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お嬢様の神のピットトレーラーと再生(リジェーネ)そしてレーススタート

 

 転倒でフレームとフロントフォーク、そしてカウルまで大破した美奈子のニンジャZX-4RRが、クレーンでピットトレーナー内に運び込まれる。


 巨大なトレーラーの側面が電動でせり上がり、内部は白く明るいLED照明が天井から照らしている。メカニックたちは木田技術開発研究所と三条ロボテック・ビックデーター社が合同で開発した”AI補助型自動修復装置「リジェーネ」”を起動させた。


..........位置確認、スタビライザー起動!..........

..........フォーク変形度15度、補正プログラム開始!..........

...........3Dスキャナー、CTスキャナー起動!...........

..........AIオートCADにて補正部最適角度計測!.........


 鋼鉄製のアームが数本、壊れた車体を固定し、3DスキャナーとCTスキャナーでフレームの歪みと破損を瞬時に解析。CADが理想形と実損の差を比較する。


.......フォーク変形率が、本機で修復不可能と判断 近似規格の未使用フロントフォーク改良での交換対応を推奨しています........



........了解、ただちに、代替部品の選別をAIに指示..........


.........出ました、部品番号ZF4752が最も近似形状として推奨..........


.........ZF4752を本車体用に改良..........


.........改良終了予定時間3分20秒プラスマイナス5秒.........


..........了解、改良後すぐに車体にとりつけろ..........


..........フレーム歪曲補正ロボットアーム起動..........


.........フレイム歪曲プラスナイナス2%まで補正.......


.........フレイム剛性CTスキャン開始...........


.........CTスキャン終了。補正データー来ました.......


 続いて、溶接ロボットとナノレベルの補修樹脂噴射装置が自動的に動き出す。

 金属粉末を高密度レーザーで瞬間溶接し、衝撃で微妙にずれたフレームの剛性を補正。カーボン強化プラスチック製のカウルは真空成形機で新品同様に再生され、塗装ロボットがカワサキの標準色であるレーシンググリーンを鮮やかに吹き付ける。


 作業中、メカニックたちは無駄な動きひとつなく走り回り、AIの診断結果を確認しながら微調整を加える。


.........車体角度45度にローテーション..........

.........右側ステップの取り付け角度2°補正!........

.........リヤサスリンク再トルク確認!............

,,,,,,,,,エンジン内圧計測、混合比1%調整........


 そして、事故からわずか28分後


.............修理完了!..............


 新品同様に輝くニンジャZX-4RRが、再び美奈子の前に姿を現す。


「お嬢ちゃん、念のため試運転してくれるかい。」


「ああ・・・・美奈子は、神の奇跡を見たようにしばらく目の前の愛車を見た。生き返った・・・・あたいのZX-4RRが・・・これ夢か?あたいのニンジャが・・・」


「乗っていいのか?本当に」


「もちろん。乗って違和感あるなら遠慮なく言ってくれ」


 美奈子は、エンジンをかけニンジャ(あいぼう)にまたがり急発進、急停車、スラローム、ハングオンなどを行う。


「一つだけ違和感がある。以前より吹けがよくなってる。」メカニックにサムズ・アップして照れた顔で答えた。


 その修理の様子は、中央モニターで映し出さされた。


 修理が、終わるまで、皆その工程を注視して声を上げるものはいなかった。

 まるで、知人の手術をみるように、その手技に見とれていた。


 それもそのはずである。”リネージェネ”のベースは、三条ロボッテックが開発した医療用AI手術支援ロボットがベースになってる。それまでのピット作業は、人の手技に追うところが大きく、あくまで機械は計測器であった。


 そこで、木田の2輪製造技術の製造過程をデーター化し、ロボットの製造技術力を細部にまでやれるように改造して、人とロボットの共同作業ピットが完成した。

 この技術は木田技術開発が、次世代プライベートジェットの製造用に、三条重工業がロケット製造用に住み分け使用するので、お互いウィンウィンの技術であった。


「なんだ、あれ?木田が、ライバル企業のバイクを完全復元?おかしいだろ。」


「なんでプライベートサポートが、ワークスサポートより厚いんだ?」


「あのAI支援ロボットは、神が宿ってるのか?」


 会場からすこしずつざわめきの声が起こっていた。


 ちなみにこの過程が、SNSで拡散される事は織り込み済なので、協力企業として、木田技術開発研究所 三条ロボッテック ビックデーター社 さくら銀行 新大和素材製鉄(山際琴音の実家)フォン・マキコの企業名がテロップで流されていた。


