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お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~  作者: 猫の手


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お嬢様 『誇りは、走ることで守られる』

次回は、斜め上のピットトレーラーの実力の全容とレースを投稿予定です。


もしよろしければ、評価していただければ、作者の励みになります。

挿絵(By みてみん)

アルテミス副総長梓の特攻服姿「暗夜の薔薇」


八人の女神が、女豹疾走と対峙した。


「ほう……あんたらが、最近売り出し中の“アルテミス”ってわけか」 木刀を肩に担ぎ、前に出てきたのは、見るからに気の強そうな女。

「ずいぶん派手なことしてくれたじゃねぇか。あたしが“女豹疾走”の総隊長、カヲルだ。……夜露死苦」


雅は一歩前に出て、にこやかに会釈した。


「派手……ですの? これで? それに、わたくしはてっきり、美奈子さんが総長かと存じておりましたわ。おほほほ……」


その一言に、カヲルの眉がピクリと跳ねた。


「てめぇ〜、アヤつけてんのか? ゴロなら買うぞコラ! つーかよ、面合わせてんのにフルフェスの兜かぶってんじゃねぇよ。 それになんだ、その特攻服の下、サラシ巻いてねぇのか? ガキが粋がって、シャバい面してんじゃねぇぞ!」


雅は一瞬きょとんとした顔をして、隣の梓に小声で尋ねた。


「……梓さん、申し訳ありませんが、半分以上意味がわかりませんでしたの。訳していただけます?」


梓は小さくため息をついてから、淡々と通訳を始めた。


「ええ、要約いたしますと―― 『あなた、文句があるの? ケンカなら買うわよ。 顔を合わせてるのにヘルメットを外さないなんて失礼だし、 特攻服の下にサラシを巻くのが礼儀なのに、あなたたちはしていない。 どうせ子供が粋がってるだけで、顔も大したことないんでしょ?』……とのことですわ」


「ふぅ……」と、梓はティーカップを持つように手を添えて、肩をすくめた。


雅は、ほんの少しだけ首を傾げてから、にこりと笑った。


「なるほど。確かに、わたくしたちはまだ未熟な子供かもしれませんわね。 でも……あなた、25歳くらいとお見受けしますけれど?」


その瞬間、カヲルの顔が真っ赤になった。


「ウゼェ! あたしゃまだ24だっつーの! 舐めんなよ!」


怒りに任せて木刀を振り上げた――が、その刹那。


赤い特攻服のあかねが、音もなく飛び出した。 カヲルの腕をがっちりと掴み、鮮やかな投げ技で地面に叩きつける。


「ぐっ……!」


女豹疾走のメンバーたちが一斉に殺気立つ。


「やめろッ!」


鋭く響いた声に、全員が動きを止めた。 美奈子だった。


「手ぇ出すな。あいつらは、うちらの“ゲスト”だ。 喧嘩で勝負を終わらせるなんて、うちらの流儀じゃねぇ。 “走り上等”が、女豹疾走の看板だろ?」


その言葉に、空気が一気に静まる。


「すまねぇな。うちの頭、ちょっと血の気が多くてさ」

美奈子が苦笑いを浮かべる。


雅はその様子を見ながら、心の中で考えていた。

なるほど……このチームの本当の中心は、美奈子さんなのね。

でも、なぜ彼女が総長ではないのかしら?


それには理由がある。 歴史あるレディースチームには、独自の“しきたり”がある。 たとえ腕が立ち、カリスマ性があっても、総長はOBによる指名制。 年齢と在籍年数が優先される。 それが、古参の誇りと秩序を守るための“けじめ”なのだ。


「……邪魔が入る前に、コースの説明をする。自分のバイクでついてこい」


2台のエンジンが静かに目を覚ます。 美奈子のカワサキ・ニンジャZX-4RRが先頭、梓のカスタムスクーターがその後ろに続く。


「お、始まったか?」 観客たちがざわつき、巨大モニターに目を向ける。 画面には“Practice”の文字が流れていた。


「なんだ、コースの下見か」


「おい、あれ美奈子のマシン、ZX-4RRじゃねぇか?」


「今じゃ納期未定のモンスターマシンだぞ。80馬力で650cc並みの加速だってよ」


「で、アルテミスの方は……スクーター? マジかよ」


「いや、あれ木田製のカスタムっぽいけど、どのカタログにも載ってねぇ。フルオーダーか?」


「それより、あのコンテナ群……コースに使うのか? まるで連続ヘアピンみたいな変則コースじゃねぇか。面白れぇ!」


観衆がバイク談義に花を咲かせる中―― 最終コーナーの死角で、数人の影がうごめいていた。


「……本当にやるのかよ?」


「ああ、総隊長の命令は絶対だ」


「でも、下手すりゃ特攻隊長も巻き込むぞ?」


「それでもやるんだよ。早く水を撒け。バレなきゃいいんだ」

静かに、しかし確実に、最終コーナーの路面に水が撒かれていった。


最終コーナー。


(ふん、やっぱりこの程度の速度じゃ、楽についてくるか)

