンの未来が日々、設計されている。


【2F:美と誇りのフロア】

そして、少女たちの“戦装束”が生まれる場所へ。


特攻服製作室には、ミシンや刺繍枠、AIソーイングマシンがずらりと並ぶ。 あの“フォン・マキコ”から派遣された職人たちが、日々、唯一無二の一着を仕立てている。


装飾室には、チームワッペン、髪飾り、革ジャン、リボン…… それぞれの“色”を表現するためのアイテムが、整然と並んでいた。


そして、食堂。 従業員用とメンバー用に分かれた空間には、温かな香りが漂っていた。


そして、笑いと温もりのランチタイム

あまりのスケールに圧倒され、言葉を失っていた四人。 だが、千秋のお腹が「ぐ〜〜っ」と鳴った瞬間、空気が一変する。


「えへへ……朝から何も食べてなくて。すんません、匂いがうまそうで……」


その一言に、場がふわっと和んだ。


「ちょうどいい時間ですわね。ランチにいたしましょう」

雅が微笑み、全員で食堂へ向かう。


席に着くと、涼子がメニューを見て小さくうなる。


(……値段が書いてない……)


「すみません、ラーメンとか……うどんとか、ないですかね?  今日、持ち合わせが……」


その言葉に、アルテミスのメンバーたちが笑顔で答えた。


「大丈夫ですよ。全部、無料ですから」


「ラーメンやうどんがお好きなら、次回からご用意しますね」


「えっ……また来ていいの?」


雅は、きょとんとした顔で答えた。

「もちろんですわ。今までご案内した設備は、見せびらかすためではありません。 あなたたちにも、自由に使っていただくためのものです。

 5階に、あなた方の部屋もご用意いたしますわ」


「ええええええええっ!?」


四人は、声を揃えて叫んだ。


「じゃあ、あのカフェラウンジも……?」


「はい」


「サウナもジャグジーも……?」


「もちろん」


「フォン・マキコで特攻服も……?」


「ご希望があれば、すぐに」


「私の古いバイクも直してくれるの……?」


「愛着があるなら修復しますし、新車もご用意できますわ」


「……キダのKB-400FourRが夢だったんだけど……」


「うちのラインにございます。一番いいロットをお選びください。

 色も指定できますよ」


「うわぁ……アタイら、一夜にしてお姫様になっちまった……!」


笑い声が、食堂に広がる。 昨日まで敵同士だった少女たちが、今は同じテーブルを囲み、笑い合っていた。


こうして、アルテミスと“ルナ”の物語が、静かに、しかし確かに動き出した。


——未来は、ここから始まる。


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