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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 「波紋のあとで」

前話は、冬香と久我の対決シーンを入れ間違えましたので、12月13日に差し替えてます。

国家事件の終結は、驚くほど静かだった。


久我慶臣の失脚は、全国ニュースにはならなかった。政府はそれを”医療政策局の不祥事”として処理し、世間の目から巧妙に遠ざけた。だが、東北では違った。あの夜、命を懸けて冬香を守った者たちの名は、確かにこの地に刻まれていた。


仙台サーキット計画は、藤原家の妨害が消えたことで一気に動き出した。むしろ藤原財団の全面協力もあり、東北六県合同の観光戦略会議はこの計画を正式に採択する。理由は単純だった。東光連合が“街を守った”という事実が、地元に強烈な信頼を生んだからだ。


宗子や嵐子、そして冬香自身が地元議会や商工会と対話を重ね、「これは若者の未来を守る計画だ」「暴走ではなく、正規の舞台を作る」という理念が、少しずつ地域に浸透していった。やがて、東北全体がこの計画の“後押し側”に回る。


独眼連合もまた、事件後に公安や県警との“暗黙の協定”を結んだ。暴力的走行の禁止、地域安全パトロールの継続、非行防止活動の支援。こうした姿勢が評価され、彼らは「東北で最も治安意識の高い走り屋集団」として再定義される。


そして、藤原医療財団はサーキット最大のスポンサーとなった。冷門事件によって封じられていた医療政策の一部が解放され、財団は東北での権威を取り戻す。美琴はリハビリを経て、藤原医科大学の主任教授として復職が決定。財団と大学は共同声明を発表し、サーキットにおける医療体制の全面支援を約束した。


これは衝撃だった。ドクターヘリ、救命スタッフ、専門外傷医、常駐医療班、それらすべてを財団が担うという体制は、国内でも類を見ない。若者たちは危険な場所ではなく、“守られた舞台”に集まるようになった。


アルテミスは、表舞台には一切姿を見せなかった。雅が選んだのは「名を残さず、動く」こと。三条家の財務法務チームは裏方として ひっそりと動き、地元有力者との調整を進めた。表に立つのは東光連合、後ろから支えるのはアルテミス。それが雅の望んだ形だった。


こうして東北は変わった。サーキット建設により暴走行為は減少し、観光と経済が回復。藤原財団の支援により、安全な走り文化が根づき、独眼連合は治安の象徴として信頼を得た。東光連合は「国家を敵に回した暴走集団」ではなく、“東北の未来を動かす実働部隊”として評価されるようになった。


もちろん、それは一夜にして得られたものではない。あの夜、命を懸けた戦いがあったからこそ、今がある。


事件の後、雅は冬香と静かに会った。


「今後はどうされますの?」


私は、藤原財団を継ぐ使命がありますから。休学していた大学に戻って、また医学生に戻ります」 冬香は、憑き物が落ちたようにやさしい笑顔になっていた。


「そう。あなたがいる限り、東北サーキットの安全性は格段に上がるわね」


「……あの、雅さん。本当に今回のこと、ありがとうございました。でも、どうして……母の存命がわかったんですか?」


「実はね、うちのアテナがこっそり、あの深層の影にコンタクトを取って、情報を譲ってもらったの。下手したら取り込まれてたかもしれないのに。馬鹿よね」


《心外です、雅。私の計算では、82.5%安全でした》


「ふふ、そう言うと思ったわ。でも、あの影に接触するなんて、普通じゃ考えないわよ」


「それで、茨城にある医療センターに、薬物で昏睡状態にされて監禁されているのが分かったってこと?」


「そう。だから、救出部隊を送ったの」


「……ありがとう、アテナ」


《いえ、私にもメリットがありましたから。おかげで、藤原の先端医療研究にアクセス権を頂きました》


雅が少し意地悪く微笑む。


「で、本当は?」

その声には、どこか優しさがにじんでいた。


《な・なんのことですか?》


アテナの簡易ホログラムが、ぷつんと一瞬ノイズを走らせ、頬のあたりがほんのりピンク色に染まった。


雅はくすっと笑い、そっと目を伏せる。


「ふふ、ありがとう。あなたが動いてくれたおかげで、

 冬香さんは救われたわ」


《いいえ・・・・》

アテナはそれ以上、何も言わなかった。

その声には、どこか“降参”の響きがあった。



夕暮れの静けさの中、雅は一枚の古い写真を差し出した。そこには、若き日の三条泰時と美琴が、研究資料を挟んで談笑している姿が写っていた。


その後、雅は三条家本邸の書院で、父・泰時と向き合う。


「お父様。どうしてこの写真を“隠していた”のですか。そして……冷門事件を三条家が封印してきた理由。今の私には、聞く資格があると思っています」


泰時は静かに語る。


「封印したのは三条家の都合ではない。あれは“藤原美琴の願い”だったのだよ」


冷門事件の核心は、かつての中央の一部勢力の汚職と圧力。美琴はその証拠を握る存在だった。だが彼女は言った。


『冬香の未来が傷つくなら、真実はいったん閉じてほしい』


その願いを、三条家も藤原家も尊重した。


「……だから、冬香さん自身が立てるようになるまで、“触れてはならない領域”として封印されたのですね」


「そうだ。あれは“守るための封印”だった。誰かの責任ではない。美琴さんの選択であり、冬香さんが成長する時間を稼ぐためのものだった」


そして今、その封印を破ったのは、雅と冬香自身だった。


「この写真の意味は?」


「“味方の証”だよ。美琴さんは、冬香さんだけでなく、三条家にも協力してくれた。冷門事件の影に最初に気づいたのは、彼女だったのだ」


書院の空気は静かで、長く凍っていた時間が、ようやく溶けていくようだった。

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