美奈子はバックミラーをちらりと見て、口元をわずかに緩めた。


(ちょっと意趣返しといこうか。観客はあいつらに夢中だし、 少しくらい注目を奪ってもバチは当たらないよな)


スロットルを開ける。 最終コーナーに差しかかり、華麗に立ち上がろうとした――その瞬間。


「っ……!」


後輪が、ズルッと流れた。 美奈子は即座にカウンターを当てるが、物理の法則は容赦ない。 バイクは横滑りし、コンテナに激突。

彼女の体は宙を舞い、フェンスの網に引っかかって止まった。


「うわっ、マジか!? 美奈子が……!」


観衆がどよめく中、モニターにはスローモーションで転倒の瞬間が映し出される。


(なんで……あそこに水が? 路面チェックは済んでたはず……)


視界が揺れる中、誰かが駆け寄ってくる。

差し出された手。 その声は、どこまでも穏やかだった。


「あなた、大丈夫ですの?」


梓だった。 ヘルメットのシールド越しでも、その瞳はまっすぐに美奈子を見つめていた。


「……ああ、大丈夫。あたいより、バイクは……」

美奈子が真っ先に気にしたのは、愛機の安否だった。


「ご安心を。あなたの“相棒”は、今、うちの整備班が確認しています。

ただ……かなりの損傷ですわね。走行は難しいかと」


そこへ、女豹疾走の後輩たちが駆けつける。


「隊長! あんなとこに水なんてなかったっすよ!」


「ていうか、さっき先輩たちとすれ違ったよな……」


梓はインカムに手を添え、何やら静かに指示を出していた。


「くそ……あたいがミスしなけりゃ……

あんたと、ちゃんと走れたのに……すまねぇ……」


美奈子が悔しさを滲ませる。

そのとき、女豹疾走のメンバーが声を上げた。


「隊長、あたいのバイク使ってください! ボロいけど、まだ走れます!」


「いや、あたいのを! お下がりだけど、ちゃんと整備してます!」


美奈子は目を伏せ、苦笑した。

「ありがとよ……でも、あたいの勝負は、

あのマシンとじゃなきゃ意味がねぇんだ」


そのとき、低く唸るエンジン音とともに、一台のバイク運搬車が現れた。


「お嬢さん、これが問題のマシンですな」

降りてきた整備士が、バイクを見て眉をひそめる。


「フレームとフロントフォーク、いってますな。

普通なら……部品取り寄せて、2週間コースですな。ええ、普通なら」


「じゃあ、勝負は2週間後ってことか?」 美奈子が悔しそうに言う。


「それでは、観衆が納得しませんわ。

9時10分、予定通りスタートいたします」


「いや、すまん。無理だろ……修理が……」


整備士はニヤリと笑った。


「“普通なら”の話です。 うちのピットトレーラーなら、30分で仕上げますよ。 もちろん、カウルも新品同様に。

せっかくの“お嬢ちゃんマシン”を、ツギハギのまま走らせるわけにはいきませんからね」


「……いいのか? 金は、あとで必ず……」


「お金なんていりませんわ」

梓が静かに言った。

「わたくしが望むのは、ただひとつ。あなたに、約束を果たしていただくこと。それだけですの」


そして、彼女はふと視線を向ける。


「それより……この勝負を汚した方々は、レースが終わるまで、こちらでお預かりいたします。 また何かされては困りますので。よろしいですわね?」


「……ああ、構わねぇ。

レースが終わったら、きっちり“落とし前”つけさせてもらうぜ」


美奈子の瞳が、鋭く光る。 その目は、怒りではなく、責任を背負う者の覚悟だった。


レース開始まで、あと40分。 女神と女豹――誇りを懸けた夜が、いよいよ幕を開けようとしていた。

次回は、斜め上のピットトレーラーの実力の全容とレースを投稿予定です。


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