 このテロップが流れることは、あかねが警察を止める理由にもなっている。あくまでレースは余興で、実際は次世代新技術のおひろめイベントだと言い訳がつくのである。


「アルテミスの協力企業が、すべてグローバル企業?」


 何なんだ一体? 報道各社は一斉に動き始めた。各企業にコメントを申しでるも、各企業は一切ノーコメントと言う回答だった。


 しからばと、現地に取材にいくも埠頭の入り口2つとも既に入場規制が行われていて入れない。


 しかないのでヘリコプターで上空から撮影をこころみるも、上空はすでに航空規制がかけられていて、海上には、保安庁が、なぜか海上規制をかけている。

 ドローンを飛ばす報道社もいたが、上空近くに着くや制御不能になり落下する。


「目標確認、てー」 


「目標に命中」


「目標制御不能落下します。」


「成功ですな。これでレーザーがドローンに有効であるのを確認できた」

 艦橋では、艦長と三条重工の研究者がガッチリ握手する。


 横須賀を基地とする、”海上自衛隊試験艦あすか”から放たれたレーザー光線による妨害とは誰も知らなかった。


 それでもこのスクープがほしいあまり、強行しようと記者は意気込むが、なぜか上層部から取材ストップがかけられる。既存のオールドメディアは、これを一切報道してはならないと、どこからか圧力がかけらてるらしい。


 得られる情報はSNSのみと言う、世にも奇妙な現象が起こっていた。




 コンテナ群と巨大なクレーンが無骨な影を落とす埠頭に、今夜だけはいつもと違う光と熱気が集まっていた。

 ナトリウムランプの橙色の光の下、何十人という観衆が、港の柵やコンテナの上、さらには持ち込まれた移動式の簡易ステージや高台から息を詰めて二人を見つめている。 中央付近の大型モニターには、今から2人走るコースの説明や、2人が乗るマシーンの大まかな説明などが映されてていた。


「レディースアルテミス」の仲間たちや、木田技術開発研究所のメカニックチーム、「レディース女豹疾走」の応援団。そして噂を聞きつけて集まった走り屋たち。

 夜の海風に靡くチームの旗や団扇、ケミカルライトが、群衆の熱気をさらに煽る。


「本当にやるんだな……あの二人が」

「見ろよ、完全に修復されたっていう噂のあのニンジャ……ピカピカじゃねえか」

「あれが、30分前まで、大破していたバイク」とはとても思えないな。」

「一方は黒のカスタムスクーターか?スクーターでニンジャに勝てるのか?」


 誰かが呟いた声が夜気に混ざり、港特有の潮と油と排気の匂いが漂う。


 美奈子は愛機のカワサキニンジャZX-4RRに指を滑らせるように触れながら、観衆の視線を背中で受け止めている。

 新しい緑色カウルが夜ナトリウムライトを浴び、黒く沈んだ灰色のような輝きを放つ。


「あんたにゃZX4RR(あいぼう)を直してもらった恩はあるが、勝負は手抜きはない。それでいいか?」


「何を今さら言われるのですか?手抜きしたりすれば、一生あなたを軽蔑しますわ」


「そうだよな。あんたは、そんな女だ。」


 短く返す美奈子。その口元に浮かぶ笑みを見て、梓もまたわずかに頬を緩める。


 観衆の声援を背に受けながら、奈美子はヘルメットを被る。

 バイザーを下ろした瞬間、色彩も声も遠ざかり、視界は狭まり、世界は音と闘志だけになる。


 エンジンを始動させると、夜の海辺に咆哮が響きわたる。

 コンテナの影を揺らし、港の照明に照らされて二台のバイクが震える。


 簡易的に建てられたスタート赤色信号が、5秒前から点灯をはじめる。


 5・4・3・2・1・スタート


 今夜のクライマックスが始まった。


修理時間とフレーム歪曲補正ロボット、データーの収集以外は、確立された、あるいは確立しつつある最先端技術を拡大解釈して想像してみました。こんなのあったらいいなの意味で描いてみました。そう考えるとフレームの補正を行う職人さんの技術は本当にすごいと思います。

皆んもこんな装置があればいいなと言う装置ありますか?

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