表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/228

お嬢様 『30分の奇跡、0.01秒の決断』

 ピットトレーラー内。


クレーンに吊られた美奈子のニンジャZX-4RRが、白く輝くトレーラーの内部へと運び込まれる。 側面が電動でせり上がり、まるで近未来の手術室のような空間が現れる。 天井からはLEDライトが眩しく照らされ、整備士たちが無駄のない動きで配置につく。


「リジェーネ、起動」 木田技術開発研究所と三条ロボテック・ビッグデータ社が共同開発した、AI補助型自動修復装置が静かに動き出す。


システムログ:


コード

……位置確認、スタビライザー起動

……フォーク変形度15度、補正プログラム開始

……3Dスキャナー、CTスキャナー起動

……AIオートCAD、補正角度計測中

……フォーク修復不能。代替部品「ZF4752」推奨

……改良開始。所要時間:3分20秒±5秒

……フレーム歪曲補正ロボットアーム起動

……剛性スキャン完了、補正データ取得

鋼鉄のアームが車体を固定し、スキャナーがフレームの歪みを解析。 AIが理想形状と照合し、補正角度を即座に算出する。


溶接ロボットが金属粉末をレーザーで瞬間溶接。 ナノレベルの補修樹脂が噴射され、フレームの剛性が回復していく。 カーボン製のカウルは真空成形で再生され、塗装ロボットが鮮やかなレーシンググリーンを吹きつける。


整備士たちはAIの指示を確認しつつ、細部の調整を加える。


コード

……車体角度45度にローテーション

……右ステップ角度2度補正

……リアサスリンク再トルク確認

……エンジン内圧測定、混合比1%調整

そして、事故からわずか28分後――


「……修理完了」


ピット前。


新品同様に蘇ったニンジャZX-4RRが、美奈子の前に姿を現す。


「お嬢ちゃん、念のため試運転してくれるかい?」


「ああ……」

美奈子は、まるで奇跡を目の当たりにしたように、愛機を見つめた。

「……生き返った。あたいのニンジャが……夢みてぇだ」


「乗っていいのか? 本当に?」


「もちろん。違和感があれば、遠慮なく言ってくれ」


美奈子はそっと跨がり、エンジンをかける。

急発進、急制動、スラローム、ハングオン――

一連の動作を終え、メカニックにサムズアップ。


「一つだけ違和感がある」


「おう、どこだ?」


「……前より吹けがいい」

照れくさそうに笑う美奈子に、整備士たちが歓声を上げた。


その様子は、中央モニターに映し出されていた。


誰もが息を呑み、声を上げる者はいなかった。

まるで、命を救う手術を見守るように――。


それもそのはず。 “リジェーネ”のベースは、三条ロボテックが開発した医療用AI手術支援ロボット。 木田の二輪製造技術と融合し、人と機械の共同作業による“未来のピット”が完成したのだ。


この技術は、木田が次世代プライベートジェット生産に、三条重工がロケット製造に応用する予定。 互いにウィンウィンの関係で成り立つ、国家レベルの技術連携だった。


そして、社会がざわめき始める。


「なんだあれ……木田がライバル車を修理? おかしくねぇか?」


「プライベートサポートの方が、ワークスより厚いってどういうことだよ」


「あのAI、神でも宿ってんのか……?」


SNSでは修理の様子がリアルタイムで拡散され、 画面下には協力企業のテロップが流れる。


木田技術開発研究所/三条ロボテック/ビッグデーター社/さくら銀行/新大和素材製鉄/フォン・マキコ


この“企業名の列挙”こそが、あかねが警察を止める理由だった。

「これはレースではなく、次世代技術のデモンストレーションです」

そう言い張れる“建前”が整っていたのだ。


報道各社は騒然となる。


「アルテミスの協力企業、全部グローバル企業じゃねぇか……」


「なんなんだ、これは……」


取材を試みるも、埠頭の入り口はすでに封鎖。 上空からの撮影も、航空規制で不可能。 ドローンを飛ばせば、即座に制御不能に陥り、墜落する。


「目標確認、てー」


「命中確認。制御不能、落下します」


「成功ですな。レーザー妨害、実戦レベルで有効です」


海上自衛隊の試験艦“あすか”の艦橋で、艦長と三条重工の研究者が静かに握手を交わす。


報道各社は取材を試みるが、上層部からは謎の“取材中止”命令。


オールドメディアは沈黙し、情報はSNSだけが頼りという、奇妙な夜が始まっていた。 


コンテナ群と巨大なクレーンが無骨な影を落とす埠頭に、 今夜だけは、いつもと違う光と熱気が集まっていた。


ナトリウムランプの橙色の光が、港の空気を鈍く染める。 何十人もの観衆が、柵の上、コンテナの上、持ち込まれた簡易ステージや高台に陣取り、 息を詰めて、ただ二人の姿を見つめていた。


中央の大型モニターには、これから始まるレースのコース図と、 二人のマシンのスペックが映し出されている。


「レディース・アルテミス」の仲間たち。 木田技術開発研究所のメカニックチーム。 「女豹疾走」の応援団。 そして、噂を聞きつけて集まった走り屋たち。


夜の海風に、チームの旗や団扇、ケミカルライトが揺れ、 群衆の熱気をさらに煽っていく。


「……本当にやるんだな、あの二人が」


「見ろよ、あのニンジャ。ピカピカじゃねぇか」


「30分前まで大破してたって、信じられるか?」


「一方は黒のカスタムスクーター

 ……スクーターでニンジャに勝てるのかよ?」


誰かの呟きが夜気に溶け、潮と油と排気の匂いが漂う。


美奈子は、愛機ZX-4RRのカウルにそっと指を滑らせる。 観衆の視線を、背中でまっすぐ受け止めながら。


新しく生まれ変わったレーシンググリーンのカウルが、 ナトリウムランプの下で、黒みがかった灰色のような深い光を放っていた。


「……あんたにゃ、ZX-4RRを直してもらった恩はある。

でも、勝負に手加減はしねぇ。それでいいか?」


「何を今さら。手を抜いたら……一生、あなたを軽蔑しますわ」


「……だよな。あんたは、そういう女だ」


短く返す美奈子。 その口元に浮かんだ笑みに、梓もまた、わずかに頬を緩めた。


観衆の声援が、波のように押し寄せる。 その熱を背に受けながら、美奈子はヘルメットをかぶる。 梓もまた、静かにバイザーを下ろした。


その瞬間、色も音も遠のいていく。 視界は狭まり、世界はただ、エンジンの鼓動と、闘志の熱だけになる。


キーをひねる。 エンジンが咆哮を上げ、夜の海辺に轟く。 コンテナの影が揺れ、港の照明が二台のマシンを照らす。


簡易スタート信号が、赤く点灯する。


5 4 3 2 1


スタート。


今夜のクライマックスが、ついに幕を開けた。


修理時間とフレーム歪曲補正ロボット、データーの収集以外は、確立された、あるいは確立しつつある最先端技術を拡大解釈して想像してみました。こんなのあったらいいなの意味で描いてみました。そう考えるとフレームの補正を行う職人さんの技術は本当にすごいと思います。

皆んもこんな装置があればいいなと言う装置ありますか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